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キズの種類と創傷処置

2013.07.30

クロスプレーやスライディングでは擦過傷がよくみられる

こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

グランドで練習や試合を行っていると、ふとしたプレーの中で擦り傷や切り傷などを負うことがあります。多くの場合はその場の応急処置で対応し、プレーを続けることが多いのですが、まれに傷口からばい菌などが侵入し、感染して病院を受診しなければならないケースもあります。
今回はこうしたキズ=創傷(そうしょう)についてお話をしたいと思います。

キズは専門的にいうと「創(そう)」と「傷(しょう)」に分けることが出来ます。「創」とは鋭利なもので切ってしまったといった場合の開放性のキズのことであり、「傷」は打撲したときのような切り口のない閉鎖的なキズのことを言います。スポーツ現場で頻繁に起こる「創傷」はいろんな種類があります。

●擦過傷(さっかしょう)
皮膚を擦(す)ったときにできる創で、出血やヒリヒリした痛みを伴います。キズが広範囲になることもしばしばで、感染を起こしやすいと考えられています。回復の具合は皮膚へのダメージの範囲によります。また皮膚の下に血腫が出来る場合もあり、そのときは注射で抜くようにします。

●挫創(ざそう)
小石などが多くあるグランドでスライディングを行ったときなどに出来る創。皮膚がつぶされて擦られたように挫滅(ざめつ)し、キズ口はギザギザです。化膿しやすく治りが遅いことが多いと言われています。

●切創(せっそう)
刃物などで切れたときに出来る創。切り口はシャープで周辺組織へのダメージは少なく、刃物が汚染されていなければ化膿することも少ないと考えられます。ただし創が深い場合には皮下の腱や血管、神経などに損傷を与えている場合があるので注意が必要です。

●割創(かっそう)
選手同士の頭がぶつかったときなどに起こる創で、皮膚が割れた状態になります。キズ口の周辺組織につぶされた部分がある場合はそこが壊死を起こすので、縫合する場合にはその部分を切除してから行います。

●刺創(しそう)
針を踏んだときなどに出来る創。キズ口は小さく出血もほとんどみられない場合もありますが、キズは深部まで達していることが多いと考えられます。足裏は皮膚が厚いのでキズ口ががすぐに閉じてしまい、嫌気性(けんきせい:酸素を必要としない)の破傷風菌が増殖しやすいため注意が必要です。病院に行く際は、治療の参考となるため、刺したり踏んだりした針や釘を持参するとよいでしょう。


水で洗い流すことが基本ですが、広範囲にわたるキズは医療機関を受診しよう

皮膚組織が損傷された場合は、まず傷口部分を清潔に保つ必要があります。損傷した皮膚から病原菌や土砂などの異物が入るのを防ぐためです。細菌による感染は数時間で成立してしまうということもあるので注意が必要です。出血の程度が軽い場合には水道水で傷口をよく洗うようにしましょう。出血が多い場合にはガーゼなどを直接あてて止血します。

昔は消毒をして傷口を乾かし、かさぶたが出来るのを待つようにしていたものですが、最近では消毒をすることで傷口の治癒が遅くなるとも言われており、「乾かさない治療」として湿潤治療をすすめる医療機関も多くなっています。

湿潤治療の基本は「傷口を乾かさない」「消毒をしない」「ガーゼで傷口を覆わない」です(出血時にガーゼを利用するのはあくまでも止血目的であり、治癒目的では使わない)。最近では湿潤治療としての絆創膏も薬局などで購入できるようになりました。

傷口を水道水(もしくは生理食塩水)で洗い流し、その後乾かさないようにすることが基本ですが、砂利や砂などがまじった広範囲に及ぶ擦過傷や、動物などに噛まれた傷(咬傷:こうしょう)はさまざまな感染症を引き起こす危険がありますので、自己判断で湿潤治療を選択せず、消毒を行った後に病院を受診するようにしましょう。

参考サイト)新しい創傷治療

 
【キズの種類と創傷処置】
●創傷とは皮膚組織が損傷されたいわゆる「キズ」のこと
●スポーツ現場でよくみられるのは「擦過傷」、「挫創」など
●皮膚組織が損傷された場合は、まず傷口部分を清潔に保ち止血を行う
●「湿潤治療」は傷口を乾かさないで治癒を促す方法
●広範囲におよぶ創傷、咬傷などは安易に判断せず医療機関を受診する

(文=西村 典子

次回、第74回公開は08月15日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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