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2015年の高校野球を占う【沖縄編】全国的に珍しい選抜出場校の継続的な強さ

2015.02.20

 第87回全国選抜高校野球大会の出場全32校も決定し、対外試合解禁日まで残り一ヶ月を切った高校野球界。長い冬を経て、その勇姿を披露してくれる時の足音は、すぐそこまでやってきている。それまでの間、春の大会及び夏の陣など、今年の高校野球界を占ってみようということになった。糸満高校の選抜出場にわく沖縄県の、2015年の勢力図に斬り込んでみよう。

春の優勝校を凌駕する選抜出場校


ダイヤモンド1周する沖縄尚学ナイン 2014年は春の勢いそのままに夏の沖縄も制した

 全国選抜高校野球大会(以下選抜大会)出場校も、同大会が終了すると、各都道府県の春季大会に出場するものである。九州地区では選抜大会と並行して県大会が行われるところが多く、選抜大会出場校は推薦校として春の九州地区高校野球大会(以下九州大会)に出場することになる。しかし、九州全県の選抜大会出場校が最後の夏も制するという、いわゆる春夏の連続甲子園出場という名誉を獲得することは実は厳しいということを次のデータから見てとることが出来る。

■(沖縄を除く)九州各県の選抜出場年度と、その夏の選手権大会出場校(過去5年間)
(年度)→(選抜出場校)→(選手権大会出場校)
2010年→×自由ケ丘西日本短大附
2010年→×宮崎工延岡学園
2010年選抜大会 2010年選手権大会

2011年→○九国大付→九国大付
2011年→×波佐見→長崎海星
2011年→×九州学院専大玉名
2011年→×鹿児島実神村学園
2011年選抜大会 2011年選手権大会

2012年→×九州学院済々黌
2012年→×別府青山杵築
2012年→×宮崎西宮崎工
2012年→○神村学園神村学園
2012年選抜大会 2012年選手権大会

2013年→×創成館佐世保実
2013年→×済々黌熊本工
2013年→×尚志館樟南
2013年選抜大会 2013年選手権大会

2014年→×創成館→長崎海星
2014年→×鎮西→熊本城北
2014年選抜大会 2014年選手権大会

 選抜へ出場を果たした高校というのは、1年前の秋の県大会を制した、もしくはそれに準ずる成績を収めて且つ、九州大会でベスト4または、8へ進出した高校だ。しかし冬を経て夏を迎える頃には、ライバルたちが追い付きまたは追い越してしまう。正に群雄割拠、それが現在の高校野球界とも言えるだろう。だが、こと沖縄県においては、真逆の現象となる。

■沖縄県の選抜出場年度と、その夏の選手権大会出場校(過去10年間)
(年度)→(選抜出場校)→(選手権大会出場校)
2005年→○沖縄尚学沖縄尚学
2005年選抜大会 2005年選手権大会

2006年→○八重山商工八重山商工
2006年選抜大会 2006年選手権大会

2008年→×沖縄尚学浦添商
2008年選抜大会 2008年選手権大会

2009年→○興南興南
2009年選抜大会 2009年選手権大会

2010年→○興南興南
2010年選抜大会 2010年選手権大会

2013年→○沖縄尚学沖縄尚学
2013年選抜大会 2013年選手権大会

2014年→○沖縄尚学沖縄尚学
2014年選抜大会 2014年選手権大会
※10年の嘉手納、14年の美里工も選抜出場であるが、夏は1校のみなので省いている

 沖縄県における過去5年間の、選抜出場校が夏を制する確率は100%。10年間に広げても、その壁を突き破ったのは08年の浦添商のみ。そう、沖縄県では“選抜出場校”が、その年の夏をも制することが圧倒的に多いのだ。

2015年度 春季高校野球大会 特設ページ
【ひとまとめ】2015年の全国各地の高校野球を占う!

