Column

滋賀学園高等学校(滋賀)【前編】

2015.12.02

 今年の近畿大会で快進撃を見せたのが滋賀学園だった。滋賀学園は滋賀3位と滑りこみでの出場だった。近畿大会の戦いぶり、現在の主力選手、そして来年へ向けての意気込みを伺った。

近畿で2つ勝つ

近畿準優勝を祝う垂れ幕(滋賀学園高等学校)

 旧チームから残るレギュラーは捕手の後藤 克基(1年)だけ。新チームはメンバー総入れ替えに近い状態でのスタートだったが練習試合ではほとんど負け無し。8月中旬の関東遠征の頃には白星を積み上げる新チームの目標が明確になっていた。
近畿大会が滋賀県開催だったため出場枠は3校。滋賀県大会の準々決勝から投手陣に夏場の疲れが見え始め、失点を重ねることも多くなり、準決勝で北大津に敗れたが3位決定戦で長浜を下す。

 6試合での最少得点が6点と打線は好調を維持し、まずは目標達成の大前提となる近畿大会出場を決めた。近畿大会では1つ勝てば選抜出場圏内であるベスト8に入れるが、県大会3位の滋賀学園にとってはそれでは不十分。あくまでも目標は近畿で2勝、すなわち同校初の選抜出場を確実にすることだった。最初の関門となったのが大阪府大会優勝した大阪商大堺戦(試合レポート)。

 負けられない戦いで1年生エースの神村 月光が見事なピッチングを見せ、4番の馬越 大地(2年)が会心の一発をレフトスタンドに叩き込む。序盤で試合の主導権を握ると相手に流れを渡すことなくそのまま逃げ切りに成功。後に決勝まで勝ち進むことになるが、山口 達也監督はこの試合をポイントに挙げた。「神村の復調と馬越のツーラン。あれでノリました」

 抜群の試合運びで初戦を突破すると、ベスト4入りを懸けて戦ったのが近畿屈指の好左腕・主島 大虎(2年)を擁する報徳学園試合レポート)。球威のある長身左腕対策としてマシンの球の出所を高くし至近距離からの真っ直ぐ、スライダーを打ち込んで試合に臨んだが、過去最高とも言えるピッチングを披露する主島を攻略出来ず。

 神村も好投し0対0の緊迫した展開のまま試合は延長戦へともつれ込んだが、今夏北大津と延長15回の引き分け再試合を経験していた滋賀学園に焦りは無かった。当時、メンバーのほとんどはスタンド組だったがその雰囲気を肌で感じており、唯一残るレギュラーの後藤が延長14回にタイムリーを放ちついに勝ち越し。「延長になってからの方が集中力が高まっていいリードが出来た」という後藤の好リードもあり神村は最後までホームを踏ませなかった。

 準決勝龍谷大平安戦は相手エースの制球の乱れを逃さず大量点を奪いコールド勝ち。近畿で2つ勝つ、を超える3勝を挙げ決勝では大阪桐蔭と対戦した。

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[page_break:後藤の察知能力と神村の球威で大阪桐蔭と互角に渡り合う]

後藤の察知能力と神村の球威で大阪桐蔭と互角に渡り合う

神村 月光(滋賀学園高等学校)

 インコースを攻めることと低めの変化球を振らせること、これが滋賀学園バッテリーの試合前の予定だった。しかし、普通なら手を出す球に、鍛えられた大阪桐蔭の打者は反応しない。意図通りの配球で攻めたにもかかわらず1回、大阪桐蔭の1番・中山 遥斗(2年)を死球で歩かせてしまう。わずか4球で事前のゲームプランが通用しないことを察知した後藤はベンチを振り返る。

 ここぞの1球を見極められて歩かせてしまい、ランナーがたまった場面で苦し紛れに投じた甘い球を痛打される、これまで何度もビッグイニングを作ってきた大阪桐蔭の得意パターンだ。「どうしたらいいですか」という視線の先で山口監督が送った指示は「ゾーンを上げろ」というものだった。高めの直球は一発を浴びる危険性も増す。ただ、山口監督は最初から1対0や2対1のロースコアの試合は想定していない。ある程度の失点は覚悟していたからこその大胆な指示だった。

後藤 克基(滋賀学園高等学校)

 そしてこれがハマる。もちろん前提には神村の球威あってこそだが、いい当たりの大飛球はファールになり、高めを突くことで低めの変化球にも手を出してくれるようになる。後藤は「スイングスピードは速いし甘い球は逃さない。オーラがあった」と大阪桐蔭打線の凄みを目の当たりにしながらも、変化球でファールを打たせてカウントを稼ぎ、直球がフライアウトになる展開に手応えを感じていた。

 下位打線でも外野手は常に深く守っていたため通常の守備位置ならイージーフライとなる打球に飛び込まなければならない場面が2つあったが、その反面、通常の守備位置なら長打になるような当たりを3つフェンス近くのイージーフライでアウトにした。1対1で迎えた9回に2点を奪われ初優勝はならなかったが、格上の相手にも全く臆することなく互角に渡り合った。

 ここまでは秋の大会の戦いぶりを振り返ってきましたが、後編では、エース神村投手を始め、なぜ滋賀学園は沖縄出身の選手が多いのか。その背景や、今年の主力選手の紹介。また来年へ向けての意気込みを伺いました。

(取材・文=小中 翔太


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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