鹿児島情報vs鹿児島
要所で「らしさ」発揮・鹿児島情報
鹿情報・新山2ラン
鹿児島市内大会3位でシード権を取った鹿児島情報に、夏準優勝の主力メンバーを多数擁する鹿児島との対戦は、初戦で対戦させるにはもったいない好カードだ。雨による影響もあって互いにミスもあり、新人戦らしい先の読めない展開ではあったが、要所で「らしさ」を発揮した鹿児島情報が競り勝った。
試合開始から雨が降り続き、どこかで大降りになればノーゲームになってもおかしくない雰囲気の中で、一度も中断になることなく、2時間21分の熱戦が繰り広げられた。
鹿児島情報は初回、1、2番が2球で2アウトになったが、3番・西山瑞希(2年)がライト前ヒットで出塁し、4番・新山太晟(2年)がレフトスタンドに特大2ランを放ってチームを勢いづけた。
4回には7番・西龍司郎(2年)がレフトオーバー二塁打を放ち、リードを4点に広げた。
劣勢を強いられた鹿児島もその裏、二死から6番・小村亮太(1年)のセンター前ヒットを皮切りに、4連打を浴びせて3点を返し1点差に詰め寄った。
6回、鹿児島情報は3番・西山のライトオーバー三塁打などで4点を加えリードを広げる。
終盤は鹿児島がようやく本領を発揮して追い上げたが、鹿児島情報が逃げ切った。
今年の鹿児島情報の持ち味は足を生かした機動力と打力にある。打力では、松永遥平(2年)―上之薗太雅(2年)の夏準優勝バッテリーから、新山の2ランをはじめ5本の長打を含む10安打を浴びせた。この点に関しては「雨で投げにくかった分、晴れていたらまた違った展開になっていたでしょう」と図師賢剛監督も半信半疑の様子だ。
機動力に関しては、雨でグラウンドがぬかるんでいた分、こちらも十分発揮できたわけではない。ただ6回の攻撃では高い走力で大きく勝機を手繰り寄せたように個人的には思えた。
グラウンド整備後の6回、先頭の西がレフト前ヒットで出塁。8番・沖田龍之丞(1年)、9番・森太護(1年)は水を含んで重くなったグラウンドを利用した連続バントを仕掛ける。森のバントが野選を誘い、チャンスが一三塁と広がった。1番・本村優貴主将(2年)が犠牲フライを放ち、2点差とする。
なお二死一二塁と畳みかける好機で、記録に残らない好走塁があった。松永の絶妙な二塁けん制で二走・森が三遊間で挟まれる。森と一走・山口遼太(2年)が二塁ベース上で重なりかけたが、山口は森がベースに着くと同時に一塁に戻り、挟殺プレーに参加しようと一二塁間の中間あたりにきていた一塁手の背後に抜け、誰もいない一塁ベースに戻ることができた。
ここで森か山口、どちらかがアウトになっていれば、続く西山のライトオーバー三塁打は生まれていない。そうなると点差は2点のままで、先の展開がどうなるか、分からないだけに隠れた好走塁だったといえないか。
「セーフになったのは相手が一塁ベースを空けるミスしてくれたおかげ。あの場面ではタッチされないよう無我夢中で逃げただけ」と山口。2人ともアウトにならなかったのは、意図したものではなかったが「1番から9番まで全員足が速くて、足を生かしてそこから打撃につなげるのがうちの持ち味。走塁練習はいつもやっている」(山口)鍛錬の成果ともいえる。
9、1、2番は「前チームから試合に出ており、よく機転を利かせてくれた」と図師監督。悪条件の時こそ、地道な日頃の積み重ねがものをいう。そんなことを感じさせた。
(文=政 純一郎)
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