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3年生座談会 県立梼原高等学校(高知)「梼原町」だからできた高知大会準優勝【後編】

2017.11.04

 明徳義塾の8年連続優勝で幕を閉じた2017夏の高知大会。ただ、近年では県立校の進出が目立つ。昨年は初の決勝進出で健闘。その後、秋季県大会決勝戦で明徳義塾を下して翌年センバツ21世紀枠出場につなげた高知中村。

 そして今年は県北部の標高400メートル超・四国カルストがある人口3,627人(7月末現在)梼原町唯一の高校・高知県立梼原高等学校が決勝戦へと進出。決勝戦では4回裏までの5失点が響き3対7で敗れたが、地元梼原町出身・横川 恒雄監督に導かれた中盤の反撃は三塁側スタンドを大いに沸かせた。

 では、創部11年目の梼原野球部はなぜ、大躍進を遂げることができたのか?今回は3年生たちの対談から「梼原町」だからできた成長過程を探ってみたい。後編では最後の夏の裏側、そして高校野球を通じ学んだこと、次への抱負を語っていただきます。

<メンバー>
和田 吉展(わだ・よしのぶ)前主将・一塁手・181センチ75キロ・右投左打・佐川町立佐川中出身
浅井 大地(あさい・だいち)投手・178センチ78キロ・右投右打・土佐清水市立清水中出身
市川 雷夏(いちかわ・らいか)外野手・右投左打・170センチ66キロ・須崎市立朝ケ丘中出身
長岡 星河(ながおか・せいが)捕手・174センチ75キロ・右投右打・宿毛市立東中出身
中山 洸希(なかやま・こうき)外野手・170センチ64キロ・右投右打・四万十町立窪川中出身
*特別参加:岩崎 智久部長

自分の役割を見つけ、最後の夏。残った「悔しさ」

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市川 雷夏(梼原)

――春が終わると、選手個々にも新たな葛藤が生まれてきたと思います。それは「レギュラー」と「控え」の区別。中山、市川両選手は最後の夏は代打を中心に活躍することになるわけですが、そこの葛藤をどのように克服したのですが?

中山:僕は4月に右足首を骨折したので、その時点でレギュラーは難しいことはわかっていました。そこで同じ左翼手を守る北川(泰成・3年)のサポートをしながら、羽根打ちなどで打を中心に活躍しようとしました。

市川:僕は練習試合で奥野(昌樹・右翼手・3年)と半々くらいで練習試合に出ていたのですが。なぜかスタメンよりも代打の方が打てていたんです。「代打の方がいい」と感じた後は試合の流れを読みながら、代打に備えるようにしました。最後の高知大会でも浅井のマッサージをしながら、試合の流れを読んで準備していました。

――5月の県体育大会では高知中央へのリベンジも果たして連続ベスト4。そしていよいよ高知大会を迎えるわけですが……。

和田:僕は右ひざをけがして、必死で大会前に直しました。

長岡:僕もベースを踏み外して、2週間野球ができませんでした。

浅井:僕も脇腹を骨折、大会直前に復帰です。6月。チームは土砂降りの雨でした(苦笑)

――……(笑)。でもこれが逆に功を奏します。初戦は室戸・高知丸の内連合チームに延長11回の大苦戦を強いられながら、高知農に快勝、高知に延長10回勝利、準決勝で高知中村に4対1で勝利して初の決勝戦へ駒を進めます。

岩崎部長:初戦に負けたことで逆にチームはまとまりだしました。

和田:ただ、明徳義塾に負けてみると「自分が打ったら、守れていたら」と思って悔しいです。

長岡:自分も中村戦では満塁(4回表二死満塁からの2点打)で打てたのに、決勝戦では7回表一死満塁から打てなかった(三振)。応援がすごかったのに申し訳ないという気持ちが強いです。

市川:自分としてはよかったですが、決勝戦では明徳義塾のかけている思いを感じました。

中山:(決勝戦2打数2安打)も守備で全く動けず捕球できるボールも捕れなかった。あれがなければ勝てていました。

浅井:中坪(将麻)くんに浴びた3ランがなければ……僕も悔やまれます。

[page_break:次の世代に残したいこと]

次の世代に残したいこと

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浅井 大地(梼原)

――最後に、高校野球を振り返りつつ、次の世代に残したいメッセージをお願いします。

浅井:2年連続公立校が高知大会決勝戦に進出したことでわかるように、名前負けせずに1つになったらやれる。僕も大学では球速を上げてプロ野球選手を目指します。

中山:僕は陸上自衛隊に進みますが、後輩たちには僕らのことをプレッシャーに感じず、今のチームらしくがんばってほしいです。

市川:僕は専門学校で軟式野球を続けます。後輩たちにはチームとして意識を高め、個人としては目配り、気配りをしてほしいです。

長岡:僕は地元で就職します。高校ではチームとしてまとまって一丸となって戦うことの大切さや、それ以前に1人の人間としての礼儀など学んだことを人生に活かしていきたいです。

――では、最後にキャプテンに締めて頂きましょう。

和田:決勝戦では明徳義塾の勝利に対する執念がすごかった。逆にこういうことを毎日意識しないと甲子園には行けないと感じました。ですから、みんなにも目的意識をもってやってほしい。僕は大学でも野球を続けます。

時にはみんなが笑い、時には引き締まった表情を見せた3年生5人。ただ、最後は「悔しい」が並んだ。それも2年半育ててもらった梼原町の想いに報いたかったがため。高校野球では最後の1勝をあげられなかった彼らは、これからは「梼原高校出身」の誇りを胸に、長い人生を歩んでいく。

(構成/寺下 友徳

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【僕らの熱い夏2017 特設ページ】

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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