ミズノプロ「フィンガーコアテクノロジー」を調査! 開発者・須藤氏に聞く!フィンガーコアテクノロジーってどんなグラブ?
プロアマ問わず、多くの野球人が愛用するミズノプロに、新たなテクノロジーが加わった。
それが、『フィンガーコアテクノロジー』だ。
開発者の須藤さんは新しいグラブの特徴について「どんなボールでもグラブに入った時に動きやスピンを食い止めるというのが大きな特徴です」と話す。暴れ球を制御する、コントロールするというコンセプトで開発されたこのグラブ、きっかけは守備の名手から聞いた言葉にあった。
ポケットそのものよりもその前段階を重要視
フィンガーコアテクノロジーの開発者・須藤さん
「荒木さん(中日ドラゴンズの荒木 雅博選手)から2年か3年前に、『打球が変化してる。昔の打球と今の打球は全然違う。汚い回転の打球がすごく増えた』と。ピッチャーが動くボールを投げることが多くなってますし、そういうところも関係あるのかな。人工芝が増えているのもありますし、打者のパワーが上がってることもあるんですけど、あれだけ長くやられてる方が言われることなのですごい説得力がありました。
ボールの変化によってグラブも合わせて行かないといけないという思いがそこで生まれて、じゃあ打球の変化に応じたグラブってどんなものが出来るのかな、汚い回転の暴れるボールを制御するグラブを作りたいなというところからコンセプトが固まってきて、他の選手にも話を聞かせてもらうと同じことを言う選手が多くて、プロの選手でもまだそれを感じているということに驚いたのと同時にグラブとして必要なことにボールを抑える、食い止めるということが重要だなと改めて思いましたんでこのグラブの開発に着手しました」
超一流のプロ野球選手でさえ手を焼いていた暴れるボールへの対応。一言でボールを抑える、食い止めるグラブと言うのは簡単だがそれを表現するのは容易ではない。
「一から考え直して、ポケットの位置をどう工夫したらいいのか、ボールが直接ポケットに入ればボールは止まるんですけどゴロの場合はいろんな角度からボールが入ってきますので、ポケットに誘導するにはどういう形にしたらいいのか。グラブの形からポケットの特徴をどう出すか、ポケットに収まってから今まで以上にボールを止めるにはどうしたらいいか」
見出した答えはポケットに誘導する形、ポケットそのものよりもその前段階を重要視することだった。
巨人の坂本 勇人選手らが実際に使用!
フィンガーコアテクノロジー
「ポケットは使い込んでいくうちに出来ていくものですので、その前段階、ボールが入ってポケットに移動するまでの過程にポイントを置いてます」それがフィンガーコアテクノロジーという構造。指に軸、パワーを持たせることによりどこに当たっても指のパワーでポケットに誘導することが可能となった。
まだ存在していないものを作る。その苦労は並大抵のものではなかったが、クラフトマンと何度も話し合いイメージを共有し、試作品を重ねる毎に理想へと近づき、約1年前にフィンガーコアテクノロジーがほぼ完成。
「グラブは見た目で違いを出すことが難しい。全く違うグラブというのは表現し辛いんですけど、これははめた瞬間にいつもと全然違うと僕が感じられたので1番印象に残ってます」グラブ開発担当者という職業柄、ある意味では誰よりも様々なグラブを知っている須藤さんの手が感じた感触は確かなものだった。2016年のキャンプからは荒木選手やゴールデングラブ賞を受賞した巨人の坂本 勇人選手らが実際に使用している。
「指裏の構造が肝なんですけど、新しい構造を入れることによって指通りがスムーズになってフィット感が上がる。実際に使ってみるとボールの収まり方が違う、と言っていただいた」トップ選手が実際にはめてみた感想もコンセプト通りのものだった。
では、このグラブを使うことによってプレーにはどんな影響が出るのだろうか。
「しっかりボールを抑えられるということは単純にエラーが減る、ということもありますし、スローイングエラーって多分ちゃんと握れてなくてエラーしてることが多いと思うんで、そういう意味では一連の流れ中で精度を上げられるんじゃないかなと思います」
三遊間の強い打球をショートが回り込んでグラブに収めるも、不十分な握りのままの送球は逸れ余分なワンベースを与えてしまう。高校野球ではよく見かけるシーンだ。一発で握れなかった時点で握り直せば一塁は間に合わない。アウトにするには一か八か大まかな握りで投げるしかないが、好結果に結びつくことは極めて少ない。無死二塁と一死走者無しでは状況が180度変わる。そのリスクを回避してくれるのがこのグラブだ。
「外野手に関してもプロの選手もよく言うのが速いゴロが来た時にバウンドする中で動く、プロの選手はスネイクする動きと言うんですけど、外野手に関してもそういうところに影響してくるかなと」
ゴロ以外でも不規則な回転のライナーや揺れながら落ちてくる高いフライは外野手の天敵だが、そのような打球に対しても捕球の確実性が増す。もちろん9人目の野手、投手も同様だ。
「投手もフィールディングの中でボールを抑え込む、野手で生きるような機能が入ってることに興味を持たれるというか、プロ野球選手からもいいコメントいただきました」
野球専門店のグラブマイスターに直撃!
さらに投手がこのグラブを使うメリットはフィールディングだけにとどまらない。指に軸を持たせる構造上、耐久性がアップしている。
「リリースで人によっては力強く握る人もいますんで、何度投げても強く握り込んでもグラブの型崩れを軽減できる。内野だけでなく全ポジションに意味のあるグラブに出来たかな」
フィット感、耐久性は増しているが重さはほとんど変わってない点も扱いやすい軽めのグラブを好む選手にとっては嬉しいポイント。ミズノプロはこれまでも3Dテクノロジー、4Dテクノロジーなど次々と新しい技術を取り入れ進化してきたが、ボールをしっかり抑え込む、食い止めることの重要性はこの先何年経っても変わらない。フィンガーコアテクノロジーは今後のミズノプロのスタンダード、標準装備になると見て間違いない。
「今まで出来なかったことを出来るようにしてあげるのが僕らの仕事だと思ってるので、今まで捕れなったボール、弾いてしまったボール、スローイングにつなげられなかった打球をこのグラブで解消出来ると思います。これがあったから勝てた、これがあったから甲子園行けた、とそんなグラブになってると思いますのでぜひ1度手に取っていただけたらと思います」
今年2月に発売されてから、各野球用品店では人気の商品となった。2017年シーズンは球際の強さが勝敗を分ける。
フィンガーコアテクノロジーってどんなグラブ?
・フィンガーコアテクノロジー特設サイト
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フィンガーコアテクノロジーってどんなグラブ? -
今本さん(左)と小磯さん
今回は、栃木県にある岩渕スポーツのグラブマイスターの今本さんに直撃!これまでたくさんのグラブを手にされてきた今本さんですが、「フィンガーコアテクノロジー」のスゴさを聞きました。
「見た目では大きな違いは分からないかもしれないですが、皮質と、さらに手を入れたグラブの中の部分が、今までのものとは違うことが分かります。実際に、グラブを手にはめてみるとフィット感というか、しっくりくるような感じを受けます。また、捕球などでグラブを握る際に力が入れやすいのが特徴です。新入生はもちろんですが、上級生の選手たちにもオススメのグラブです」