大会の見どころ
第18回 大会の見どころ 2010年08月07日
大会展望~連覇を目指す興南を追う4強
砂川大樹(興南)
春夏連覇、沖縄県勢初の夏の頂点なるかに最大の関心が注がれているように、第92回全国高校野球選手権大会は興南を中心に展開していきそうだ。ハイレベルの沖縄県大会で31イニング44奪三振、16被安打、2失点のトルネード左腕・島袋洋奨に加え、2番手の砂川大樹も力を伸ばしている。打線もセンバツで大会タイ記録となる13安打をマークした、ボールをしっかりと引きつけてセンターからライト方向にヒットを打てる右の我如古盛次、トップがブレずにしっかりと体を割って強烈な打球を放つ左の眞榮平大輝を中心にぶ厚い。機動力も兼ね備え、県大会6試合での失策も3個と少なく、隙は見当たらない。初戦で対戦する鳴門を始め、対戦校がどんな戦略を持ってぶつかってくるか。そうした視点で見てみるのも面白いのではないか。
興南を追う2番手グループには東海大相模、中京大中京、履正社、天理、広陵を推したい。しかし、このうち履正社、天理、広陵が同ブロックに入り、ベスト8までに少なくとも2校が聖地から去らなければならない。
履正社は打線の繋がりが良く、8試合で44犠打を記録したように、手堅くランナーを進めて得点を重ねる。上手く成長すれば二岡智宏(日本ハム)や坂本勇人(巨人)のような選手になると期待される山田哲人は要注目。天理は長打力のある5番・内野聡など打線は今年も強力で、チーム打率は出場校中2位の4割4厘。奈良県大会決勝では智弁学園を14対1で圧倒した。
広陵のエース・有原航平はスライダー、チェンジアップもキレがあるが、センバツでは変化球に頼りすぎた感があった。将来性のあるピッチャーなだけに、持ち前の伸びのあるストレートでグイグイと押すピッチングを見てみたい。主将でトップバッターの福田周平、当たったときの飛距離ならOBの金本知憲(阪神)の高校時代以上と中井哲之監督が評価する2年生4番の丸子達也ら中軸も力のある打者が揃う。
東海大相模は5月にサイドスローへと転向した一二三慎太の出来が大きな鍵。ストレートは140㎞/hを超え、スライダー、シュートの曲がりも大きい。まだ時間が経っていないため制球などに不安も残るが、逆に1試合ごとに良くなっていく可能性も秘める。持っているポテンシャルはナンバー1なだけに、その成長ぶりが楽しみだ。その一二三を援護する攻撃陣も派手さはないが、相手の隙を見逃さない走塁など、そつがない。
連覇と勇退する大藤敏行監督の有終を飾りたい中京大中京。打線は昨年ほどの長打力はないものの、昨夏も5番を担った主将の磯村嘉孝が引っ張るチーム打率は天理を上回る4割2分9厘でトップを誇る。キーマンはエース・森本隼平。愛知県大会では怪我の影響で12イニングしか投げることができなかったのだが、その穴を2年生で184センチの長身左腕の浅野文哉が埋めて台頭してきただけに、森本がコンディションを上げてくれば目標に近づく。初戦の南陽工はバランスのいいフォームで昨春のセンバツでPL学園を10回1失点に抑えた右腕・岩本輝を擁する難敵だが、打ち崩せれば打線に勢いがつきそうだ。
見逃せない好選手たち
西川遥輝(智弁和歌山)
140㎞/h台のストレートと落差のあるカーブで三振の山を築く大分工の田中太一、制球に課題が残るも140㎞/h前後の球威ある球を投じる福井商の長谷川陽亮。
バッターでは走攻守でレベルの高い前橋商の後藤駿太、体は大きくないもののパンチ力がある北大津の小谷太郎らにプロのスカウトの熱い視線が注がれる。
「何かを持っている」初陣6校にも注目
接戦を制し初の甲子園(松本工)
しかし、全国レベルを体感したことで目指す場所を今までより上に置くことができるようになったのだ。着実にアップした力を山形県大会だけでなく、再び立つ甲子園の舞台でどんな形で発揮できるか。
水戸商監督時代にセンバツで準優勝した経験を持つ橋本実監督が就任して3年目で初切符を掴んだ水城。茨城県大会ではレギュラー全員が打率3割超えをマーク。3、4番を1年生に任せるなど、大胆にタクトを振るう指揮官とそれに応えることができる選手。初出場でも力を発揮できそうだ。
松本工は柿田はもちろん、県大会6試合中3試合を延長の末に制した接戦での強さに着目したい。
140㎞/h近いストレートとスライダー、フォークなどを駆使する右腕の近藤佳史だけでなく、ボーイズ時代は中京大中京の森本とバッテリーを組んで全国4強の実績があるキャッチャーの中園洋輔がいてこそ、いなべ総合初の快挙は実現したと言えよう。
砺波工はエースである健名祐輝が春先に右ひじを痛めたことにより、春の富山県大会から急遽、主戦投手を背番号6の中山翔也に託すことになった。しかし、結果的にはセンスの良さを生かした中山が春に続いて夏の県大会制覇へと導いた。予想していなかった戦力の上積みによって得た勢いを甲子園に持ち込みたい。
英明は香川県大会では5試合中4試合で2桁得点したように打力がウリのチーム。決勝では21安打を放って観音寺中央を17対0で退けたのだが、この圧巻の打棒はグラウンドが狭いために生まれたものなのだ。野球場1面を取るスペースがないため守備練習でできることに限りがあり、打撃練習に多くの時間を費やしてきた成果だった。逆境に打ち勝った強さを、広々とした甲子園でも出し尽くしたい。
それぞれの思いが詰まった熱い夏が、今年も始まる。
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