Column

【三年生座談会】県立畝傍高等学校(奈良)

2012.08.18

僕らの熱い夏

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▲左から土井、中村、宮崎、藤井、藤田、田口、阪本

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 今年の奈良県大会は揺るがしたのは間違いなく、畝傍(うねび)高校だった。2回戦に登場して青翔を破ると、大会のダークホースと言われた高田商関西中央を撃破、準決勝では断トツの優勝候補とさえ言われた智弁学園も破った。

 ビッグサプライズ――を起こした彼らはどんな想いで今大会を戦ったのか。
 受験勉強に励む中、畝傍高校のメンバー7人に集まってもらった。

◎座談会メンバー
土井岳中村侑介宮崎誠藤井慶造藤田秀輝田口文也阪本和之

(インタビュー : 氏原英明

夏の大会の最後を振り返って

▲宮崎誠(県立畝傍高等学校)

――夏の大会の最後を振り返って、見事準優勝でした。この結果に関してはいかがですか?

土井 僕は悔しかったです。

――みなさんも悔しい思いが強かったのでしょうか?

一同 はい。

――決勝までは無欲だったと百合監督が言ってましたが、どうでしたか?

中村 自分たちの野球ではなかったと思います。

――大会前は厳しい組み合わせだったと思いますが、みなさんの中では行けると思っていましたか?

阪本 目の前の一戦を頑張ろうといってました。

――手応えはどこかで感じましたか?

一同 ない!

中村 無理やろっていってました。

土井 それくらい楽な気持ち。

田口 もう終わる、もう終わるって。俺ら、もうすぐ引退やって、言ってましたね。

▲阪本和之(県立畝傍高等学校)

――3回戦の高田商がポイントになったのかと思いますけど、実際はどうでしたか?

阪本 自分たちの野球はできたと思います。

土井 高原さまさまでした。
(高原は今大会は救援投手として活躍。2年生ながらチームの勝利に貢献した)

――記憶に残っている場面とか、それぞれありますか?

土井 ピッチャーに『大丈夫や』って声を掛けながら、ホンマは、どうしよって思っていて、必死にやっていたなと思います。ひとついうと、高原と関西中央戦でスクイズを外せたのが良かったな。

中村 僕はミスも出たんですけど、今大会は守備でいつもどおりの平常心でできたと思います。

宮崎 智弁戦の初回にゲッツーとれたことですね。今年の智弁は強かったんで、あのままズルズル行くんかなと思ったところで、0点に抑えれたので良かったです。

藤井 僕は智弁戦2本のタイムリーを打てたことです。

藤田 智弁戦の藤井の二本目のタイムリー、追いつかれたあとだったんで、その次のチャンスで勝ち越せたので、すごく印象に残っています。

田口 智辯の試合で右中間の打球を捕れた。あれが抜けたら得点になってたので、止めれたのは良かったです!

阪本 自分的には高田商戦でタイムリーを打てたのが良かったですね。

▲中村侑介(県立畝傍高等学校)

――今大会は智弁が強いと言われていましたけど、畝傍は昨年の秋も接戦、智弁戦前はどうだった?

土井 勝てると思ってなかった。実際に投手もすごかったし。

阪本 もう俺たちは終わりやなって感じ。

田口 ホンマ、終わりみたいな。

中村 諦めているんじゃないんですよ。

土井 それくらいの楽しい気持ち。

阪本 楽しむだけ楽しんどこみたいな気持で戦っていましたね。

――でも、戦いながら、行けるって感じはあったでしょ?

土井 いや、(百合)監督さんも、勝たれへんぞっていう感じやったんですよ。

阪本 智弁に勝つなんて無理やって監督は常に言ってました。

田口 回を追うごとにいってましたからね。

土井 4-3でリードした時も、お前らが智弁に勝てるわけないやろって。だから、逆に楽にいけた。

――勝った瞬間は?

阪本 実感はなかった。

土井 全然なかった。


危機感を感じた春

▲田口文也(県立畝傍高等学校)

――そもそも、新チームからはどんなチームだったの?

土井 秋は、勝ってたんですよ。

阪本 新チームが始まったころは調子良かったですし、勝っていたんですよ。

土井 秋が終わってからエグい状況になって、勝てなくなった。

田口 やばい状況になったよな。

阪本 やばかったな。

――そんな時期があったのですね。

阪本 4、5月くらいはきつかったですね。

土井 練習試合で変な負け方してたんです。

阪本 全然ダメだったんです。

中村 そのことを真剣に考えはじめたのは5月くらい。

阪本 このままやったらやばいってなって…。

土井 勝ちたい!ってなって、みんなで意見を言い合いました。

▲土井岳(県立畝傍高等学校)

――それで徐々にまとまっていったのですか?

阪本 ミーティングをして、次の週の練習試合からちょっと良くなってきて、結果も出るようになってきました。

田口 懐風館(大阪)と試合をしたあたりですね。

――どんな話をしたのですか?

