読売ジャイアンツ 阿部 慎之助選手
第39回 読売ジャイアンツ 阿部 慎之助選手
「今までにない工夫をしてあるのが、凄くいい」 2009年12月11日
チームをまとめ、優勝へと導いた2009年
2009年、圧倒的強さでセ・リーグを征し、さらに日本シリーズで日本一に輝いた読売ジャイアンツ。日本一は2002年以来、またリーグ3年連続優勝はV9時代の1973年以来だが、この快挙は、ジャイアンツ主将阿部慎之助の活躍なしには語れない。
「若手・中堅・ベテランがうまくかみ合ったシーズンでした」。
阿部はプレー以外にチームをまとめ、牽引する使命を担い、日々チームメイトの様子を確認し、変化に気づいたときは声をかけてアドバイスをしているという。「まあ、僕が声をかけることで不調な選手が好調になるかはわかりませんが、少しでも良くなってくれればいいなと思います」。
このような気づきと配慮があるからこそ、絆は強固なものとなり、強いチームができあがるのだ。
自身の成績を見てみると2009年、阿部は本塁打を量産し、長打率は.587でセ・リーグトップ。ジャイアンツの捕手では初となる3年連続20本塁打、通算200本塁打を記録。日本シリーズでも勝負強い打撃で日本一に貢献し、MVPに選ばれた。
パワーを最大限に活かす
「一つひとつの積み重ねを大事に毎日続けること。それが大きな力になる」。進化の秘訣を彼はこう語りながらも、長打を量産したことについては興味深いコメントを口にしている。「逆方向に打つ時は、思ったより身体の中までボールを入れて打つことができ、それが今年、長打が多くなった要因じゃないかなと思います」。ボールに差し込まれずに、フェアゾーンへ強い打球を飛ばしている阿部のパワーも大きな要因だと窺える。
オリンピックやWBCなど、国際試合への出場経験も豊富な阿部は、パワーについて触れるとアメリカとの対戦経験をもとにこう加えた。「バリー・ボンズらアメリカの強打者と対戦した時、決め球を見逃したと思ったら、その瞬間にバットが出てきて持っていかれる。そのヘッドスピード・パワーには、本当にびっくりした。一言でいうと、パワーが全然違うなと」。
アメリカと比べると彼の身体は小さくパワーも足りないということなのだが、阿部の強靭な身体と成長著しい近年の成績を見ると、パワー溢れるアメリカ野球との対戦は、阿部自身の進化にいい影響を与えたように思える。
阿部のパフォーマンスが進化していくに伴い、2009年、それを支えるギアにも変化が見られた。アンダーアーマーのスパイクを採用したのだ。自分のパフォーマンスが最大限に活かされるもの―これが、阿部本人が選ぶギアの条件だ。「もともと日本になかったので最初は不安もありましたが、履いてみると全く違和感がなく、シーズン通していいパフォーマンスを発揮することができました」。さらに阿部は、母趾球(親指の付け根のふくらみ部分)下に長さの異なる歯を円形に配置した“UAローテーショナルトラクション”を指してこう続ける。「見てもらえればわかるんですが、母趾球のところが特徴的で、この歯が地面をしっかり噛んでくれるので、パワーを逃しません。母趾球は打つ時も投げる時も大事な所なので、ここに着目して今までにない工夫をしてあるのが凄くいいです」。
みんなに履いてもらいたい
疲れにくく、軽くて丈夫なところも気に入っているという阿部。キャッチャーは、ピッチャーの全力で投げるボールを受け、返球する動作を繰り返す。そして投球の数だけ配球を考えるなど、心身ともに力を消耗するハードなポジションである。激しい動きによってかかる負荷を考えると、スパイクに求められる要素がこの阿部のコメントに集約されているのがわかる。
「格好良さも大きなポイントだと思います。僕が履いてみて機能がいいのは良く分かっていますので、学生から大人まで是非皆さんに履いてもらいたいですね」。2009年12月の発売を前に、アンダーアーマーのスパイクについて阿部はこうコメントする。
「2009年、V9時代以来のV3を達成できましたし、僕がジャイアンツにいる以上、それに近づけるように頑張ります。そしてこれからも長く現役生活を続け、ファンの皆さんの記憶に残り続ける選手になりたいと思います」。
高い志とともに進化を続けていく、球界を代表するトップアスリート阿部慎之助。これからの更なる活躍が期待される。