【センバツ総括】小関順二が選んだ選抜ベストナイン!
第87回選抜高校野球大会は優勝候補の一角と目されていた敦賀気比の優勝で幕を下ろした。近年躍進がめざましい北陸地方(新潟、石川、富山、福井)に優勝旗がもたらされたのは史上初と言われてもピンとこない。徐々に高校野球の勢力図が変化していることだけは間違いない。
ここでは大会の総括というより、私の選んだ大会ベストナインを紹介したい。選出基準は、「将来プロ野球で活躍する可能性のある選手」である。選出理由を書く中で大会の総括もできればいいと思っている。各ポジションの候補選手は最後に紹介しているので参考にしていただきたい。
投手・捕手編
高橋 純平(右)と加藤 惇也のバッテリー
【投手】
投手は1人だけストレートが150キロを計測した高橋純平(県岐阜商3年)(インタビュー【前編】【後編】)が文句なくナンバーワン評価。球が速いだけでなく、コントロールが緻密で(とくに外角低めは絶品)、変化球の精度が高かった。「高校3年春」現在のピッチングの凄みという点で藤浪 晋太郎(大阪桐蔭→阪神)、大谷 翔平(花巻東→日本ハム)(関連記事)に一歩譲るが、完成度の高さでは上を行っていると思う。
高橋以外では左腕に好投手が目立った。鈴木 昭汰(常総学院2年)、江口 奨理(浦和学院3年)、早川 隆久(木更津総合2年)たちで、高校卒業時にドラフトにかかるとは思わないが、社会人の3年間ないしは大学の4年間を過ごしたあとのプロ入りなら十分考えられる。
佐藤 世那(仙台育英3年)(インタビュー)、平沼 翔太(敦賀気比3年)(インタビュー)の両右腕も個性を発揮した。佐藤は生命線であるフォークボールにバリエーションがあり、平沼は内角を攻める攻撃的投球とスライダーのキレのよさで目を引いた。
★5試合すべてに完投しチームに優勝をもたらした平沼をベストナインに選出しなければならないのかもしれないが、選出基準は「プロ野球で活躍する可能性」なので、ここは迷いなく高橋 純平を推したい。
【捕手】
イニング間の二塁送球で2秒未満を計測し、なおかつ打撃が優れているのは柘植 世那(健大高崎3年)、堀内 謙伍(静岡3年)、谷口 一樹(大阪桐蔭3年)の3人だった。チームで中軸を打っている柘植と堀内に対して谷口は6番打者だが、2回戦では八戸学院光星を突き放すソロホームランを打つなど8強進出の後押しをしている。
★谷口、柘植とも攻守でチームを牽引したが、昨年から中心選手としてマスクをかぶり甲子園に出場するなど経験値が高い堀内を推したい。準々決勝の敦賀気比戦では7回、篠原 涼の二盗を阻止したときの二塁送球タイムが実戦のものとしてはレベルの高い2.08秒だった。柘植は昨年のような溌剌さがなく、谷口はスリークォーターから出るスローイングに一抹の不安があった。
内野手・外野手編
松本 哲幣 (敦賀気比)
【一塁手】
右の長距離砲、山崎 滉太(浦和学院3年)と坂口 獏弥(天理3年)が候補だ。山崎は準々決勝の県岐阜商戦で8回、高橋 純平から放った4点目のタイムリー二塁打、坂口は1回戦の糸満戦で7回、レフト最深部に放り込んだ2ランホームランが評価対照。
★山崎は打った相手が高橋という部分で追い風が吹くが、打球の迫力では坂口に及ばなかった。その坂口にも注文を出すとトップ時のバットの引きが大きすぎてスイングが窮屈になっていた。天理打線全体の問題なので、「後ろ小さく前大きく」を徹底してもらいたい。
【二塁手】
例年、二塁手は小粒な選手が多いが、今年は宇草 孔基(常総学院3年)、永廣 知紀(大阪桐蔭2年)というスケールの大きい選手が揃った。大会を通しての打率は宇草.308、永廣.333と永廣が上回るが、直接対決した準々決勝の1回表、試合開始のサイレンが鳴り響く中、初球ストレートを右中間スタンドに放り込んだ宇草の積極打法が忘れられない。
★1回戦の宇草の二盗を見た在京球団のスカウトは「カモシカみたいですね」と笑った。走攻守が高いレベルで揃い、二塁手としては183センチの長身も目を引いた。
【三塁手】
三塁手は諏訪 賢吉(浦和学院2年)、北本 一樹(二松学舎大付3年)、篠原 涼(敦賀気比3年)に惹かれた。諏訪は好打・俊足・強肩、北本は長打・強肩、篠原は力強い打撃というセールスポイントがある。北本は1回戦負けが減点材料になり、諏訪と篠原の対決になった。
