試合レポート

愛知産大工vs岡崎城西

2015.04.18

愛産大工、お世話になった校長先生の定年退職祝う勝利

力感のある高坂投手(愛知産大工)

 初回、四死球でもらった満塁の好機にタイムリー打の出た愛知産大工が序盤に得点を重ねて優位に試合を運んだ。立ち上がり、制球にバラつきのあった岡崎城西の石川君から3つの四死球で満塁とした愛知産大工は6番益田君が左前打して2者を帰して先制する。

 2回にも、死球から盗塁と高坂君の安打などでチャンスを広げて1番眞部君の左前タイムリー打に深谷君の犠飛、4番福山君の右線三塁打などで3点。3回にも8番榊原君の左犠飛でさらに1点を追加して、愛知産大工はいい形で加点していっていた。

 そして、先発した背番号10の左腕高坂君は、力感のあるタイプで力強く投げ込んできていた。5回を投げて5安打こそ浴びたものの、得点は与えず、打たせながらも抑えていたのは球そのものに力があるということだろう。

 その高坂君は5回でマウンドを降りて、愛知産大工ベンチは2人目に野畑君を送り出した。野畑君もあっさりと三者凡退で抑え、その裏に愛知産大工は深谷君の二塁打で1点を加えて7対0とする。

 このままいけばコールドゲームが成立するという場面になったが、ここで愛知産大工は3人目としてエースナンバーを背負った下川君を投入した。
鈴木将吾監督は、「下川を投げさせたかったというところはあります。というのも、肩を痛めていて投げられない状態が続いていましたから、公式戦でどれだけ投げられるのかなぁということを試してみたかったですね。点差もありましたし、この場面で行ってみてもいいかなと持って送り出しました」という思いだった。

 ところが、いきなり7番内藤君に安打され四球も与えてバントで一死二三塁としてしまう。1番に戻って岡崎城西は我妻君が三塁へボテボテながら内野安打を放ち、1点を返してコールドゲームを逃れるスコアとし、死球でなおも満塁。ここで、鈴木監督は4人目の松田君を送り出さざるを得なくなった。しかし、代わり端に死球でこの回2点目が入った。

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福山主将と市川前校長先生(愛知産大工)

 岡崎城西は8回にも無死一塁で内藤君の左中間二塁打でさらに1点を返して追い上げた。

 前半は愛知産大工ペースだった試合は、岡崎城西の流れになっていったのだが、その裏に愛知産大工は一死一三塁で3番深谷君のスクイズで1点を追加して、何とか逃げ切った。

 愛知産大工は、この試合は何としても勝ちたいという思いが強かった。というのも、これまで野球部に対して熱心に応援し、時間の許す限り試合にも応援に来てくれていた校長を務めていた市川博先生が今年3月で定年退職となった。それでも、この日も試合を応援に来てくれていたということで、「是非、勝利してウイニングボールを市川先生にプレゼントしよう」という思いで戦っていたのだ。そんな気持ちの結実が、序盤の猛攻につながったといってもいいであろう。

 鈴木監督は、記念ボールにこの日のスコアと日付を記して主将の福山君から市川先生に手渡すこととした。
「市川先生には、本当にお世話になりました。いつも、野球部のことを考えてくださって、感謝しています。私を採用してくださったのも、市川先生でしたから…」と、気持ちを表していた。

 勝利のベンチ裏に駆けつけた市川先生に、福山君から、「いつも暖かく応援してくださって、ありがとうございました」と、記念ボールを受け取った市川先生。選手たちにお祝いの言葉を掛けながらも、「涙声になっちゃいそうですよ」と言いながらも喜びを隠し切れないという様子だった。

(文=手束仁

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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