愛知啓成vs岩津
快進撃続けた岩津だったが、ベスト4で力尽きる
攻撃のタイムを取った岩津
正直、地区予選を勝ち上がって県大会に出場できればそれで十分一つの目標達成という岩津。
それが、県大会でも着実に試合をものにして、3回戦ではセンバツベスト4進出で、一気に全国区のチームの一つとして名乗りを上げた豊川を下した。さらに、19日の準々決勝でも、21世紀枠で出場を果たし甲子園勝利という実績もある成章に対して延長の末に勝つという快進撃を続けてきていた。もちろんチームとしては、初のベスト4進出である。ここまで来たら、あと一つ勝って東海大会までコマを進めたいという気持ちもあったであろうが、強豪愛知啓成の前に、ついに力尽きた。それでも、ここまでの戦いは十分に賞讃されていいものであろう。
岩津は地域の公立校で、学校としても必ずしも部活動や進学に力を注いでいるというものではない、きわめて普通の学校だ。だから、グラウンドも校庭というレベルで、あるにはあるけれども整備もされていなければ、野球に対応しているとは言い難いという。それに、生徒たちも必ずしも自主性に富んでいたり、いろいろなことに対して積極的だというものではないという生徒が多い。
就任5年目となる丘友嗣監督も、「まずは生活指導から始めています」というレベルだった。
それでも、「どうやったら勝てるのだろうか」ということを模索しながらも、野球をやりたいという一途な気持ちの生徒たちが集まって、日々ほぼ3時間という練習時間で限られた中で、一生懸命取り組んでいくうちにもたらされた今回の結果だった。
丘監督は、ここまで戦ってきた選手たちに対しては、素直に評価して、その頑張りは称えていた。そして、その上で、
「相手は地区ブロック大会予選の初戦であろうが県大会の準決勝であろうが同じです。勝負は相手じゃないんだ、自分たちなんだ」ということを選手たちに伝えてこの日の試合に臨んだ。
加藤君のタイムリーで5点目の生還の甘利君(愛知啓成)
結果的には6つの失策も出てしまい、7回コールドゲームで力負けした形になってしまった。
それでも「ここまで来たということは、間違いなく自信になっていくと思います。また、そうしないといけないですね」と、言うように「勉強も苦手、物事に集中も出来ない、あまり自分に自信を持って物事に取り組んでいったことがないという子たちが多い」という中で、こうして一つの結果を残したことは、わかりやすい実績であろう。
「あとは、これで勘違いをしないことですね。それは、私も含めて意識していかなくてはいけないことだと思います」
と、丘監督は謙虚に語っていた。
今大会旋風を巻き起こしていた岩津相手だけに、愛知啓成の岡田敬三監督としても、力としては上だったかもしれないけれども、決してやりやすい相手ではなかったはずだ。それでも、序盤に細かく得点を重ねて主導権を握っていったのはさすがだった。
初回は、四球と相手の送球ミスなどの失策に乗じて2点を奪うと、2回も3つの死球と暴投などで2点、そして3回は失策の走者をためて7番加藤義君の右前打で二者が相次いで帰ってさらに2点。これで、試合そのものは完全に愛知啓成のものとなった。
6回にも風に煽られた打球に対して、岩津の飛球失策などもあってさらに3点が入った。そして、伊左次君とエースナンバーをつけた宮津君との継投で、愛知啓成は岩津の反撃を1点のみに抑えた。とくに、守りという点でのチームの安定感は十分に感じさせてくれるものだった。
(文=手束 仁)