試合レポート

習志野vs静岡

2011.08.08

送りバントを考える【2】

 試みた犠打6度。うち成功したのは4度。

4度送りバントを成功させた習志野が6-1で静岡を下した。
昨日に引き続いて、送りバントの必要性を投げかけながら試合を見たが、結果的には送りバントの数が両者を分けた試合になった。

「まず1点を取るということで、県大会から続けてきた攻撃をやりました」。
習志野は2回表、無死から4番・松山が二塁打で出塁すると、犠打で1死三塁、さらにバントのサインを出し、スクイズを成功させた。打って勢いに乗るよりも、まず1点を取りに行く。習志野・小林監督は手堅い作戦で先制点を狙いに行った
「うちのチームにはかっこいい野球はできない。ベンチ入りメンバー20人で構成していく。一打で試合を決着させるような選手がいませんので、3人がかりで1点を取りに行くスタイルでやっています」

習志野スタイル”の一端を見せた小林監督の、戦略だった。。

 一方、静岡は強攻にこだわった。
無死、あるいは1死で走者を出した場面は実に6度あったが送りバントをしたのは一度だけ。うち3度は三振ゲッツーも含む、併殺打だった。
結果論的に言えば、すべて裏目に出た形だ。

 
静岡・栗林監督はいう。
「送りバントを使う選手のところに回れば、バントを使いますが、送るべきケースはなかったと思います。打てるんじゃないかと思いましたが、相手が一枚上だった」

ここは取捨選択が難しいところだ。

バントをしても成功するとは限らないし、成功したとしても決定打が出るとは限らない。要するに、両監督の哲学に違いがあるだけといった方が良いかもしれない。
さらに、栗林監督に聞いた。
―送りバントは併殺を怖れて使うという手もある―、と
「そういう考え方もありますね。ただ、今日の試合で言えば、一瞬のすきをつければ、こっちに流れが来ると思っていました。カウント3ボール1ストライクというのもありまたし、相手に無駄にアウトを与えるより、攻めた方が良いと思っていました」



即答する栗林監督の主張に、彼なりの哲学を感じたというものだ。
結果論で語れば、静岡の作戦が失敗に終わったわけだが、ただ両者、全ての作戦に置いて、結果が相反したわけではない。

例えば、バントにこだわった習志野は2度のバント失敗がある。静岡のエース・原崎が見事なフィールディングを見せたからだが、その後の攻撃がまた見事で再びチャンスを作っているのだ。8回表、1死一塁から送りバント失敗の後、3連打を集めて3点を加えている。

7回の攻撃ではホームスチールという奇策を成功させたとはいえ、バントでは1点づつしか取れなかったのが、8回は一気に3点を奪っていたのだ。

静岡の強攻策も、一度は成功している。
6回裏、1死・1、2塁。6番・小野が積極的に、打ちにいくと投手ゴロになったが、これを相手先発の泉澤がセカンドへ悪送球し、一時は同点にしている。相手のミスに期待するというわけではないが、消極的に行くよりも積極的に動いていくと、試合が動く時もあるのだ。
栗林監督は言う。
「結局、今日は泉澤君のコントロールが上手く散っていて、球にも切れがあって、それを打ち崩すことができなかった。相手の力が上だったということだと思います」

 どのみち、相手投手は崩さなければいけない。
習志野はバントで活路を見出してから、終盤に打って加点した。静岡は最初から攻めた。
そこに違いがあっただけだ。

「8回の連打はたまたまだと思います、盗塁と小技を使っていく方が僕たちの野球だと思います。チーム全体がつながっている感じがしますから」。
習志野の副主将で2番の中村が胸を張って言った。
バントを多用する習志野野球はどこまで進むのか、興味深い。

(文=氏原英明)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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