仙台城南 vs 利府
仙台城南が初の決勝進出!5試合連続先発のエース安住が143球1失点完投
<第105回全国高校野球選手権宮城大会:仙台城南2-1利府>◇22日◇準決勝◇楽天モバイルパーク宮城
4強で唯一のノーシード校・仙台城南と唯一の公立校・利府の一戦は、手に汗握る接戦となった。仙台城南は追いつかれた直後の6回、7番・岡村 太貴捕手(3年)の犠飛で1点を勝ち越す。投げてはエース右腕・安住 馨祐投手(3年)が9回143球1失点完投勝利をやってのけ、初の決勝進出をたぐり寄せた。
仙台城南は2回、8番・池田 柾道内野手(2年)の犠飛で先制する。一方の利府は4回に背負った2死一、二塁のピンチを右翼手・佐藤 聖民外野手(3年)のファインプレーでしのぎ、6回には1番・本田 寛明外野手(3年)の適時打で同点に追いつくなど、じわじわと流れを引き寄せていた。
しかし6回、仙台城南は先頭の5番・佐藤 龍翔内野手(3年)が右中間を破る三塁打を放ち絶好の好機をつくる。その後1死三塁となり、打席には主将で正捕手の岡村。「1点を取ることだけを考えて思い切り振った」との言葉通り初球からフルスイングし、決勝点を生み出した。
先発の安住は8回に2死満塁とこの日最大のピンチを背負ったものの、利府の5番・渡邉 慶太内野手(3年)を1球で二ゴロに打ち取り、雄叫びを上げながらベンチに戻った。安住は8回のシーンを「正直安堵の方が大きかった」と振り返るが、ピンチを抑える自信は胸に秘めていた。
転機となったのは夏の大会直前に行った東海大山形との練習試合。この試合では再三のピンチを背負うも本塁を踏ませず、8回無失点と好投した。「コースに投げきれれば抑えられる」。直球の球速は130キロ台でも、変化球と制球力で強豪校とも渡り合えることを確信した。
今大会は初戦から5試合連続で先発し、計39回を投げ防御率1.15と抜群の安定感を誇っている。仙台商や古川学園など実力校相手にも堂々たる投球を続けたことで、自信はさらに深まっていった。
「大会前は、決勝の日までユニホームを着ることになるとは思ってもいなかった。一戦一戦勝ってきて、いつの間にかここまで来た」(安住)。目の前の試合を、がむしゃらに戦ってきた。最大の強敵・仙台育英が相手でも、やるべきことは変わらない。
利府は正捕手を欠き、投手陣も万全のコンディションではない中、準決勝まで勝ち上がった。主将の鈴木 晶礼外野手(3年)は試合後、「自分たちがやってきたことはすべて出し尽くした。相手が一つ上だった、それだけだと思う」と言葉を絞り出した。夢はここで途絶えたが、利府の全員野球は観る者の心に響いたはずだ。
(取材=川浪康太郎)