常総学院vs杵築
この敗戦から始まる
常総学院と初出場の杵築の対決は3回を終えて14対0。杵築にとっては目を覆いたくなるようなスコアだったが、杵築ナインが最後まで戦い抜く気力を取り戻したのは三番手の青井雄大の好投があったからだろう。
3回の裏、永野大輔、2番手の塩谷が常総学院の勢いを止める事が出来ずに登板。13対0となった場面で登板した。二死から登板した青井はいきなり二塁打を打たれて14点目を失ったが、後続を凌いだ。
青井が好投を見せる。強烈なインステップから投じる130キロ前後の速球は綺麗なストレートではない。手元で微妙に動いており、常総学院の打者はなかなか芯に当てる事が出来ない。125キロ前後のスライダー、125キロ前後のツーシーム、100キロ前後のコンビネーション。4回裏、まず1番大崎健吾を108キロのカーブで空振り三振に取る。一死二塁となって3番内田をスライダーでショートフライに打ち取って、4番杉本には2ストライク1ボールと追い込んで内角ストレートで詰まらせてキャッチャーフライ。クリーンナップに打ち取ったのだ。
そして5回表、打席に立った青井は1ストライク2ボールからストレートを振り抜き左前安打を放つ。5番杉浦はカーブを捉えて右前安打と続き、1番が左前安打。二塁走者の青井は猛然と突っ込んだが、惜しくも外野手の返球に阻まれアウト。惜しくもアウトになったが、青井からチャンスを作った。
5回裏、初の三者凡退に打ち取る。この三者凡退で自信を付けた青井はすいすいと常総学院打線に立ち向かう。決して綺麗ではない速球、手元で大きく変化する変化球に常総学院はフルスイングが出来ない。青井の好投にバックが応える。序盤にエラーが目立った内野手陣も、青井の好投でようやく甲子園の舞台に慣れてきたのか。リズムの良い守備を見せるのだ。3回裏までの表情がガラリと変わり、笑顔で選手たちがプレーしているのが見て取れた。
杵築は14対0で敗れた。大差の負けは屈辱的な敗戦だ。ただ杵築はこれからも甲子園でチャレンジ出来る機会が訪れるのだ。再び甲子園の地を踏んだ時にこの借りを返すつもりで、臨んでほしいと思う。
今、常連になっている学校、躍進を遂げた学校は大敗を経験している。聖光学院は0-20の大敗を経験している。しかしそこから徐々に強化し、全国レベルの強豪に成長を遂げた。そして去年躍進を遂げた能代商も2010年に大敗を経験したが、それから1年。ベスト16まで躍進を遂げたのだ。
「悔しさ」が猛練習に取り組む「エネルギー」となった。杵築にとってこの敗戦が「スタート」と呼べる日が訪れることを期待している。
(文=河嶋宗一)