Interview

専修大学松戸高等学校 上沢直之選手

2012.01.31

第89回 専修大学松戸高等学校 上沢直之選手2012年02月06日

 2011年10月27日。千葉県の専大松戸高校から、高卒として初めて『プロ野球選手』が誕生した。
 187センチの大型右腕・上沢直之投手。

 戦国・千葉で、高校3年間、一度も頂点に立つことは出来なかったものの、長身から投げ込む真っ直ぐを武器に、2年の夏と秋は2季連続で県ベスト4。3年の春は県準優勝にチームを導く活躍をみせた。
 小学生の頃は「サッカー少年だった」という上沢は、中学から軟式野球を始めた。そんな上沢を本物の“投手”として育て上げたのが、名将・持丸修一監督である。

「3年後、お前はプロに行ける」

“自分の意識改革が大きかったですね。”

――高校入学当時は、持丸監督からはどのような言葉をかけられていたのですか?

上沢選手(以下「上沢」)  入った時から監督からはもう「お前はプロに行ける」って言われていました。自分では、そんなプロになれるような選手じゃないと思っていたので、最初は疑心暗鬼(ぎしんあんき)だったんですけど。だけど、この3年間は、その言葉を信じて一生懸命練習していましたね。

――最初は、プロ野球選手に本当になれるかどうか、自分でも疑問だったという中で、なぜここまで成長できたと思いますか?

「上沢」  やっぱり、自分の意識改革が大きかったですね。
1年の春と秋にも試合で投げさせてもらっていましたが、2年春の大会中にケガをして、そのあと監督さんから、「そんなにケガするんだったら、もう投げさせない」って言われたんです。ピッチャーを続けたかったので、すごく辛かったですね。それで、もともと、肩の筋肉が柔らかかったので、筋トレをするようにして、そこからケガがなくなりました。[参考:2010年春季千葉県大会

そのあと、2年の秋から3年の春にかけて、「本当にプロに行ってやるんだ」って、自分でも驚くくらいに、強い意識を持って練習ができたんです。毎回、ランニングでも一番前を走って、常に1位で帰ってくるようにしました。

[page_break:やらされてる練習から、自分からやる練習へ]

やらされてる練習から、自分からやる練習へ

“「自分のため。自分のため」と考えながら”

――上沢投手が、本物の“エース投手”へと、近づいていった時期だったのですね。

「上沢」  自分がもともと負けず嫌いっていうのと、監督さんからも「エースとして、どうあるべきか」っていうのをずっと聞かされていたのもあります。エースは、周りのピッチャーより多く走って当たり前とか、周りのピッチャーより競争の時でも速く帰ってきて当たり前とか。そういったことを嫌ってほど聞かされていたので、自分はもっと頑張らなきゃいけないんだなって思えました。

――持丸監督からの厳しい言葉にくじけそうになることはなかったのですか?

「上沢」 1年生の頃は、「何でこんな練習しなきゃいけないんだろう」って思ったりもしていました。でも、監督さんやコーチに「人に走らされてると思ってやっているなら、やめていいんだぞ」って言われて、そこから、「自分のため、自分のため」って思って練習をやっていました。
 練習をやらされるのと、自分からやるのとでは伸び率は変わると思ってるんで。意識的に、この時期は“自分のために”走っていたっていうのはあります。

――上沢投手が、高校3年間で最も自分を追い込んだ練習は何ですか?

「上沢」 冬場に、まず全体練習で走って、筋トレをやって、その後にバーベル持ってまた走ったりしていました。監督さんやコーチが見ていない中でも、みんなで自主的に寒い中トレーニングして、「妥協すんなよ!」「妥協したら負けるぞ!」って言い合いながらやっていましたね。
 2年の夏も秋も、県大会で惜しいところまで行って負けたんで、それでみんな、もっと力をつけなきゃいけないって思って。そういう練習に耐えてきて、精神面が強くなったかなって思います。[参考:2010年秋季千葉県大会

[page_break:最後の夏の借りをプロで返したい]

最後の夏の借りをプロで返したい

“最後の夏は、一つも満足してる事はない”

――持丸監督の熱い言葉や、仲間たちの支えもあって、投手として大きな成長をみせてきましたが、最後の3年夏は千葉大会4回戦で惜しくも1点差で敗れました。やり切ったという満足感よりも、悔しい思いのほうが強かったのでしょうか?

「上沢」 最後の夏は、一つも満足してる事はないですね。ホントに、一番調子が悪い時くらいボールが良くなかった。自分が思っているようなボールが全然投げられなくて、周りにも迷惑をかけてしまいました。そういう面では、(満足値は)ゼロに近いです。[参考:第93回千葉県大会

――試合後は、チームの仲間たちとどんな言葉を交わしたのですか?

「上沢」 球場の外でみんな笑顔で迎えてくれたんです。いい仲間を持ったなって。こいつらを甲子園に連れて行きたかったなって。自分も甲子園に行きたかったんですけど、やっぱりそれよりも、この仲間を甲子園に連れて行きたかったなって感じましたね。

――甲子園に届かなかった悔しさから、すぐに気持ちを切り替えることはできたのでしょうか?

「上沢」  しばらくボーっとして、何も考えられなくなりました。だけど、そのあとに3年生の最後の集まりがあって、その中で周りのみんなが、『お前、プロに行くんだから俺たちの分まで頑張ってくれよ』って言ってくれて。その言葉が胸に響いて。普段は、そういうこと言わないやつらなのに、初めて言ってくれたので。そこで、やっぱり気持ちを切り替えなきゃなって思ったんです。

――10月27日のドラフト当日。指名された時は、どんな思いが込み上げてきましたか?

「上沢」 この高校から(高卒で)プロ入りしたのが初めてなので、周りのみんなもすごく喜んでくれて、『おめでとう』って改めて言われたときはすごく嬉しかったです。
今度、この高校に入ってくる高校生が「上沢に憧れて来た」「上沢ってここの高校らしいね」って言われるようになれば、監督さんやこの高校への恩返しにもなるかなって思っています。

 そう遠くない未来にまた、このグラウンドから、上沢に憧れて門をくぐった球児たちがプロへの夢を掴む日が来るだろう。そんな後輩たちとプロの世界で対戦できる日を、上沢は心から楽しみにしている。

(取材・構成:編集部

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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