土井 練習をメインのメンバーだけでやるのかとか、もっとメンバーを絞るのかとか…。

中村 勝つためにどうしたらいいのかとか。

阪本 最後は絞ったんですけど。

土井 (百合)先生がいうまでは、絞らなかったんですよね。反対意見もあったんで。

中村 でも、この時に、初めて意見が出た感じでした。

土井 今までは言わなかったですね。それぞれ。

――結果が出て見えてきた?

田口 打ち始めたんですよ。

阪本 打ってたけど、守る方はまだやった。

土井 13-10とかで勝っていたんでね。基本は守ろうというのはいってましたね。

少ない練習時間での工夫

▲藤井慶造(県立畝傍高等学校)

――3年間で一番しんどい練習は?

土井 特にこれはきついとか、鬼メニューとかはないですよ。

田口 というよりも、練習時間が短いんですよ。

阪本 長くできへんし……。

土井 どれだけ効率良くするかなので…。

中村 場所も時間もないんで……。

――練習時間が少ない?普段の練習メニューでは何をしてるのですか?

土井 外野と内野に分けて、内野ノックして、外野はバッティングして、時間で交替です。

中村 あとは自主練をするだけです。

阪本 全体の練習時間は7時すぎくらいまでで、そのあとバットを振りたいやつは振るみたいな感じですね。

―― 一番、練習したのは?

土井 高原?(笑)。

田口 間違いない。

――彼の影響は大きかった?

土井 あいつで勝ったようなもんですからね。

中村 常にチームの中心にあいつがいた。

土井 最初はそんなんじゃなかったんですよ。最後の最後に出てきたんです。

田口 急でした。高原しかおらんかった。最後は。

――高原君はチェンジアップが良かったね?

阪本 そうです。

土井 代名詞でした。コントロールがいいんで、リードしやすかったです。

▲藤田秀輝(県立畝傍高等学校)

――3年間を振り返って、こうしておけば、良かったなとかはありますか?

田口 投手やろな。

藤田 僕は個人で練習なんで、あんまりしどくなかった。最後は調子良くなかったんで、つらかったですね。後輩が急成長してたんで、頼りになりました。

藤井 僕は最初はレギュラーじゃなかったんで、秋の大会の智弁戦でホームラン打ってから変わって、自信を持てるようになった。そこから練習もするようになって……。

宮崎 基本的に上位を打たせてもらってて、春終わってからやっと1番を打たしてもらって、1番の自覚が出てきた。いつも、今年のチームは『1番がおらん』っていわれてきたんで、自分が1番になったからには、俺が一番にふさわしいと思われるようにやっていました。

土井 俺はお前が一番やと思っていたで。

宮崎 絶対、俺に打たせてみろっていうのはあった。

土井 でも、最後、肉離れしたんでね。それはちょっと残念でした。


後輩たちへのメッセージ

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▲奈良県選手権大会 閉会式

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――引退して感じることは?

一同 勉強がきつい。

――みんな勉強中?

阪本 国立行こうとか、みんな、そんな感じっすね。

――では、最後に後輩にメッセージをお願いします。

土井 来年、期待できる投手多いので、ぜひ、頑張ってほしいです。俺らみたいに、悩む時期はあると思うんですけど、自分らの野球を見失わず諦めんとやってほしいです。

中村 自分らが勝てたのは、いつも、平常心で自分たちの野球ができたからなので、そういう自分たちの野球というのを作っていって、それを貫いて、悔いのない終わり方をして欲しいです。

▲奈良県選手権大会 決勝での畝傍ベンチ

宮崎 真っ向勝負でいったら、私立には勝てないと思うので、日ごろ、百合先生がいっている、細かい部分を聞いて、考える野球でやってほしいです。

藤井 しんどいと思うんですけど、最後に楽しいことが待っていると思って、頑張ってほしいです。

藤田 頑張ってほしいしか、ないです。

田口 来年は僕らより、能力的には強いんで、勝って行ってくれるんじゃないかなって思います。

阪本 能力的には、落ちることもないし、投手もいい選手いるし今年の夏を経験している選手も多いんで、しっかり今年のことを生かして、勝っていってもらって、甲子園に行ってもらえれば良いと思っています。

――ありがとうございました。

 準優勝といえば、あと一歩届かずに悔しさも多いのかと思ったが、彼らから感じたのは、やりきったことへの満足感だった。だが、その中でも、準優勝だったことには誇りを持っているようだった。一人の選手が言っていた。
『(準優勝の)メダルは一生残るので、嬉しいです。ベスト4より全然違う』

 優勝校の歓喜の中にあって、準優勝校には絶望しか感じないが、彼らにとって、首に懸けられた準優勝メダルが大きな財産になったのだろう。甲子園出場はならなかったが、今年の奈良大会でもっとも輝いたチームとして記憶に残しておきたい。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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