Interview

激戦区・大阪府予選がターニングポイントに 甲子園決勝では緊張より楽しかった 岩崎峻典(履正社)【後編】

2019.10.23

 今夏の甲子園で悲願の初優勝を成し遂げた履正社において、救世主的存在となったのが、岩崎峻典(2年)だ。清水大成(3年)に次ぐ投手がチームの課題となっていたが、夏の大阪大会で台頭。甲子園では準決勝の明石商戦で1失点完投、決勝の星稜戦でも好リリーフを見せて、胴上げ投手の栄光に輝いた。この夏で岩崎が急成長した理由、そして今後の目標について聞いてみた。

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夏の甲子園初優勝へと導いた岩崎峻典投手(履正社)が急成長した理由とは【前編】

大阪電通大高との試合で完投勝利したことが自信に

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岩崎峻典(履正社)

 夏の大阪大会では背番号を取り返し、甲子園出場に大きく貢献した。岡田龍生監督も驚くほどの活躍を見せたが、その裏にはターニングポイントとなった試合があった。それが4回戦の大阪電通大高戦だ。この試合で先発した岩崎は15奪三振の好投で1失点完投。2対1というロースコアの接戦を勝ち切る原動力となった。

「全体的にストライク先行でいけていくことができました。テンポも良かったので、守りやすかったと思います」とこの試合での投球を振り返る岩崎。調子は普通だったそうだが、この試合で結果を残したことで、確固たる自信を身につけることができた。

「これまでは打たれる心配をしてマウンドに上がっていました。ボールになったらストライクを入れにいかないといけなくて、それを打たれることが多かったのですが、大阪大会終わってから甲子園にかけて成長できたと思います」

 甲子園でも2回戦と準々決勝を除く4試合で登板し、エースの清水をバックアップした。その中でも特に印象に残っているのは1失点完投した準決勝の明石商戦だという。

「清水さんも体力的に疲れていたと思うので、休ませてあげたいという意味と自分が抑えるという強い気持ちがあったので、抑えることができました。あまりランナーを出してないので、それが良かったと思います」

 盗塁やスクイズなど、細かい攻撃を得意とする明石商だったが、四死球0と無駄な走者を出す場面がほとんどなかった。1回表に4点の援護をもらったことも好投の追い風となった。2日前の準々決勝で清水が完投したことを考えると、チームにとっても価値のある完投勝利だった。

[page_break:決勝では投打に活躍も慢心なし]

決勝では投打に活躍も慢心なし

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岩崎峻典(履正社

 また、岩崎は今夏の甲子園で自己最速を142㎞/hから145㎞/hに更新している。「甲子園だから出せる力にも助けられたと思います」と謙遜するが、この2年間で20㎞/h以上伸ばしたのは驚異的な成長ともいえるだろう。その裏には体の成長が大きかったと岩崎は語る。

「入ったころは大きい方じゃなかったので、体が大きくできたのが一番の理由だと思います。高校に入って、13㎏くらい体重が上がりました(現在は78㎏)。冬の期間に毎日ウエイトをしていたので、そこが理由かなと思います。上半身と下半身を日によって交互に鍛えていました」

 よく一冬超えて選手は成長するといわれるが、岩崎もその一人だった。ウエイトトレーニングによって、全体的な筋力アップに成功したことに加え、身長が高校に入ってから5㎝も伸びているという(現在は176㎝)。身長は今も伸び続けているようで、まだまだスケールアップしそうな雰囲気を感じさせる。

 決勝戦では同点に追いつかれた直後の7回裏に登板。二死一、二塁と逆転のピンチで相手打者は4番の内山壮真(2年)という難しい場面だったが、「緊張というより、楽しんでいました」と動揺はなかった。内山を四球で歩かせたが、「4番の子は良く打つ子なので、四球でもいいという感じで攻めて、5番で勝負しようと思っていました」と狙い通り。5番の大高正寛(3年)を二飛に抑えて、窮地を脱した。

 その直後の8回表に野口海音(3年)の適時打で勝ち越すと、岩崎も二死二塁から左前適時打を放って、貴重な追加点を挙げる。先日のドラフト会議でヤクルトから1位指名された奥川恭伸(3年)から打った打席をこう振り返る。

「たまたまです。初球にスライダーが来て、これは打てないと思ったので、ストレート一本に張って、タイミングを合わせて打ちました」

 自分でも驚きの一打だったが、結果的にこれが優勝を手繰り寄せる大きな1点となった。最終回も得点圏に走者を背負ったが、最後は併殺に打ち取り、歓喜のマウンドの中心にいることができた。優勝した瞬間はあまり実感がなかったようで、宿舎についてリラックスしたタイミングで周囲への感謝などがこみ上げてきたそうだ。

「チヤホヤされるのが嫌い」と話す岩崎は優勝してからも慢心することなく、新チームのエースとして活躍。秋の大阪大会では獅子奮迅の働きを見せ、チームを近畿大会出場に導いた。

 しかし、甲子園の疲労を上手く抜けないまま秋の大会に突入したこともあり、「自分のベストのピッチングができていない」とここまでの出来には満足していない。センバツの出場権を懸けた近畿大会ではベストパフォーマンスを見せてほしいところだ。

(取材=馬場 遼)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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