天理vs立命館
延長10回 161球を投げ切り18個の三振を奪った中谷佳太投手(天理)
エース中谷18K
昨秋、今春と近畿大会を連覇している天理が、立命館を延長の末に振り切り、準々決勝進出を決めた。
2点を勝ち越してもらった後に上がった延長10回のマウンド。天理のエース・中谷佳太(2年)は三者連続の空振り三振で締めくくった。
「三振の数は計算してなかった」とはにかんだ左腕。気がつけば、スコアブックに残る『K』の文字は18個に達していた。橋本武徳監督が「中谷が良く投げてくれた」と話したように、まさに貫録のピッチングである。
「調子は良くなかった」と試合前に感じていた中谷。立ち上がり先頭打者に四球を与えるなど、微妙なコントロールに苦しんだ。2回には走者を二塁に背負った状況からボークを犯してしまう。流れは完全に立命館にあり、いつ失点をしてもおかしくなかった。
だが、威力を増した直球が中谷を救う。
「今日は変化球中心でいこうとしたが、力が入っていた。だから直球主体になりました」と切り替えを話したエース。さらに春にこの舞洲のマウンドを経験しているのも大きかった。相手打者にファウルで粘られても、最後は三振になり攻撃側の思惑通りにはいかない。中谷の力と経験が上回っていたのである。
一方、このチームでの課題だった打線は立命館の左腕・伊藤数馬(2年)の前に苦しんだ。
糸口が見えたには5回。1死から7番の船曳翔(2年)がこの日初めて四球で出塁。続く8番中谷の内野ゴロの間に船曳は二塁に進んだ。
打席は9番の関屋亮(2年)。1ボール1ストライクからの3球目、関屋の打球はレフトへ弾き返された。二塁から一気に本塁を目指した船曳。下位打線によるワンチャンスで押されていた天理がこの試合先に点を取った。
延長10回に決勝打を放った古田塁(天理)
ようやく取った1点だったが、踏ん張っていた中谷が7回に1点を失い試合は振り出しに。そしてそのまま延長戦に突入した。
10回表、天理は立命館二番手の坂戸奎太(2年)から簡単に二死を取られるが、2番の綿世優矢(2年)がストレートの四球で出塁する。再び相手にもらったチャンスを続く3番古田塁(1年)が生かした。坂戸の3球目をレフト線に打ち返した古田。打球から走者は三塁で止まるように思えたが、三塁コーチャーの松村龍太郎(2年)は迷うことなく腕を回して本塁へ突入させた。ヘッドスライディングで綿世は本塁を陥れた。
さらに4番吉村昂祐(2年)が連続タイムリーを放ってエースに2点をプレゼント。球数が150球を超えても「疲れはあまりなかった」というエース中谷にとってこの2点は十分すぎるほどだった。
「他にも良い投手がいるので、エースになれるかは競争だった。去年のチームでは先発しても西口(輔=3年)さんが後ろにいたので楽だったが、今は自分が引っ張らないといけない」と口を真一文字にむすんで話してくれた〝新〝エースの中谷。野手が総入れ替えのチームにあって、経験十分のエースがしっかりとチームを引っ張った。
一方で敗れた立命館にとって痛恨だったのは10回に2死からストレートの四球を与えてしまったこと。9回にも同じように2死から四球を与えていたのだが、この時は7球粘られた末のものだった。
同じ四球でも中味によって対戦相手の捉えた方まったく違う。この日の教訓を来年ぜひ生かしてほしい。