適切に対応したい突き指
捕球時にはイレギュラーバウンドなどにも気をつける
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
早いもので6月も半ばとなりました。読者の皆さんは夏の大会に向けてチーム、個人のレベルアップのために毎日練習をがんばっていることと思います。さて今回は多くの選手が経験したことのある「突き指」について取り上げてみたいと思います。イレギュラーバウンドが指に当たった、ダイビングキャッチを試みて地面に手をついた等、いろんな場面で思いがけず指を突いてしまうこともあるでしょう。突き指についての基礎知識と適切な対応についてお話をしたいと思います。
「突き指」とはなじみのあるケガですが、これは正式な傷害名ではありません。指を突いたという状態のことをさすので、一言で「突き指」といっても軽いものから重度のものまでさまざま考えられます。ちなみに「捻挫(ねんざ)」も正式な傷害名ではありません。こちらも捻って(ひねって)、挫いた(くじいた)状態をさします。
突き指は「引っ張って治す」と言われていた時代もありますが、これは行ってはいけない対応です。指を突いたことによって二次的に関節がひねられたり、過伸展といって過度に伸ばされた状態になることが多く、関節のみならず指の側面についている靱帯や筋肉、腱、骨などへのダメージが考えられるからです。多くの場合、指を突いてしまうと患部が腫れてしまいますが、これは中の組織が損傷し、内出血などが起きていると思われます。まずはケガの応急処置であるRICE処置を行いましょう。指の固定については、割り箸とかボールペン等ある程度硬さがあるものを副木代わりにして一緒に固定します。こういったものがない場合は隣の指と一緒に二本まとめて固定すると良いでしょう。腫れの程度や痛みがひどい場合、指の変形、音を伴ったような激しい突き指が見られる場合はまず整形外科を受診するようにしましょう。
突き指の程度がひどい場合は病院でレントゲンを撮ろう
突き指によって起こる代表的なケガをあげます。
【爪下血腫(そうかけっしゅ)】
爪の下に血が溜まって色が変色した状態です。いわゆる「血豆」ですね。爪の下にある神経は刺激に反応しやすく、出血が多いと中の組織を圧迫して痛みを伴います。爪の変色ばかりに気をとられていると、爪下の骨(末節骨)が骨折していることもあるため、注意が必要です。爪に穴をあけてうっ血を解消すると痛みは和らぎますが、この場合は病院を受診した上で適切な対応をとってもらうようにしましょう(自分で行うと感染などの危険性が増す)。
【側副靭帯(そくふくじんたい)損傷】
最もよく見られる突き指によるケガです。指の側面に関節の動きを制限するため(ヘンな方向に曲がらないよう)に靱帯がついているのですが、この靱帯を部分的に損傷したり、程度がひどい場合だと切れてしまったりします。切れてしまった場合は手術を行いますが、多くの場合は固定し、安静にすることで痛みとともに患部も安定してきます。
【指骨骨折】
指を構成する骨を骨折してしまうケースです。関節ではないところにひどい腫れや痛みを伴う場合は、レントゲンをとって骨折していないかどうか確認することが必要です。
【脱臼骨折】
指を突いた衝撃で関節の脱臼とともに骨折するということがあります。突き指の中でも重度であり、適切な処置を行わないと指の機能が完全に回復しないこともあります。明らかに指が別の方向を向いてしまった、激しい痛みが続く場合は早急に整形外科を受診するようにしましょう。
突き指は日常的に起こりやすいケガの一つですが、その程度は軽いものから手術を必要とする重度のものまでさまざまです。様子がおかしいと感じたら、まずは病院を受診してどの部位を傷めたのか、適切な診断と治療を受けるようにしてくださいね。
【適切に対応したい突き指】
●突き指は日常的に起こりやすいケガだが、その程度は軽度から重度までさまざまある
●突き指に「引っ張って治す」処置はNG。まずはRICE処置を。
●固定に用いる副木には割り箸・ボールペンや隣接する指を使う
●突き指によって爪・靱帯・腱・関節・骨などが損傷する
●腫れや痛みがひどい場合、明らかな変形がある場合は早急に病院を受診する
(文=西村 典子)
次回、第47回公開は06月30日を予定しております。