鹿児島第一vs大島北
清野(鹿児島第一)
できることを
「ほっとしました」
延長15回、185球を投げ抜いた2年生エースは試合後、噴き出す汗を拭いながら、安堵の表情を浮かべた。
鹿児島第一の清野亮太である。清野は、いきなり初回から大島北の2番・大茂高享、3番・西健吾、4番・肥後信之介に3連続二塁打を浴び、2点を献上した。
しかし、それ以降は立ち直り、テンポよく、ひたすらミット目掛けて投げ込んだ。そしてどんなピンチにも負けない粘り強さもあった。
初回以外にも、スコアリングポジションに走者を背負うこと計7回、特に15回は無死二、三塁という大ピンチを切り抜けての完投だった。そして気が付けば、14回連続無失点である。
そんな清野について女房役のキャプテン前田竜太郎はこういった。
「今日は低めにストレートを投げることと腕を振ることをテーマにしていたので清野には合格点をあげたい。立ち上がりの2点があるので、点数をつけるなら・・・90点ですね」と延長15回を投げ切った2年生エースを称えた。
実は両校、今春の鹿児島大会1回戦で一度戦っている。その時も延長11回という熱戦を繰り広げ、結果7-6という1点差で大島北が勝利している。それだけに鹿児島第一にとってこの試合は、まさにリベンジとなった。
そんな鹿児島第一が見出した勝因とは何だったのだろうか。そのことについて鹿児島第一の末吉太監督に問うとこう話してくれた。
「力のある選手がいるわけでもないので、『まずできることをきちんとやろう』それだけを意識しようと言ってきました」
それは初回に2失点を献上しながら淡々と15回を投げ抜いた2年生エースに象徴されるように最後の最後まで「できることをきちんとやる」それをやり続けた表れだったのではないか。
「・・・今、私たちにできること、やるべきこと、このグラウンド上で精一杯表現し、一瞬の夏、一生の記憶、今大会を人生の宝物となるような大会にすることを誓います」
今大会の開会式でキャプテン前田竜太郎が行った選手宣誓の言葉。それが、再び胸の奥に響いて止まなかった。
(文=編集部:アストロ)