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中京大中京が連覇を成し遂げた「群雄割拠」東海地区の3大ニュースを振り返る

2020.12.29

 新型コロナウイルスに襲われた今年の日本。高校野球だけではなく、あらゆるスポーツ界で大会の中止などが余儀なくされていった。そんな中で高校野球は、6月になって制限付きながら対外試合が許可されるようになった。

 甲子園を目指す選手権大会は中止となったものの、7月には各県での独自の大会は開催された。そして、例年とは多少形式が変更されたところもあったが、秋季大会は地区予選~県大会、東海地区大会と開催することが出来た。

 そんな東海地区の2020年の高校野球ニュースを拾ってみた。

①同じ顔触れとなった決勝は中京大中京の2年連続11回目の優勝となる

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2年連続で優勝した中京大中京

 何校かの有力校がしのぎを削り合う群雄割拠と言われて久しい東海地区の高校野球である。

 そんな中で、秋季東海地区大会で2年連続して決勝が同じカードとなったのは極めて稀有なことだ。しかも、結果は2年連続で中京大中京が競り勝って優勝して、県岐阜商が準優勝となった。

 因みに、新制高校となった1948(昭和23)年からの大会記録を調べてみたが、同じ学校同士で2年連続して決勝が争われたという例はなかった。念のため春季東海地区大会の記録も見てみたが、そこでも実現していなかった。つまり、東海地区大会史上初の2年連続同一決勝カードの対戦ということだった。

 いずれにしても、この両校が現在、東海地区の高校野球を引っ張る存在であることは間違いない。そして、いずれも戦前の中等野球時代から甲子園で活躍して全国に名を馳せていた伝統校である。そんな両校が、新時代の令和となって、改めて健在ぶりを示していることも特筆すべきことと言っていいであろう。

 ところで、調べついでに東海地区大会での中京大中京と県岐阜商の対戦は、昨年決勝の前はいつだったかと言うと、遡ること61年、1958年の準決勝で当時の校名で「岐阜商4対2中京商」という記録があった。

 実は、昨年の決勝対決は秋季東海地区大会としては、それ以来の対決だったということである。また、その3年前の1回戦でも岐阜商が中京商を3対1で下している。

②県岐阜商と東邦が引退試合を実施。三岐大会も46年ぶりに実施

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響は、甲子園の中止が決まった後も高校野球では様々な場面に影響を及ぼしていた。その後に、夏季大会として各都道府県連盟が独自大会を開催していくこととなったが、その中でも出場校で影響を及ぼされたところもあった。

 愛知県では東邦、岐阜県では県岐阜商という名門校も、校内にコロナに感染した生徒が発生したということで、大会半ばで出場辞退ということになってしまった。選手たちにとっては極めて悔しい形になってしまった。

 最後の戦いの場を失った3年生たちの思いも汲んで、県岐阜商の鍛治 舎巧監督の提案もあって、8月27日に名古屋市の[stadium]パロマ瑞穂球場[/stadium]で、3年生たちの引退試合という形で交流戦が組まれた。


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夏の静岡の頂点に立った聖隷クリストファー

 試合は県岐阜商が11対2という大差で勝利するという形になったが、勝ち負けがどうこうとかではなかった。それぞれの思いで進学した強豪校で、目指してきた大会を奪われながらも、最後に高校野球としてのけじめをつけられる舞台を得られたというところに大きな意義があった。

 鍛治舎監督は、「ここへ向けて、練習してくることも出来たし、いい区切りになった」と、大会辞退となってしまった後も、さらなる目標を維持しながら高校野球に取り組めた選手たちのことを思ってコメントしていた。

 また、夏の独自大会終了後に、三重大会優勝のいなべ総合と岐阜大会優勝の大垣日大も対戦している。接戦となったが、逆転の末に大垣日大いなべ総合を9対8で下した。

 なお、岐阜県と三重県は、夏の選手権では1県1校代表となる前の74年まで三岐大会として岐阜県と三重県から各2校で甲子園を賭けての戦いが行われていた。それ以来の、三岐大会という形になった。

③静岡県の独自大会は7回制で実施しながら聖隷クリストファーが優勝

 静岡県の独自大会は7回制で行うということが事前に発表されていた。

 今年の7月は雨の週末が多かったのだが、さすがに中止だろうと思った日も、念のために確認したら、「予備日が少ないので、可能であれば開始を遅らせても行う」という返事だった。こうして[stadium]静岡草薙球場[/stadium]は3時間遅れながら始まって4試合をこなせたというケースもあった。

 7回制ということでもあり、1時間半くらいで試合が終了するケースが多いという判断もあったであろうか。また、[stadium]草薙球場[/stadium]の場合は、ナイター設備もあるし、水はけも悪くないようだ。大会役員の人たちや各校の部員が手分けして水抜き作業なども行って開催にこぎつけた。

 他の球場でも、多少強攻して進めていたところもあったが、横に長い静岡県、しかも県北部の方は山があるのでどうしても土質そのものも水はけがよくないということもある。ある意味ではそういう判断も大事だったということであろうか。

 それでも3回戦が翌週となり、残り試合を翌日それぞれで開催するという日程に組み替えられた。そして、最終的には日程の都合で準決勝と決勝が同日に開催されるということになった。大会としては聖隷クリストファーの初優勝で終わった。大会としては、始めた以上は何とか最後まで完結してほしいという思いも伝わってきた。

 やれることを模索しながら実現していこうという姿勢の大事さをコロナ禍で改めに認識させられたと言ってもいいのではないかと思わされた。

(記事=手束 仁

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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