Column

ケガをした選手の練習参加

2013.04.14

医師からケガに対する今後の指示を受けるようにする

こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

今回はケガをしている選手が、どのように練習に参加すればいいかについて書こうと思います。「練習を休むとメンバーに入れなくなるから休まない」という風潮はケガの悪化を招くだけではなく、ガマンすることでより選手生命に関わるような深刻な状況になってしまうことも考えられます。
全体練習には参加できなくても、チームの一員として、またケガを早く治すために出来ることなどについてお話をしたいと思います。

ケガなどで全体練習に参加出来ないときは、一度病院を受診して医師の診察を受けるようにしましょう。そこで確認することは、
●どの部位を痛めているのか(骨・関節・筋肉・腱・靱帯・神経など)
●何が原因なのか(投げすぎ・使いすぎによるものか、急性外傷など突発的なものか)
●およそ完治までどのくらいかかるのか
●練習再開のメド
●「やっていいこと」「やってはいけないこと」

などです。代替医療とよばれる「接骨院」「整骨院」「鍼灸院」(国家資格)「カイロプラクティック」(民間資格)等では、どの部位を痛めているかといった推察は出来ますが、診断をくだすことは出来ません(これはトレーナーも同じです)。超音波の装置などを使って「靱帯損傷しています」といった診断をくだす専門家がいらっしゃるようですが、あくまでも「靱帯損傷の疑い」であり、診断は病院で検査などを受けることを覚えておいてください(※ただし保険適用の認められている柔道整復師は施術が認められている骨折・脱臼・打撲等の症状に応じて「判断」して治療をすることが可能です)

さて、診断がくだってケガの状況がわかったら、まず患部外トレーニングを始めるようにしましょう。患部外トレーニングとは、ケガによる安静など運動量の低下が原因となって、ケガをしている部位(=患部)以外まで機能低下してしまうことを防ぐために行われます。医師からの指示を受けることが前提で、「やっていいこと」の中に患部外トレーニングは含まれます。たとえば右肘が痛くて投げられないという場合、痛めている部位は右肘ですが、下半身や左腕、体幹などは特に問題なく動かせると思います。そういった場合に下肢の強化としてのトレーニングや左腕、体幹等のトレーニングを行うようにします。ランニングなどの衝撃で右肘に影響がある場合などはこの限りではありませんが、このケースでは、ランニングを行っていいかどうかをあらかじめ医師に確認しておくようにしましょう。


指導者と相談しながらフォームチェックをすることも必要

患部外トレーニングとともに取り組むことは患部に対するリハビリテーション(以下リハビリ)です。これは専門家のいないところではむずかしいことが多いのですが、診察を受けたときに患部に対する指示も聞いておくようにしましょう。
過度に動かしてはいけない安静期間の目安や安静期間を過ぎて最初に始めることなど、そのケガの状況に応じて行うようにします。
病院で診断が確定すると、リハビリを専門とする理学療法士とともに時間をとって行うことも多く、通院しながら競技復帰に向けて専門家のサポートを受けるケースも増えています。

「これはやっていい」と言われたけれど「どのくらいの量、どのくらいの時間、やっていいのかわからない」といったこともあると思います。私が選手によくアドバイスしていることは、「トレーニングなどを行っていて痛みが出るか、出ないか」「痛みが変わらないか、ひどくなるか」でストップをかけるようにしています。痛みは一つのケガの指標ですので、これが悪化しないことが大前提となります。この他にもケガの指標としては「腫れ」「熱感(ねっかん)=患部をさわると他の部位よりも熱く感じる」「発赤(ほっせき)=患部が赤くなる」などが炎症症状としてみられます。なるべくこういった兆候が出ないように注意しながら、「やっていい」と指示を受けたリハビリやトレーニングを行っていくようにしましょう。そして患部を動かしたときには練習後に氷などで冷やすことも忘れずに行います(RICE処置)。

こういったリハビリやトレーニングと並行して考えてもらいたいのが、「なぜケガをしたのか?」という原因です。医師からも話があると思いますが、使い過ぎや投げすぎによる慢性的なスポーツ障害は、フォームに原因があることも少なくないからです。ケガをして休んでリハビリをしたけれども、同じフォームで投球を再開するとまた同じように痛めますよね? こういった繰り返しにならないよう、直接指導してくださる監督・コーチなどと相談しながら練習に取り組むようにしてください。「休んだらダメ」という雰囲気をなくし、「キチンと休んでしっかり治す」。不完全なままの競技復帰では、同じ部位をケガしてしまうリスクは非常に高くなります。高校野球は2年間半という限られた時間です。長期に休まないためにもケガをした際には早めに対応することを心がけるようにしてくださいね。

【ケガをした選手の練習参加】
●ケガで練習に参加出来ない場合はまず医療機関を受診する
●患部以外の機能を落とさないために患部外トレーニングを行う
●患部のリハビリについては専門家の指示のもとに行う
●「痛み」「腫れ」「熱感」「発赤」等の症状がひどくなったらリハビリをストップする
●リハビリ後、練習後にはRICE処置を行う
●ケガの原因を把握し、フォームによるものであれば指導者と相談して改善する

(文=西村 典子

次回、第67回公開は04月30日を予定しております。

このページのトップへ


この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.02

【茨城】常総学院、鹿島学園、水戸一、つくば秀英が4強入り<春季県大会>

2024.05.02

激戦必至の春季千葉準決勝!関東大会出場をかけた2試合の見所を徹底紹介!

2024.05.02

【長野】松商学園、長野日大、東海大諏訪などが県大会出場へ<春季県大会支部予選>

2024.05.02

【四国】高松商、33年ぶりの決勝進出の立役者は茨城の強豪シニア出身の1年生右腕!<春季地区大会>

2024.05.02

春の神奈川準決勝・東海大相模vs.横浜の黄金カード実現! 戦力徹底分析、試合展開大胆予想!

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.28

【広島】広陵、崇徳、尾道、山陽などが8強入りし夏のシード獲得、広島商は夏ノーシード<春季県大会>

2024.04.28

【長野】上田西、東海大諏訪、東京都市大塩尻が初戦突破<春季県大会支部予選>

2024.04.28

【鳥取】鳥取城北が大差でリベンジして春3連覇<春季県大会>

2024.04.28

【岡山】関西が創志学園に0封勝ちして4強入り<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.21

【兵庫】須磨翔風がコールドで8強入り<春季県大会>

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>