木更津総合高等学校 檜村 篤史選手【後編】「ライバルから得た課題消化し『誰もが認める』ラストサマーへ」
1963年(昭和38年)の開校・創部以来、千葉県屈指の強豪として鳴らし、1971年にはセンバツ初出場でベスト4の快挙。夏も2003年以降5度の甲子園出場を誇る木更津総合。そこには中日ドラゴンズで炎のストッパーとなった与田 剛(亜細亜大~NTT東京など。2009年WBC投手コーチ、現:解説者)や、横浜DeNAベイスターズの躍進を支える井納 翔一(上武大~NTT東日本・侍ジャパントップチーム)(2015年インタビュー【前編】【後編】)といった豪腕たちと共に、必ず強打者の姿があった。
古くは亜細亜大3年春で投手から打者に転向すると、日本ハムファイターズ・阪神タイガースで1406安打・180本塁打をマークし、現在阪神2軍監督を務める古屋 秀夫氏。
甲子園出場の際も2003年には矢上(島根)監督としても大きな足跡を残した大島 吉雄(早稲田大卒・現・木更津総合コーチ)。2008年には早稲田大でもプロから注目され、現在は東京ガスで活躍する地引 雄貴。2012年には三國 和磨、高野 勇太(関東学院大3年)、高橋 慎之介(現:巨人育成選手)……。そして2013年夏・1人の1年生大型遊撃手が[stadium]QVCマリンフィールド[/stadium]、そして[stadium]甲子園[/stadium]の右打席で躍動した。
檜村 篤史。後編ではいよいよ最後の夏を迎える本人から、センバツまでにライバルから得た課題やセンバツの振り返り、そして強い意志を聞きました。
ライバルから得た課題が「センバツ」での3ランに
檜村 篤史選手(木更津総合)
夏の悔しさを胸に最上級生になると、4番として名実ともに木更津総合の顔となった檜村 篤史。秋には打撃の調子を取り戻し、関東大会決勝に進んで44年ぶりのセンバツをほぼ確定させる活躍を見せた。
しかし、決勝戦では再び守備面で新たな課題を見出すことになった。同じ遊撃手を守る浦和学院・津田 翔希(3年・主将)の正確なスローイング、動作のスピードを見て檜村は力不足を痛感した。冬場の練習はこれで決まった。まずノックの意識が変わった。
「遠い位置からでも一塁手の胸に投げられる練習を徹底的に行いました」(檜村)
打撃でも25球連続ティーを行う「マシンガン」という練習メニューを冬場から春先まで続け、スイングスピードに磨きをかけてきた。同時に取り組んだのが打撃での考え方「初球打ちを重視する」である。これは檜村自身に解説してもらおう。
「投手はストライクを入れたがる傾向がある。ですから、そこに甘い球が多い。木更津総合ではそこを重視しています」
昨秋もチームは積極的な打撃で勝ち上がってきた。実際、檜村の打撃を振り返ると、結果を残しているときは積極的に打撃ができていることが多い。
そこで大事なのは先程記したスイングスピード、さらにインパクト時の力をいかに正確に伝えられるか。そこに入ってくるのは「迷いの排除」、そして初球打ちと相反するようであるが、「見極めの論理」である。
「打てない時は、打席の中で迷いがあるとき。それだとスイング軌道も乱れてしまい、インパクトの瞬間に力が伝わりません。なので、迷いなく振ることを意識しています。そして初球から打つことは、ボール球を打ってしまうことにもつながるので、ボールの見極めができるように、ブルペンで投手が投げるボールを見極める練習にも取り組んできました」
冬の積み上げはセンバツ初戦・岡山理大附戦で成就した。3回裏・初球、誘い球のスライダーを見極め、2ボールノーストライクにしたところで迷いなく振っての左翼ポール際への逆転3ラン。これこそ檜村が描いていた「動作スピード論」の集大成であった。
さらなる課題を消化する現在のトレーニング
檜村 篤史選手(木更津総合)
ただ、初戦で活躍した選手は徹底的にマークされるのが全国レベルの戦い。2回戦・静岡戦で檜村 篤史は5打数1安打2三振と満足いく結果を残すことができず、チームも2対4で惜敗を喫する。
「2試合を振り返ると守備では練習通りのことができましたが、打撃ではダメでしたね。相手の村木 文哉投手(2年)は直球主体と聞いていたのですが、思いのほかフォークが多く、全く打つことができなかったです。そういう配球の読みが課題になるかなと思いました」
センバツで狂わされたリズムはすぐには戻らず、一か月後に迎えた春の千葉県大会2回戦・市立松戸戦でも、檜村は左サイドの技巧派・原島 康平(3年)を打ち崩すことができず、9回に放った安打のみ。1対3で敗れた木更津総合は夏の千葉大会をまさかのノーシードで迎えることとなった。
よって夏への課題は明確だ。今は左投手の対策と、逆方向へ強い打球を打つことを意識している檜村。「実際に練習試合でも、右中間を破る長打を打つことが多くなり、テーマにしていることができていると感じます」と当人も話すように、徐々に長丁場となる最後の夏への準備は整ってきている。
誰もが絶賛するインパクトある「ラストサマー」へ
「練習姿勢を見ると、自主練習を見ても夜遅くまでやっていますし、考え方も、意識もしっかりしていて何もいうことはありません。ただ性格的なものか、やや控えめなところが物足りないかなと思います。最後の夏では『俺が引っ張ってやる!』という気持ちが出てほしいですね」(五島 卓道監督)
「甲子園に行って負けても、インパクトある活躍を見せてほしいですね。それこそ静岡戦で結果を残すことができれば『やっぱり檜村は違うな、簡単には打ち取ることができない』と思わせることができるはずです」(青山 茂雄部長)
暁星国際時代も監督・部長としてタッグを組んだ2人の檜村評はくしくも一致した。
そして檜村 篤史も……。先頭に立って引っ張っていきたいと自覚している。
「やはり4番を打たせてもらっているので、試合を決める当たりを打ちたいですし、俺がなんとかしてやるなど、気持ちが前に出てくる先輩たちが活躍しているのを見てきたので、そういうのは大事だなと思います。みんなを引っ張っていきたいと思います」
木更津総合をはじめ、千葉県すべての高校球児、数多くの千葉県民が自らのアイデンティティーを感じる千葉大会まであと2ヶ月。その中で1年夏に見せた勝負強さをベースに、悔しさと努力を積み上げたものを出し切る覚悟を示す檜村 篤史のラストサマー。その決意が身体に乗り移ったときには、誰もが絶賛するインパクトが幕張の浜に響くはずだ。
(取材・写真/河嶋 宗一)