Interview

名伯楽の指導によって覚醒した野村健太(山梨学院)目指すは高校通算50本塁打!【後編】

2019.01.31

 高校通算34本塁打を放ち、181センチ90キロと恵まれた体格、日焼けした顔つき。吉田監督から「山梨のデスパイネ」と名付けられた野村健太。野村は「こうして注目していただいているので、ありがたいことです」と語る。後編では野村の打撃改革の中身を具体的に迫っていきたい。果たして2年秋ではどんな進化を見せたのだろうか。打撃技術の変化について野村の言葉で語ってもらった。

ダメ出しから逃げず、関東大会で大爆発!

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関東大会でホームインする野村健太(山梨学院)

 山梨学院は8月の夏休みから小倉清一郎氏がコーチに就任。吉田監督がさらに野球を学びたいという思いから実現したものだった。
 その指導内容は厳しく、高度なもの。理解ができなければすぐに叱られる。褒めて伸ばすの現代のスタイルから逆行するものだろう。野村も例外なくその1人で、構え、ステップ、打撃スタイルとすべてをダメ出しされ、叱られる毎日だった。吉田監督によると小倉氏が野村に最も指摘したのは「ファーストストライクを打つこと」だという。

 「野村はファーストストライクを見逃していて、小倉さんからよく叱られていましたね」

 最初は苦しい日々だった。
 「怒られる毎日で、正直、打撃フォームは見失いましたし、練習でもヒットがあまり出なかったです」と打撃フォームを見失いそうになった。山梨県大会の初戦は7番からスタート。3回戦の甲府商戦から4番に復帰。野村は「自分と合ってないのかなと思ったけれど、信じてやってみるかと思ってやり続けました」と小倉氏の指導に耳を傾け、構え、スイング軌道を見直していった。
 すると少しずつ結果は上向いていく。準々決勝の駿台甲府戦では2打席連続本塁打を放ち、勝利に貢献。4番打者としての本領を発揮したのは関東大会からだ。

 まず中央学院戦での本塁打。初回にいきなり2ランを放つ。
 「中央学院戦のホームランは1打席というのがありましたので初球から打っていこうと思ったのと、ランナーもサードにいて、チャンスでしたので、積極的に打ちました。甘かったというかインコース気味だったので上手く肘をたためた本塁打でした」と振り返る。

 この一発を機に勢いに乗った山梨学院は快勝。そして準々決勝の前橋育英戦では4回裏、試合を決定づける3ランホームラン。前橋育英梶塚彪雅はアウトコースへの制球力が優れた右投手で、そのアウトコースストレートを狙い打ったものだった。

 2試合連続弾はいずれも初球。小倉氏から指摘されていた「ファーストストライク」を打ち返すことを見事に実践したのだ。この本塁打は野村にとって理想の本塁打だった。

 「右中間に打てるバッターというのがいいバッターだと自分では思っているので、右中間に打てるのが理想だったのでまた一つ成長したといいますか、自信になりました。
 手応えは本当に完璧でした。打った瞬間で『あーいった』と思いました。右中間(への打球)で打った瞬間、本塁打を確信するというのもないので、右中間だと練習試合とかでもないので、嬉しかったです」

 また野村は関東大会を機に技術が良くなったと振り返った。そこで、[stadium]甲子園[/stadium]の本塁打、関東大会の本塁打の映像を見せると、野村はフォームの違いを解説してくれた。

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関東大会での野村健太(山梨学院)の打撃フォーム

 「構え方がかなり良くなりました。それまですごい悪くて全然直らなくて、甲子園の本塁打を振り返って、腕の位置を見ると、高いですし、後ろに引きすぎていて、バットの出が悪くなっているんです。ただ関東大会では構えたとき、バットを持つ手の位置を低くしました。傘を持つ感覚ですね。それでバットの出もよくなりました。やっぱり小倉さんの教えがなければ身になっていないですし、本当に感謝しています」
と小倉氏に感謝の言葉を述べていた。

[page_break:野村のミート力の高さを象徴するバント技術]

野村のミート力の高さを象徴するバント技術

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山梨学院の主力メンバー、左から野村健太、菅野秀斗、相澤利俊、栗田勇雅

 秋季関東大会では3試合で12打席10打数4安打2本塁打4打点と、結果を残した野村。スラッガータイプとしては三振2と三振数が少ない。その証拠としてボールを捉える感覚の良さを象徴する技術をお伝えしたい。実は野村、吉田監督によるとチームで一番スクイズが上手い選手だという。実際にスクイズを決めた試合もあった。今回は野村がスクイズが上手い事実は伝えたいのではなく、スラッガーでありながら、バントができる技術の高さに着目してみたい。

 バントは打撃技術の高さを測るものさしになる。千葉経大附の松本監督の言葉を紹介したい。
 「バントは腕の角度をしっかりと決めないと転がせませんよね。バントは自分の目の前でバットを出さないとしっかりと決められません。自分の目の後ろでバットを出したら、必ず失敗します。上手くバントするためには脇を締めて、一塁側へ転がすか、三塁側へ転がすかで、腕の角度も変えることが大切です。その時に脇が開いたら、詰まってファールになったりしますよね」

 野村に聞くと、「バントは簡単なようで難しくて、バットの上に当てたらフライになってしまうし、下に当てすぎても、かすってファールとか真上にバウンドしてキャッチャーゴロとかになってしまうので、加減が難しいと聞きますが、僕の場合、あまり苦労したことがないので、ボールに当てる力と見る力は自信があると思います」と、しっかりとバットの正面に当てて転がすことができるのだ。吉田監督も「高い打撃技術を作り上げるうえでバントができるのは大事なことだと思います」と語る。

 前編では野村が捕手寄りのポイントで捉えることを紹介したが、ボールを見る能力が高いことから実現できているものだといえる。

高校通算50本塁打に到達したい

 そして選抜大会もあと1か月半に迫ってきた。練習内容について問うと、
「練習のテーマはやっぱりバッティングもなんですが、守備と走塁を磨いていかないと上のステージではやっていけないと思うので、守備と走塁をあげていきたいです」

 やはり高いステージでプレーするために総合力アップが当面の課題だ。
 自慢の打撃で目指す目標は高校通算50本塁打。野村にとっては到達できる目標だと実感している。最善の準備を尽くし、二季連続の甲子園で大きなアーチを架ける。

文=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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