東洋大姫路vs神港学園
6番坪田が死球でサヨナラゲームとなる
敬遠の意味をもっと考えよう
神港学園と東洋大姫路。兵庫の強豪同士が1回戦で激突した注目カードの結末はあっけないものだった。
9回裏1死満塁。
神港学園・藍畑秀孝(2年)が投じた初球が、打席の東洋大姫路・坪田元希(2年)の足に当たった。サヨナラとなる押し出しの死球。藍畑は膝に手をつき、がっくりと項垂れた。
この満塁という場面を作ったのは神港学園の方。1死3塁から、二人の打者を敬遠してのもの。それだけに悔いが残ったことだろう。
「内野ゴロを打たせようとインコースを要求した」と神港学園の捕手・妹尾治樹(2年)は話す。一方で北原光広監督は「(敬遠で)あれだけボール球を投げたのだから」とアウトコースから入るべきだったという考えを示した。
ベンチとグランドで、敬遠の意味が統一されていなかった。 実は同じようなことが、今夏の大阪大会決勝(2011年08月01日)でも起きていた。
サヨナラ死球。
守る側にとってはこれほど残酷な終わり方はない。打たれて敗れる方が、よっぽど割り切れるだろう。
満塁策は、守備側からすれば、守りやすくはなる。指揮を執る監督が選択しやすい策だ。
でも、今回のようにリスクも大きい。
大事なのは、敬遠となるボール球を投げる時(時間)の守備陣の捉え方。ここでベンチの指揮官と、選手に認識の差があると今回のようなことが起こってしまう。
この試合では神港学園のタイムはあと1回残っていた。「今思えば、タイムを取っても良かったかも」と捕手の妹尾は話したが、普段から敬遠での満塁策の考え方をチームで徹底するのも一つの手だろう。
そして満塁策後の第1球に何を投げるか。それを決まりごととして、作っても良い。ベンチの意図する満塁(敬遠)策と、試合に出ている選手の満塁策の圧迫感。これを考えていく良い機会になればと思う。
横田徹寛投手(東洋大姫路)
さて、試合は前半からスクイズの応酬。両チームが、『取れる点を確実に』とこだわった結果だ。
東洋大姫路の藤田明彦監督は、「ウチも、神港さんもまだピッチャーに自信を持っていない」と定石とは少し違う形になったことを説明する。
東洋はエースナンバーの片岡迅也(2年)から、1年生左腕の横田徹寛。神港学園は三浦和真(2年)から藍畑秀孝(2年)へとお互い二人の投手をリレーした。これも一人で1試合を任すのは現状では厳しいことを示しているようだ。
その状況でポイントになったのは、『取るべくして取った点』よりも、『相手のミスから取った点』。
神港学園が先制した1回、東洋大姫路が逆転した2回、そして神港学園が追いついた3回。いずれも失策が得点に繋がっていた。また8回の神港学園の2点も、何でもない内野ゴロが失策となって生まれたものだった。押し出し死球と残酷な結果になった9回も、〝投手の失策〝であるワイルドピッチ(暴投)が絡んでいる。
藤田監督、神港学園の北原監督が共に「ミスが目立った」と振り返ったことからも攻守のミスの重要性が伺える。ただ秋の大会は週単位。勝った藤田監督は「これでまた1週間(復習して)練習ができる」と胸をなで下ろしていた。
(文=松倉雄太)