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明治神宮野球大会総括・連日1万人越えの神宮大会!10チームの収穫と課題

2017.11.14

 今年の明治神宮大会明徳義塾の優勝で幕が閉じた。大会2日目~4日目まで高校の部は連日観衆が1万人超えという大盛況な中で行われ、改めて神宮大会の大会としての価値が上がったと実感できる大会となった。今回はチームにピックアップにして紹介をしていきたい。

大エースで優勝を飾った明徳義塾 走攻守で完成度の高い野球を発揮した創成館

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優勝を飾った明徳義塾

 優勝した明徳義塾。なんといってもエース・市川悠太が働きが大きい。全3試合を完投勝利。しかも明徳義塾の公式戦全10試合をすべて完投するという驚異的なスタミナを発揮した。そして打線も、守備型のチームに見えるが、全3試合でチーム打率.352、3割越えがスタメン9人中、7人と、コンタクト能力の高さが光った打線であった。

 不振に苦しんでいた谷合悠斗準決勝静岡戦の同点2ランを機に決勝戦では、4打数3安打と打率5割で大会を終えた。近年、打撃型チームが多いのが近年の高校野球だが、今年の明徳義塾はセンターラインの守備が堅く、さらに巧打力が高い打者がそろい、絶対的なエースがいるという総合力が高いチームとして、来季の選抜出場が決まれば、優勝候補として注目を浴びそうだ。

 準優勝の創成館は投手力が非常に高く、層の厚さは出場校中トップクラス。最速141キロ左腕・川原陸、鋭い腕の振りから130キロ後半の速球を投げ込む本格派左腕・七俵陸、右オーバーとサイドを投げ分ける140キロ右腕・伊藤大和と、一学年20人の投手の競争を勝ち抜いた投手陣のレベルは全国レベルとして推していいレベルにある。また打線も好打堅守の峯圭汰、4番サード・杉原健介と本塁打はなくても低い打球が打てる打者が多かった。守備力も内外野ともに高く、完成されたチームだった。指導者、選手たちも「全国でやれる」という手ごたえをつかんでおり、決勝戦でミスが出たことも糧にしながら、春ではどんな姿を見せてくれるか、楽しみなチームだ。

[page_break:ベスト4の大阪桐蔭の課題]

ベスト4の大阪桐蔭の課題

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柿木蓮(大阪桐蔭)

 ベスト4の大阪桐蔭は実力不足というより力を発揮できなかった。まず投手陣では147キロ右腕・柿木蓮、192センチの大型左腕・横川凱の平均球速が130キロ中盤と、かつて140キロ出していた時と比べると5キロ以上も遅い。プロ野球では平均球速が3キロ~5キロ落ちると、成績ががたっと落ちるといわれるだけに、やはりこの2人もその影響は顕著に表れており、近畿大会までは経験値の高さでごまかすことができたが、神宮大会では通用しなかった。

 2人は実力不足というより、コンディションなどすべての面でリニューアルして臨まなければ、今のままでは将来のステージも厳しくなる。勝つことも大事だが、自分のストレートを思い通りに投げる体、技術を追求し、ラストシーズンでは何かをつかんで臨んでほしい。

1番藤原恭大、3番中川卓也、4番根尾昂、5番大阪桐蔭山田健太といった昨年からの経験者に目立った当たりがなかった。実力は申し分なく、集中力を発揮するときは、とてつもない力を発揮する。ただ決してエアバックするというわけではないのだが、なぜ大事な試合で結果が出ないのか、淡白な試合運びになるのか?それは精神面なのか?技術面なのか?その答えを見つけることが彼らのオフでのテーマになる。

それぞれのチームの課題

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春翔一朗投手(静岡)

 同じくベスト4の静岡は強烈な打球を飛ばす強打者・成瀬和人、バットコントロールの良さ、守備範囲の広い遊撃守備が光る村松開人の2人は能力が高い選手たちであるが、それ以外は平均値が高い選手が多く、状況に応じた攻撃・走塁ができる鍛えられたチームだった。また鈴木翔矢春 翔一朗と左右の技巧派をそろえ、完成度が高いチームだった。さらに攻撃面でバリエーションを取れた打撃ができるか。勝負所での守備、投球術を突き詰めていけば勝てるチームとなるはずだ。

 それ以外のチームでは、強打が自慢の日本航空石川はところどころで強打を発揮する一方で、様々な投手に対応する適応力、投手陣全体の底上げができるか。聖光学院は打力が発揮できない試合の時にカバーする投手陣の出来がカギとなる。

 また中央学院はエース・大谷拓海は逆方向へ2ランを打つなど凄みを発揮したが、まだメンタルコントロールに課題を残す。打線は予想外の攻め方をされたときの対応力をこの冬に磨いていきたい。

 日大三はここぞというときに見せる集中打はさすが。1年生右腕・井上広輝などが光るパフォーマンスを見せたが、まだ体が出来上がっていない井上を無理させることはできない。それを踏まえると投手陣全体の底上げが課題となるだろう。

 駒大苫小牧は、カバーリング、バックアップなど次を備えた守備は見事であり、打者たちを見てもコンタクト能力が高い打者がそろった。エース・大西海翔は全国で通用するにはまだレベルアップしなければならない点は多いが、大阪桐蔭相手に魅せた丁寧なピッチングは大事にしてほしい。

 中国大会優勝のおかやま山陽は、自慢の打撃力で勝ち上がったが、創成館のような全国レベルの投手陣と対戦して、また大きな課題が出た。投手力もこれからで、神宮大会の経験を生かすことができるか。

 それぞれの学校は収穫もあり、課題も出た。その課題を冬の練習に生かし、ぜひ選抜では大きく成長した姿を見せることを期待したい。

(文・河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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