★ボテボテのゴロを捕球したあとの矢のようなスローイングは北本にも共通する長所である。篠原との比較では脚力で差をつけた。龍谷大平安戦(試合レポート)の10回表、内野ゴロを放ったときの一塁到達タイムが3.92秒と高レベル。
【遊撃手】
このポジションは相変わらず人材が豊富だ。ピックアップしたのは平沢 大河(仙台育英3年)、檜村 篤史(木更津総合3年)、安本 竜二(静岡3年)、林中 勇輝(敦賀気比2年)、福田 光輝(大阪桐蔭3年)の5人。平沢と福田は好打と強肩、檜村、安本、林中は強打に定評がある。
★5人の中から平沢と林中が最終候補になり、私が選んだのは平沢のほう。林中は打ちにいくまでの粘っこいタイミングの取り方が秀逸で、試合を経るごとにうまさが増していた。それでも守備面の安定感でひときわ目立った平沢のほうが上と評価した。
【外野手】
外野手は9人候補を選び、その中からまず青木 玲磨(仙台育英3年)、荒原 祐貴(常総学院3年)、松本 哲幣(敦賀気比3年)、藤井 健平(大阪桐蔭3年)、舩曳 海(天理3年)を選んだ。青木はチャンスメーカーとしての確実性とセンター守備、荒原は2試合連続ホームランの強打、松本はさらにインパクトの強い2打席連続満塁ホームランと翌日の優勝を決定づける2ランホームラン、藤井はライトからの強肩と強打、舩曳は糸井 嘉男(オリックス)を彷彿とさせる強打と俊足を評価した。
★この中から選んだ3人は荒原、藤井、舩曳だ。チームでのポジションも荒原はレフト、舩曳はセンター、藤井はライトなので、そのまま慣れたポジションで戦えると思った。これは18U代表での戦いを想定した。ピックアップメンバーを考えるとき、たとえば遊撃手を二塁にコンバートする傾向があるが、私は好きではない。高校にいる間は学校で守っているポジションで戦ってほしいと思った。
小関順二が選んだベストナイン一覧!
★は小関氏が選んだベストナイン
【投手】※は野手にコンバート
佐藤 世那(仙台育英3年・右右) 180/76
鈴木 昭汰(常総学院2年・左左) 175/72
江口 奨理(浦和学院3年・左左) 170/68
早川 隆久(木更津総合2年・左左) 178/68
森 奎真(豊橋工3年・右右) 182/74
★高橋 純平(県岐阜商3年・右右) 183/76
平沼 翔太(敦賀気比3年・右左) 178/75
小川 良憲(近江3年・右右) 178/75
※勝俣 翔貴(東海大菅生3年・右左) 180/80
【捕手】
郡司 裕也(仙台育英3年・右右) 180/79
柘植 世那(健大高崎3年・右右) 176/78
西野 真也(浦和学院3年・右右) 174/79
★堀内 謙伍(静岡3年・右左) 176/80
谷口 一樹(大阪桐蔭3年・右右) 173/73
堤田 礼雄(天理3年・右右) 180/73
【一塁手】
山崎 滉太(浦和学院3年・右右) 181/86
★坂口 獏弥(天理3年・右右) 185/90
【二塁手】
★宇草 孔基(常総学院3年・右左) 183/73
永廣 知紀(大阪桐蔭2年・右右) 173/74
【三塁手】
★諏訪 賢吉(浦和学院2年・右左) 174/74
北本 一樹(二松学舎大付3年・右右)177/78
篠原 涼(敦賀気比3年・右左) 168/71
【遊撃手】
★平沢 大河(仙台育英3年・右左) 176/71
津田 翔希(浦和学院3年・右右) 173/73
檜村 篤史(木更津総合3年・右右) 180/75
安本 竜二(静岡3年・右右) 178/80
林中 勇輝(敦賀気比2年・右右) 180/68
福田 光輝(大阪桐蔭3年・右左) 175/70
貞光 広登(天理3年・右左) 174/69
【外野手】
青木 玲磨(仙台育英3年・右右) 175/75
★(レフト)荒原 祐貴(常総学院3年・右左) 177/81
和田 慎吾(常総学院3年・右右) 186/78
松本 哲幣(敦賀気比3年・右右) 178/75
青柳 昴樹(大阪桐蔭3年・右右) 182/83
★(ライト)藤井 健平(大阪桐蔭3年・左左) 175/73
★(センター)舩曳 海(天理3年・右左) 182/72
奈良大附池田 陵太(奈良大付3年・左左) 185/80
藤原 睦来(今治西3年・右右) 183/83
(文=小関 順二)