今年は好投手続出の関東大会！中村、細川、古谷、渡邉…多くの投手が持ち味を発揮！

左から古谷拓郎（習志野）　渡邉勇太朗（浦和学院）　中村奎太（日大三）　細川拓哉（明秀日立）

　5月19日から開幕した春季関東大会（千葉開催）は健大高崎の優勝で幕が閉じた。改めて振り返ると3年生だけではなく、1年生、2年生と逸材が多かった大会だった。3学年でこれほど活躍を見せた大会も珍しい。まずは3年生で活躍を見せた選手たちを紹介したい。

　今大会、高校野球ドットコムで球速を計測して140キロ以上を計測した3年生投手は以下の通り。
145キロ　中村奎太（日大三）
143キロ　細川拓哉（明秀日立）
142キロ　渡邉勇太朗（浦和学院）
142キロ　古谷拓郎（習志野）
142キロ　草薙 柊太（国士舘）
142キロ　林直樹（千葉黎明）
140キロ　板川 佳矢（横浜）
140キロ　井田 尚吾（国士舘）
140キロ　河村 唯人（日大三）

　中村は完成度の高さを誇る右の本格派右腕。昨秋と比べると140キロを出すことが多くなった。130キロ後半でも回転数が高く、次々と空振りを奪った。習志野戦ではしぶとい打線を相手に7回2失点完投（コールド勝ち）、3回までパーフェクト、7奪三振の快投を見せた。そして変化球の精度も一級品だ。125キロ前後のスライダー、130キロ前後のカットボール、125キロ前後のスプリットボールはストライクが取れて、空振りも取れる。制球力の高さ、冷静なマウンド捌きとさすが名門校のエースと呼ばれる投球であった。

　そして細川拓哉は横浜打線相手に9回一死まで無失点の好投を見せた。細川は1イニングに10球140キロを計測するスピード能力の高さを披露。多くの投手がコンパクトなテークバックで投げていたが、細川はテークバックが大きくダイナミックなフォームで投げる投手であった。常時140キロ台のストレートは威力抜群。また125キロ前後のスライダー、フォークの曲がりは鋭く、左打者相手にもひざ元をつくことができていた。

　二季連続出場を目指す今夏の茨城大会。ライバル・常総学院とは決勝戦まで当たらない。細川は関東大会の経験を糧にどんな投手へ成長するだろうか。

　渡邉勇太朗は右ひじを痛め、春の県大会ではベンチ外だったが、関東大会の千葉黎明戦で復帰登板。4.1回を投げ、2失点、5奪三振の好投を見せ、最速は142キロを計測。1イニングに、2、3球は140キロを計測するまでに戻っていたが、まだ復活途上の様子。189センチという大型ながら、フォーム技術が高い投手なので、さらに球速・球威が増してくれば、おのずと評価が上がる投手となるだろう。

　渡邉と同じくプロのスカウトから注目を浴びていたのが古谷拓郎だ。古谷は県大会の時と比べるとピッチングの内容が格段に良くなっていた。作新学院戦では2.2回を投げて、無失点の好リリーフ。続く日大三戦では6回途中からリリーフ。1点を失ったが、ほとんどが140キロ前後を計測。左打者の内角を攻める142キロのストレートは迫力十分で、県大会の時にはない勢いがあった。古谷は120キロ台のスライダーに加え、ストレートとほぼ同じ腕の振りで110キロ台のカーブを投げることができる。タイプ的には岸孝之（東北楽天）を彷彿とさせる投手だ。日大三戦で見せたストレートを中継ぎだけではなく、先発でも投げられるようになると評価はもっと上がりそうだ。

草薙柊太（国士舘）

　左腕投手でプロのスカウトから最も評価を受けていたのは、草薙 柊太だった。180センチ80キロと恵まれた体格を最大限に生かすオーバーハンド。木更津総合戦では、常時142キロを連発。角度あるストレートは威力十分で、今年の高校生左腕ではトップクラス。110キロ前後のカーブもブレーキが利いていて実に良い。だが経験不足なのか、自分の潜在能力の高さを生かし切れていないのが課題だ。高卒プロを目指すラインとしては、リリーフでは145キロ前後、先発では140キロ中盤を計測して、試合を作れるほどの制球力、投球術があると評価は大きく上がるだろう。木更津総合戦の敗戦を力に変えてほしい。

　浦和学院戦で最速142キロのストレートを計測した林直樹は、166センチの小柄ながら、それを補うほどの球威がある。夏までさらに球威をアップさせることができるか。

　日大三の河村唯人もぶん回す腕の振りから繰り出す直球は常時130キロ後半ながら、球速表示以上のものがあり、計3試合登板で好リリーフ。迫力十分のリリーフは、数々のピンチを救い、チームの勝利に貢献した。国士舘の井田は、エラーと不運な形で失点を重ねてしまったが、140キロを計測したストレートは威力があり、スライダー、カーブ、チェンジアップの切れ味も悪くなかった。

　ここからは140キロは計測しなかったが、ピッチングが上手かった好投手たちを紹介していきたい。谷田部健太（常総学院）は登板3試合で力投。常時135キロ前後の速球ながら、スライダー、縦に大きく落ちるチェンジアップ、カーブと緩急自在なピッチングをする姿は2013年夏のエース・飯田 晴海（新日鉄住金鹿島）をモデルにしている印象を受ける。ここからはストレートの質を大事にして、夏へ向かってほしい。

　優勝の健大高崎のリリーバー・清水達哉は、角度の高さと気持ちの強さで勝負する大型右腕。130キロ後半のストレートは威力があり、球場のスピードガンによっては140キロを超えているのではと思うストレートがいくつかあり、打たれても気を落とすことなく投げることができていた。

　例年よりも好投手が多く、見応えがある大会であった。