Interview

福岡ソフトバンクホークス 内川 聖一選手(大分工業高出身) 【後編】

2014.12.03

 前編では、2014年に1500安打を達成した内川 聖一選手のバッティング理論について語っていただきましたが、後編では、そんな内川選手の“マインド”に迫ります。
内川選手を変えたという3つのターニングポイントと、日頃、打席の中で考えている驚きの思考をお伝えしていきます!

【内川 聖一選手の2012年インタビューも合わせてチェック!】
第116回 福岡ソフトバンクホークス 内川 聖一 選手 (前編)
第117回 福岡ソフトバンクホークス 内川 聖一 選手 (後編)

3つのターニングポイント

内川 聖一選手(福岡ソフトバンクホークス)

――以前、内川選手から、一度は野球を辞めようと思っていた時期に、横浜の杉村コーチに、自分の長所だと思っていたことを短所だと指摘されたことで、それが一つのターニングポイントとなり、その年に首位打者を獲得することが出来たというお話しを伺いました。

内川 そうですね。それまで結果がでていなくて、僕は野球選手になった以上、1番にならないとダメだと思っていたんです。中途半端なままだったら、自分でもスッキリしないし、それなら他のことやって1番を目指したほうがいいって思っていた時期でした。

 だから、人間ってタイミング次第で、すごく行き違いが起こるものだと思うんです。もし、杉村さんのアドバイスが前の年だったら受け入れられているか分からないですし、逆に一年遅かったら、僕は現役を辞めてしまっていたかもしれない。
自分が必要な時に、そういうアドバイスをしてくれている人がいるのは、自分の人生でも一番いいことだと思っていますし、そういう人に巡り合わせてもらっている人生は有り難いなと思います。

――そういった経験は、他にもあったのですか?

内川 あとは、(2009年の)国際大会ですね。首位打者と国際大会の2つのきっかけで、内川 聖一という野球選手を作ってもらったなと思っています。
あの試合(決勝戦、3対3で迎えた10回表に)、詰まったライト前ヒットを打ちました。あのヒットで僕の人生変わったなと思いましたね。

 あのバッティングは、それまでは自分の中での感覚しかなかったんですけど、宮崎のキャンプの時にイチローさんに聞いていたんです。『イチローさん、詰まってヒットを打つって聞いたことあるんですけど、ホントですか?』って。そしたら、『ホントだよ』って答えてくださいました。

――詰まったヒットですか?

内川 インコースの速い球をカーンと打ってファールにしても、僕はあまり意味がないと思ってます。それなら、グシャって詰まってショートの後ろに落としたほうがピッチャーも『うわっ』て思う。『やらしいなコイツ』という打ち方をしたほうがええやんってイチローさんに言われたんですよ。それで、『自分は間違えてなかったんだな』って思いました。

――そんなやり取りを当時、イチロー選手とされていたのですね。他にもこれまでに、内川選手に影響を与えた言葉はありますか?

内川 あとは、印象的な言葉でいくと、ソフトバンクホークスに来た時に、王会長から、『練習は120%でやれ。ゲームは80%でいい』と言われました。

 僕は、今までゲームは120%で、練習は80%だったんです。でも、王会長は、『練習で120%振れないやつはダメだ。背中がバキバキバキって鳴るくらい振れ』って。調子にもよりますけど、それくらい振って、身体のキレを作ってゲームに入っていくんだということなんですよね。

 当時、僕は、球場が一番狭いところから、一番広いところに移籍したので、届かせなきゃいけない!という思いもありました。でも、その言葉を聞いて、思いっきり振れるようになってから、飛距離に関しては、コンプレックスがなくなりました。『俺、けっこう飛ぶじゃん!』って(笑)。

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[page_break:プレッシャーのかかる打席の中ではこう考える!]

プレッシャーのかかる打席の中ではこう考える!

