試合レポート

関西創価vs桃山学院

2011.04.17

関西創価vs桃山学院 | 高校野球ドットコム

井阪京介投手(桃山学院)

裏の利点を生かし、勝負する勇気

 桃山学院が、昨秋ベスト8の関西創価を苦しめた。相手エースで快速球が武器の重盛勝太(3年)を引きずれ出し、8回に追いついて延長までもつれこむ接戦。昨秋1回戦で敗れたチームにとって大いなる自信となったに違いない。
 たが、桃山学院が勝ちゲームを落としたと、見ている者としては感じた試合でもあった。

桃山学院のエース・井阪京介(3年)は、終盤立ち直って7回以降ノーヒットピッチング。8回裏には自身のタイムリーで同点に追いついた。9回表の関西創価を三者凡退に打ち取り、流れは完全に桃山学院になっていた。
そして9回裏、1死から3番浦嶋航太(2年)と4番仲野祐馬(3年)の連続安打で1、3塁とサヨナラのチャンスを作った。打席は5番大脇大祐(3年)。マウンドの重盛が3球続けてボールとなり、無理に勝負しないかとも思われたが、4球目はストライク。これで関西創価バッテリーが大脇と勝負する意志を桃山学院サイドに示している。

5球目。大脇はスイングして打球は三遊間の前へ転がった。処理したのはサード藤本晃平(3年)。三塁走者の浦嶋は一瞬躊躇して本塁への突入をしなかった。併殺シフトではなかった藤本は、これを見て一塁へ送球し、場面は2死2、3塁と変わった。
桃山学院はここで代打水野敏博(3年)を起用するが、空振り三振に倒れて延長戦に突入することになった。

 10回表、勝負を決めきれなかったという気持ちがあったのだろうか。井阪は関西創価打線につかまって2点を失い試合は決した。


関西創価vs桃山学院 | 高校野球ドットコム

市場寿和(関西創価)

 桃山学院は私立校だが、野球は強化指定クラブではないと聞く。だからどちらかというと公立校と何ら変わらず、部活動として野球を楽しんでいる雰囲気のチームだ。
ただ、夏に悔いを残さないために、この9回裏にあった場はぜひ、教訓としてもらいたい。

 大事なのは1死1、3塁での三塁走者の判断。この場面、本塁に突っ込んでもセーフに絶対なるとは言いきれず、だからといって確実にアウトになるような打球ではなかった。突っ込んでいたら恐らくクロスプレーで際どかっただろう。普段ならば無理して突っ込まない選択は間違いではない。

 但し、この場面は9回裏。つまり三塁走者が生還すればチームはその瞬間に勝利を手にできる。打者の大脇は4球分の時間を得ていた。この間に走者は色んな打球をシミュレーションすることができるはずだ。

 打球しだいだが、勝負して突っ込んで結果としてアウトとなっても2死1、2塁のチャンスが残ると考えれば、『ゴロならGO!』と割り切れれば、一瞬の躊躇もなくスタートを切れるはずだ。

 走者の浦嶋はまだ2年生。難しいことかもしれないが、積極的に勝負できたならば、仮に無得点に終わったとしても10回の守りは心理的に変わってくるだろう。

 このゲームはあくまでも春の大会でこの先に夏がある。これからその夏に向けて練習を重ねるだろうが、貴重な公式戦で出てきた一つ一つの場面というのは忘れないでもらいたい。
そして選択肢として、こんな考え方もあるのだと心のノートに刻んでいただければ幸いだ。もちろん全国の球児にも!

(文=松倉雄太

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.16

【宮城】仙台一、東北、柴田、東陵がコールド発進<春季県大会>

2024.05.16

涙の甲子園デビューから大きくレベルアップ!前橋商の192センチの剛腕・清水大暉は、高速スプリットで群馬県大会19回1失点、22奪三振の快投!<高校野球ドットコム注目選手ファイル・ コム注>

2024.05.16

【2024年春季地区大会最新状況】全道大会は出場校決定、関東と東海は18日に開幕

2024.05.16

【秋田】秋田修英と秋田工が8強入り、夏のシードを獲得<春季大会>

2024.05.16

U-18代表候補・西尾海純(長崎日大)、甲子園で活躍する幼馴染にむき出しのライバル心「髙尾響には負けたくない」

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.14

大阪体育大の新入生に兵庫大会8強の145キロ右腕、金光大阪の1番センター、近大附の4番打者など関西地区の主力が入部!

2024.05.16

【宮城】仙台一、東北、柴田、東陵がコールド発進<春季県大会>

2024.05.13

大阪桐蔭、山梨学院、慶應義塾…強豪校・名門校の昨年度卒業生はどの進路を歩んだのか?【卒業生進路一覧】

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?