報徳学園vs市立神港
3安打を放ち打線を牽引した永岡(報徳学園)
柱と核
最後まで、ストレートの威力は衰えなかった。
先制点を奪われ、この大会初めて失点を喫したとはいえ、毎回の13奪三振。キレのあるストレートとスライダーが制球良くミットに吸い込まれていく。試合ごとに調子を上げてきた経験豊富なエース・田村伊知郎のこの日のピッチングは、これまでやや安定感に欠けていた部分を思えば上々の内容だった。
旧チームからの経験者が多く残り、「この秋はダントツの戦力」と、優勝候補に挙げられていた報徳学園だったが、決して万全な状態だったわけではない。新チーム結成直後は、1年生からベンチ入りし、旧チームから3番を打つ遊撃の永岡駿治が新チーム結成直後に盲腸を患い、4日間の入院とリハビリを経て、チームに合流したのは地区大会が始まる直前の8月下旬。主砲の鈴木大輝は地区大会初戦で肉離れを発症し戦線離脱していた。
県大会では、4番が試合ごとに入れ替わるほど、打線に関しては苦しい台所事情を抱えていた。
だからこそ、攻撃の核になる選手が喉から手が出るほど欲しかった。今日はその永岡が5打数3安打1打点と気を吐いた。初回からチャンスメークし、5回には追加点のお膳立てとなるヒットも放った。
「(盲腸で入院後から)体の動きも思うようにいかず、地区大会から調子が悪かった。県大会からタイミングの取り方を変えて、徐々に調子が上がってきました」と、笑顔で試合を振り返った。
田村(報徳学園)
さらに、県大会はずっとベンチスタートだった鈴木が、今日は2試合目の代打の打席に立ち、レフトへ大飛球を放った。結果はレフトフライだったが、持ち前の長打力の片りんを見せつけた。最終回には一塁の守備にもつき、まずまずの動きを見せた。
「足の状態はもう大丈夫。いつでも出られるよう準備はしています」と、本人もフル出場に向けて心身ともに万全の構えを見せていた。
エースの田村が大きな“柱”だとすれば、復活の兆しを見せつつあるこの2人は“核”となるのだろうか。このチームは田村だけではないことを証明する意味も含め、チームにとって2人の復活はプラス材料にななることは間違いない。
また、市神港はベンチワークに優れ、元気に声を出して試合を再三盛り上げていた。好右腕・田村の前に少ないチャンスを奪ってはいたが、細かい走塁ミスでチャンスを潰したのが痛かった。
これで報徳学園はベスト8へ進出。次戦の準々決勝の相手は同じ伝統校の東洋大姫路。今夏の甲子園でベスト8に進出した、県内の最大のライバルだ。
「ここまで来たら調子どうこうは関係ない。ベンチとスタンドで一体になって次も戦いたい」。
主将の上野太一が頼もしげに口にした。