内川 聖一選手(福岡ソフトバンクホークス)

――内川選手の中で、この2年間での変化したことを教えてください。

内川 技術面というよりも、精神的な部分では変わったことは大きいです。長く野球を続けていれば、いいことも経験すれば悪いことも経験します。悪いことの経験が増えてくると、いざ何かをやろうとするときの怖さみたいなものが前よりも増えてしまうんですよね。ここでゲッツー取られたら嫌だなとか、ここで打てなかったら、試合の流れが変わったらまずいなとか、少しずつそういう怖さが増えてきましたね。

――そういったものを内川選手は、どう乗り越えていかれるのでしょうか?

内川 僕は、緊張することも、『ヤバイ』って思うことも、当たり前だと思っているんです。ヤバイと思うことに対して、そう思わせないためにエネルギーを使うんだったら、『ヤッベー』って思ったまんまで良いと思うんです。『ヤベーな俺、ヤベー』って思って、やったほうがいい。それが、自分の素直な気持ちだと思って、プレーしています。

 よく、『緊張すんなよ』『大丈夫だよ、いつも通りにやればいいんだよ』って言いますけど、精神的にいつも通りじゃないなら、いつも通りに出来ねぇだろって思うので、いつも通りじゃないなら、いつも通りじゃないままやっちゃえよっていうのが僕の考え方です。

――高校球児たちも緊張する場面は多いですが、そう考えるだけでリラックスできそうですね。

内川 そうですね。高校生の場合、大会はトーナメントですし、1回負けたら終わり。そのためにも、自分が後悔しない方法を考えないとダメだと思います。
というのも、僕は、バットを振った結果がヒットだと思っているんです。でも、バットを振ることが怖くなって、色々考えることで結局、何が正解か分からないまま打席に入ることも出てきてしまうかもしれない。そこは、いけないなと思っています。

――バットを振ることでしかヒットにならないのは、まさにその通りですね。

内川 ボール球だったとしても、『自分が打てると思って振ったならしょうがない』と思っていたことが、ボール球を振っちゃいけない、ストライクを打たなきゃいけないとか考えてしまうと、自分の中の持っているものをどんどん小さくしている気がするんです。

 打席は、基本的には打ちにいく場。時に、ファーボールを選ばなくちゃいけない場面もあれば、打ってはいけない場面もあるでしょうけど、基本的には打ちに行くこと。だって、“バッターボックス”ですから。ウェイティングボックスではないので。バッターとして『打ちに行け』と僕は思います。

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[page_break:内川選手からのメッセージ]

内川選手からのメッセージ

内川 聖一選手(福岡ソフトバンクホークス)

――内川選手が、夢を叶えるために大切にしていることを教えてください。

内川 とにかく、諦めないことが一番大事。中途半端にやらないこと。

『出来るかな、出来ないかな。でも、やれって言われているからやろうかな』そう思うと、多分できない。絶対に自分でやると思ってやらないと、目標って達成しないと思うんです。

 基本、すぐにやったから出来るというのは、目標でも何でもない。それは、もともと持っていたもの。

やっても、やっても、出来ないことを出来るようになることは大変なことだけど、でもそれを目標にし、その上をさらに目指してやらないと、どんなことでも結局は、その場しのぎにしかならないんだと、僕は考えています。

――では、最後の質問です。内川選手の理想のプレーヤー像とは、どんな選手でしょうか?

内川 ホームランも打てて打率も高くて、足も速い選手が一番いいけど、自分の持っている能力の部分があるので、とにかくヒットが打てる選手ですね。
内野安打では、ダメだと思っていて、やっぱり打たないとダメ。よく左バッターが有利とか、右バッターがどうとか言いがちですけど、でも、右だから僕は今のところまで考えられるようになったと思っているので、それは変わらないですね。

 今あるものの中で、自分がどうベストを尽くすのか。あまり、自分が操作できないところに、心を奪われないようにしたいなと思っています。

 内川選手、とても貴重なお話しをありがとうございました!

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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