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甲子園大会第1回出場校の100年の夏の歴史を振り返る ~秋田中編~

2015.07.27

 数々のドラマを生み、数々の感動を与えてきた夏の甲子園。今年も間もなく、そんな熱い夏が始まろうとしているが、今年の甲子園が記念すべき甲子園であることを忘れてはならない。

 今からちょうど100年前の1915年。その年に、現在の全国高等学校野球選手権大会の前身である、全国中等学校優勝野球大会の第1回大会が開催された。今年で97回目となる甲子園であり、現在では47都道府県より49の代表校が甲子園優勝の栄光目指して熱い闘いを繰り広げるが、第1回大会では、わずか10校の代表校による闘いであった。

 今回から特集コラムとして、第1回大会出場の10校に焦点を当てた100年の歴史をお伝えしていきたい。10校全てで野球部は現存しており、その歴史は脈々と受け継がれている。記念すべき甲子園100年目に、原点回帰を果たしてみよう。

第1回全国中学校優勝野球大会出場校 / 秋田の古豪・秋田中

現在の秋田高校のユニフォーム

第1回全国中学校優勝野球大会出場校】
・秋田中(現:秋田県立秋田高等学校)
・和歌山中(現:和歌山県立桐蔭高等学校)
早稲田実業
・鳥取中(現:鳥取県立鳥取西高等学校)
・三重四中(山田中)(現:三重県立宇治山田高等学校)
・広島中(現:広島県立広島国泰寺高等学校)
・京都二中(現:京都府立京都鳥羽高等学校※)
・高松中(現:香川県立高松高等学校)
・神戸二中(現:兵庫県立兵庫高等学校)
久留米商
◎優勝:京都二中(現:京都鳥羽)
○準優勝:秋田中(現:秋田

【秋田の古豪秋田中(現:県立秋田高等学校)】

第1回大会
準優勝校であり、その後も継続的に甲子園出場を果たす秋田の古豪秋田中(現:秋田)。夏の甲子園出場回数は県内最多の19回を誇る名門中の名門である。春の選抜に関しては5回、しかし、春通算勝利数が1回、夏通算勝利数が9回と結果は伸び悩んでいる。そんな秋田中が準優勝を果たした、第1回大会を振り返ってみる。当時のスコアを見てみると、初戦、秋田中は三重四中(山田中)を8安打9得点の9対1で破っている。

 三重四中(山田中)が失策を8としていることから、相手のミスを逃さずチャンスとした展開であった。続く準決勝は、早稲田実業との対戦。当時、早稲田実業は優勝候補であり、第1回大会出場者渡部 純司氏によれば、「正直言って、もうこれまでだと思った」とのこと。また、秋田中学はレギュラーであった右翼手が怪我で欠場し、代わりに最年少15歳の選手が守りに着くというアクシデントもあった。しかし、結果は3対1で秋田中の勝利。


注目記事
・夏よりも熱い!全国の野球部に迫った人気企画 「僕らの熱い夏2015」
・第97回全国高等学校野球選手権大会特設ページ

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 そして迎えた決勝、京都二中との一戦。京都二中の投手藤田は技巧派、秋田中の投手長崎は本格派と違うタイプの好投手の投げ合いとなった。先に得点を入れたのは秋田中。7回表に京都二中の犠打処理の失敗から1点を挙げる。一方、京都二中は、8回裏、秋田中投手長崎の暴投で1点を挙げた。そして、試合は延長戦へともつれこむ。迎えた13回裏、京都二中の攻撃。一死三塁で、セカンドフライの落球処理の間に、三塁走者が生還。これが決勝点となりサヨナラで京都二中が勝利を収めた。

 当時の野球は、フライの捕球が満足にできないなど、発展途上段階であり、多くの失策が見られた。また、低打高投となっており、秋田中を例にあげても、初戦は12奪三振、決勝では10奪三振となっているのに対し、全3試合で長打は僅か2本。大会全体と通しても、無失策で終わった試合はなく、敵失絡みでの得点が多かったことがわかる。

現在までの秋田中の活躍

【秋田中の活躍“1934年”】
次に秋田中が全国大会を沸かせたのは、1934年の第20回大会であった。この年、秋田中は、甲子園ベスト4を果たす。二回戦、準々決勝では、それぞれ福島師範敦賀商を下し、迎えた準決勝の相手は山陰の強豪呉港中。呉港中は、のちに伝説の強打者として知られる藤村 富美男を有し、実力としては他チームを圧倒していた。結果は9対0の完封負け。秋田中は第1回以来の準決勝進出であったが、悲願の初優勝とはならなかった。呉港中は、決勝で巨人V9時代を率いた川上 哲治有する熊本工業を破り、創部6年目にして見事優勝に輝いた。ちなみに、この年は、京都商メンバーとして、のちに大投手となる沢村 栄治が出場していた。

【準決勝まで勝ち進んだ1965年】
さらに、1965年第47回大会でも秋田中は好成績を残す。前回ベスト4となった1934年から30年以上時がたっており、久しぶりの快進撃となった。初戦、強豪大阪地区代表の大鉄(現:阪南大高)との戦いでは、東北勢ながら、4対3と接戦を制し、大金星を挙げる。続く二回戦東京代表日大二との対戦も、5対3と勝利を収めることに成功。現在においては東北勢の躍進が目覚ましいが、当時では東北勢が勝ち進むことは珍しいことであった。勢いに乗る秋田中は、準々決勝にて九州地区代表の津久見相手に13対1 と快勝。さらに勢いに乗るかと思われたが、この年、初出場初優勝を果たす三池工に敗れ準決勝敗退。東北勢唯一のベスト4となり球史にその名を刻んだ。

【秋田中、近年の活躍】
また、直近で甲子園出場を果たしたのは、2003年の第85回選抜大会秋田は初戦敗退と悔しい結果に終わってしまう。この年は常総学院が初優勝を果たした年であり、現在メジャーリーグ、テキサス・レンジャーズで活躍するダルビッシュ 有投手が2年生ながらチームの軸となり、東北高校を決勝まで導いた年でもあった。
今夏は、秋田大会3回戦で明桜に6対9で敗戦となった秋田だが、今後の古豪復活に期待が高まる。

秋田中(現・秋田高)が輩出した有名選手としては、下記の通り。
後藤 光尊(東北楽天ゴールデンイーグルス)
石井 浩郎(元西武ライオンズ二軍監督)

 次回は、和歌山中(現・桐蔭)の歴史を振り返る。


注目記事
・夏よりも熱い!全国の野球部に迫った人気企画 「僕らの熱い夏2015」
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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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