美里工vs宜野湾

　何が起こるのか分からないのが夏、とは良く言うが、両軍合わせて31安打（内11本が長打）が飛び交う想定外の凄まじい試合だった。

　まず観衆のど肝を抜いたのは宜野湾打線。
1回裏、先頭打者が出塁するも牽制アウト。次打者も倒れツーアウトとなったが、與那覇 開己がレフトへ二塁打を放つと、4番門口 倫大がライトの頭上を越えるタイムリー三塁打で先制した。
普通ならば牽制死で雰囲気がしぼむところを、クリーンアップの二人で点を奪ったことで、宜野湾ナインの中に「捉えられる！」との確信めいたものが生まれたのではないかと見ていた。

　案の定、2回の宜野湾の攻撃では走者を一人置いて野原 陽介がレフトへ高々と打ち上げると、打球はポールの網にぶつかる2ランホームランとなる。
さらに宜野湾は3回にも一死一・二塁から5番安里 大地がタイムリー二塁打を放ち4点目。なおも二死一・三塁として、崎村 駿にセンターオーバーの2点タイムリー三塁打が生まれ、序盤で6-1と大量リードしたのだった。

　だが、さすがは昨年秋4強（試合レポート）の美里工。4回表の先頭打者が出塁すると、4番中村 太八郎がライトへのタイムリー二塁打で1点を返す。宜野湾先発の野原も踏ん張り、ファーストフライ、セカンドゴロでツーアウトまでこぎつける。
美里工石新 恭士もセカンドゴロに斬ったが、これが痛恨のエラーとなり2点目を失うと、続く佐渡山 卓にタイムリー二塁打を見舞われ一気に2点差へと詰め寄られた。

　だが宜野湾は5回、一死一・三塁から安里 昇之介のレフト前へのタイムリーで1点を返すと、9番金城 龍樹にも2点タイムリーが生まれて再び5点差をつけて前半を折り返した。

　グランド整備後の6回、もしもここで無得点に終わっていたならば、さすがの美里工でもひっくり返すのは難しかったかもしれない。
ツーアウト走者無しから途中出場の久田 真輝がセンター前ヒットで出塁すると、キャッチャーが一塁へ牽制悪送球。トップに返った安里 航太郎がライト前へ運び1点を加えると、安里航の盗塁後に島袋 慎伍もライトへ弾き返し2点を奪った。

　これで完全に波に乗った美里工は続く7回には、知花 樹と松川 剛太に連続三塁打が生まれ、石新の犠飛で1点差と詰め寄る。さらにヒットと四球で塁上を賑わせると安里航が右中間を深々と破る逆転の2点タイムリー三塁打を放った。
とどまることを知らない美里工打線は8回にも一死ニ・三塁として、知花が2点タイムリーを放ち12点目をボードに刻んだ。

　6回以降は立ち直りつつあった佐渡山を崩せず追い詰められた宜野湾だったが9回裏、二死一・三塁として野原の、意地のライト前タイムリーで1点を奪う粘りと諦めない姿勢を見せ続けた。
体調が万全ではない中で、5回までに自責点1と好投した野原以下宜野湾ナインの頑張りに、心から拍手を送りたいと思う。

（文＝當山 雅通）