第50回 恩師が語るヒーローの高校時代 上林 誠知「夢を叶えたらからこそ誰よりも逞しく」VOL.32017年12月04日

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恩師が語るヒーローの高校時代 上林 誠知

【目次】
[1]不調でもここぞという場面で執念を見せた
[2]甲子園、U-18での屈辱を乗り越えて
[3]ほんのちょっとことで左右されないたくましさが欲しい

 入団4年目の今季、福岡ソフトバンクホークスの熾烈な外野手争いを勝ち抜き、定位置をつかんだ上林 誠知。オールスターにはファン投票で選ばれ、規定打席にも到達。侍ジャパンの一員として、「ENEOS アジア プロ野球チャンピオンシップ」では全3試合に5番でスタメン出場した。宮城・仙台育英高時代から世代を代表する好打者として注目されながらも、苦労も多かった。その苦悩を間近で見てきた恩師・佐々木順一朗監督に上林について語っていただいた。

 【VOL.1】では仙台育英入学当時、【VOL.2】では高校3年の夏を振り返っていただいたが、最終回である今回は卒業後の活躍について語っていただいた。

■恩師が語るヒーローの高校時代 上林 誠知
【VOL.1】「上林には4番打者が一番合っていた」
【VOL.2】「神様に見えた瞬間がある」

不調でもここぞという場面で執念を見せた

佐々木 順一朗監督(仙台育英)

 春から夏にかけて、飛距離がグンと伸びた。この頃、佐々木監督は「上林の飛距離がとんでもないことになっている」と話している。いくら金属バットとはいえ、フリー打撃では中堅125メートルの先にある高さ10メートル以上のバックスクリーンを越す打球もあった。「歴代で上林だけ」と佐々木監督。ホームから160メートル以上離れた右翼後方で仙台育英学園秀光中等教育学校の野球部が練習していると上林の打球が飛び込んでくることもあった。

 ところが、春の宮城県大会でも本塁打も放つなど、復調の兆しを見せたが、秋や春先のようにはいかなかった。死球も増えた。宮城大会の組み合わせ抽選会には、直前に死球を受けていたため、右腕に包帯を巻いてやってきて、周囲を驚かせた。

 万全ではない中、宮城大会を迎えた。「でも、上林のすごいところは」と佐々木監督。

「またおかしくなって、調子が悪い中、夏の大会に突入するんだけど、決勝の初回に5点を取られて、これでもう高校野球が終わるのかという時の集中力はすごかった。1対4の5回に2死満塁で上林に回ってきて、ここで上林が打たなかったら、今日、負けだなと思ったんですよ。でも、打球は一塁線を抜くんだよね。あの瞬間に、この試合、なんとかなるぞと思えました。上林は夏にげっそり痩せましたが、その痩せた体で、決勝の0対5からの最後の踏ん張りと本人が思ったのかもしれない。ここで打てなかったら終わりなんだと思って、8回の打席にも立ったと思います。1点差に迫るホームランを打つけど、あのホームランは執念というか。上林の凄さを見たホームラン。ファウル、ファウルでフルカウントからのホームランでした」

 準々決勝の大崎中央戦も初回に5点を失い、0対5からひっくり返したが、決勝の柴田戦も同様だった。ただし、決勝は好投手・岩佐 政也(仙台大)が相手。「岩佐くんが絶好調でしたね。3回まで、ウチはパーフェクトに抑えられた」と佐々木監督。それがじわりじわりと追い上げて、最後は小林がファウルで粘って四球を選び、サヨナラ押し出しで優勝を決めた。

 なお、準々決勝も決勝も初回に5点を失ったのは、今年のドラフトで阪神から1位指名された馬場 皐輔(仙台大)である。馬場と、相手エースの岩佐は大学でチームメイトとなり、仙台大の2本柱を形成した。そして、4年後——。この秋の明治神宮大会出場を決める東北地区代表決定戦で仙台大は富士大と対戦した。岩佐が先発し、決勝2ランを打たれて敗れるのだが、打ったのは4年前の夏に押し出し四球を選んだ小林だったのだから、球縁とは深いものだ。

【次のページ】 甲子園、U-18での屈辱を乗り越えて

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プロフィール

高橋昌江
高橋 昌江
  • ■ 生年月日:1987年3月7日
  • ■ 出身地:宮城県栗原市(旧若柳町)
  • ■ 宮城県仙台市在住のフリーライター
    少年野球からプロ野球まで幅広く“野球”を取材し、多方面に寄稿している。
  • ■ 中学校からソフトボールを始め、大学2年までプレーヤー。大学3年からはソフトボール部と新聞部を兼部し、学生記者として取材経験を重ねる。
    ソフトボールではベンチ入りはできなかったものの、1年と4年の2回、全日本大学女子ソフトボール選手権大会で優勝を経験した。
    新聞部では何でも取材したが、特に硬式野球部の取材をメインに行っていた。最後は明治神宮大会準優勝を見届けた。
  • ■ ソフトボール部の活動から得た「人間性、人間力」を軸に「どう生きるか」を考えている。
  • ■ 野球が好きというよりは、野球の監督・コーチ・選手・関係者と話しをして、聴いたこと、感じたことを書いて伝えることが好き。“野球”については、常に勉強中。
  • ■ 【言葉には、力がある】が信念
  • ■ 取材時の持ち物は「気持ち、熱意、真心、笑顔」。
  • ■ 愛読書はデール・カーネギー『人を動かす』など自己啓発系が多い。
  • ■ 『高校野球ドットコム』にて「みとのく便り~心の高校野球~」好評連載中!!
  • ■ ブログ:「今日も青空の下で、笑顔を咲かせる」(高橋昌江オフィシャルブログ)
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