智辯学園vs東大阪大柏原
智辯学園のエース青山大紀
投手戦の先に見える課題
智辯学園のエース青山大紀(2年)が東大阪大柏原を相手に2安打完封。昨年1点差で涙を飲んだこの近畿の舞台で念願の1勝を挙げた。
青山と東大阪大柏原の福山純平(2年)。夏の甲子園を経験したエース同士の心地よい投手戦で試合は展開した。両チームとも長打が一本も出なかったのが、この投手戦を物語っている。
投げ勝った青山は2安打12奪三振。東大阪大柏原の田中秀昌監督が「完敗です」と話した通り、攻略の糸口を見せてもそれを突かせない見事なピッチングだった。
「これまで何度も油断して負けたことがあったので、最後まで集中を切らさずに心がけていた。勝ててホッとしています」と青山はピンチでもしっかり粘れたことを勝因に挙げた。
攻略の糸口を突かせなかったのは青山の変化球の精度。8月に練習試合で対戦した際は直球主体だったため、「張られてくる」と感じ変化球の多い組み立てに変えた。柏原に肝心な一本を出させなかったのは、その変化球がしっかりとコントロールされていたから。
「3番の末武(雄貴=2年)なんかも大振りになっていた」と田中監督は対応できなかった青山のピッチングを讃えた。
捕手の中道勝士(2年)との呼吸も、夏と比べ格段に良くなってきたのも青山の幅を広げる要因になっているだろう。
一方で敗れた福山のピッチングも5失点を感じさせないほどの見事なものだった。主将でもある福山は「悔しい」と肩を落としていたが、青山との投げ合いは投手としてプラスに作用するように思われる。
東大阪大柏原 福山純平投手
ただし、結果として負けたわけで、失点の原因ははっきりと課題にしなければいけない。
スコアブックだけを見ると、野手の失策、スクイズ、青山のタイムリーで失った5回の3点に目がいきがちになるが、一番の課題は8回の2失点。
このイニング先頭の2番浦野純也(2年)に2ストライクと追い込みながら死球を与えてしまった福山。智辯の打順は3番の青山。2ボール2ストライクからの6球目。青山へのアウトコースの際どい球がボールになった。
『えっボール?』自信のある球だっただけに、わずかに外れたことで少し怪訝な表情を見せた福山。前の打席でタイムリーを浴びていたこともあったが、この場面での青山に対する意識は相当大きかったようだ。
青山には7球目をヒットされ、4番の小池将大(2年)に送りバントを決められた福山。5番小野耀平(2年)のバント失敗で流れを止められそうな状況にできたが、6番米田伸太郎(2年)にダメ押しとなる2点タイムリーを浴びた。
この米田の一打も、追いこみながら勝負球がわずかに外れ、フルカウントとなって打たれたもの。点差、イニングを考えれば、何としても踏みとどまらなければいけない所で、粘り切れなかった福山。「(冬の)課題はコントロール」とはっきり口にした。
さらに勝負をかけた一球が外れた時に、次どうするか?その切り替えの重要性もこの試合で学んだことだろう。
勝負の結果と中味を切り離して考えることも、投手として成長するための大事な要素になる。だからこそ5回に先制された3点よりも、8回にダメを押された2点の持つ意味を突きつめてもらいたい。