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[page_break:春の頂点を狙う秋の4強]

春の頂点を狙う秋の4強

池間 誉人(糸満)

 このデータからすると、やはり糸満が頭一つリードしたと言わざるを得ないだろう。では、その糸満不在の春を制する可能性の高いチームを探ってみようと思う。

 筆頭は秋季県大会決勝糸満を下し、九州大会でも1勝してベスト8入りした中部商だろう。183センチの長身エース前田 敬太は、初戦の北山戦で16奪三振をマークし波に乗ると、3回戦から準決勝まで3試合連続完投勝利。糸満戦(試合レポート)では5回からマウンドへ上がると打者13人に対し僅か2安打に抑えて優勝に貢献した。チーム打率は.311と物足りないが、戦いが厳しくなる準々決勝以降の3試合では.343。同じく準々決勝以降で、12打数で6安打と爆発した3番平田 一球が、春も打線のキーマンとなるだろう。

 2年連続ベスト4の美里工も、4強中No.1の平均得点を挙げる力強さを見せつけた。砂川 隆之佑を3番に据えたクリーンアップの3人で打率.388、10打点を記録するなどチーム打率は.353を数えた。またコザ戦で見せた、土俵際の9回ツーアウトから3連打を集めて逆転した勝負強さも見逃せない。一人で5試合39イニングを投げきった久田 真輝は、知念戦と中部商戦(試合レポート)では二桁安打を喫し、一抹の不安を残したが、防御率1.85と存在感をアピールした。

 20年振りのベスト4進出となった首里。その原動力は何と言っても中真 慶大の左腕だ。二回戦の読谷戦では、延長15回を一人で投げきる力投でサヨナラ勝ちに結びつけると、準々決勝の具志川戦では7回参考ながら打者21人に対し、一人の走者も許さないパーフェクトピッチングを披露。防御率1.26は中部商の前田を凌ぐNo.1。奪三振率は4.40と低めだが、被打率.137と打たせて取る頭脳的な投球が光った。全5試合で二桁安打をマークした打撃陣も秀逸で、打率5割以上の我那覇 有紀佐久田 英尚の3、4番を中心にチーム打率は4強中最高の.387にまで上る。

今回のコラムに登場した学校の野球部訪問は以下から!
県立糸満高校(2012年4月29日公開)
県立中部商業高校(2012年4月27日公開)
県立美里工業高校(2012年4月30日公開)
県立美里工業高校(2014年3月12日公開)

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【ひとまとめ】2015年の全国各地の高校野球を占う!

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[page_break:沖縄尚学、嘉手納ら力ある高校が続く]

沖縄尚学、嘉手納ら力ある高校が続く

神里 廣之介(沖縄尚学)

 この4校に続くのが新人中央大会優勝の沖縄尚学(試合レポート)。秋はつまずいてしまったが、一年生中央大会でも準優勝(試合レポート【決勝】【準決勝】)と名門らしく立て直してきた。夏の甲子園でも躍動した主将の中村 将己は、去った沖縄県高校野球部対抗競技会での塁間走の記録が14秒21。同じく前チームから経験を積む、与那覇 廉神里 廣之介らの能力の高さは他校の脅威だ。その二つの大会で沖縄尚学とファイナルを争った嘉手納は、投げては防御率4点台、打っては打率4割の仲地 玖礼が頼もしい。

 同じく新人中央大会3位の前原、4位の那覇試合レポート)や秋季県大会ベスト8の名護具志川八重山商工宜野座といったところも、1点を争うゲームに強いところを見せる。

 この12校に、敗れたとはいえ新人中央大会秋季県大会ともに延長戦までもつれ込んだ興南に、中部商に県内唯一の黒星をつけた浦添商といった甲子園常連組は、投打ともに選手層の厚さでは一歩抜けているし、粘り強い戦いを見せる読谷も侮れないだろう。

 2011年の春優勝の糸満も優勝したのを筆頭に、春の大会で上位進出することは、最後の夏の成績にも直結しやすい。

2010年夏準優勝(糸満)→同年春優勝
2010年夏4強(八重山)→同年春3位
2010春 2010年夏

2012年夏優勝(浦添商)→同年春8強
2012春 2012年夏

2013年夏4強(真和志)→同年春準優勝
2013春 2013年夏

2014年夏準優勝(糸満)→同年春優勝
2014年夏4強(宜野座)→同年春準優勝
2014春 2014年夏

 準決勝まで勝ち上がった4校に、力の差は殆ど無いだろう。あとは気力と精神力が左右する世界へ足を踏み入れるため、甲子園という夢を手に掴むためにも、まずは春を制覇する力を見せつけるチームがどこになるのか。今から楽しみである。

(文=當山 雅通

今回のコラムに登場した学校の野球部訪問は以下から!
沖縄尚学高等学校(2012年8月29日公開)
沖縄尚学高等学校(2014年3月13日公開)
県立浦添商業高等学校(2010年6月19日公開)

2015年度 春季高校野球大会 特設ページ
【ひとまとめ】2015年の全国各地の高校野球を占う!

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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