試合レポート

水海道一vs土浦三

2016.07.14

取られてすぐに逆転した水海道一、その後も伸び伸び野球で会心の試合

 強豪校対決の後を受けての試合となった。スタンドにも、大一番の後の独特の空気が流れていたが、そんな中で、公立校の中堅校が高校野球らしい戦いを見せてくれて、一服の清涼剤のように感じられる試合でもあった。

 水海道一は右スリークォーターというか、ややサイドハンドにも近い位置から腕の出てくる小林 和真君。打者の手元で微妙に変化していくクセ球が持ち味でもある。これに対して土浦三の田山君はオーソドックスな右腕だ。2回に一死満塁を併殺で切り抜けるなど落ち着いた投球が光った。

 こうして0対0のまま序盤が過ぎていった。どちらがどういう形で先制点を挙げるのかなと思われたが、土浦三が4回、四球の川井君を置いて4番寺田君が右越三塁打して得点した。水海道一の小林君としては、少し甘く入ってしまったというところだろうか。もっとも、そこを鋭く打ち返した寺田君の好打は評価されていいだろう。

 この1点で試合は動き出した。常々、「点が入れば試合は動くぞ」ということを伝えている水海道一の鈴木 厚監督である。1失点をマイナスと考えるのではなく、むしろこれで膠着状態から逃れたのでアクションはあるぞという気持ちになれたのではないだろうか。

 その思い通りに、5回の水海道一はきっちりと反撃した。二死走者なしから打順が1番に戻ると根本敦君、海老原君、岸本君、文道君と4連打で2点を挙げて逆転。田山君のわずかなスキをついた形になって奪った、見事な集中打でもあった。

 水海道一はスタンドの応援もいい感じで盛り上がっていって、応援席が選手たちを後押ししていくという雰囲気が十分に感じられた。こうしたいい雰囲気の背景には、伝統校の水海道一は毎年5月の連休に、下妻一との全校あげての対抗戦があり、学校を応援する素晴らしさ、仲間に声援を送る楽しさを生徒たちがみんな身をもって知っているからではないだろうかと思わせる空気があった。

 この勢いに乗った水海道一は、7回にも四球の1番根本敦君をバントで進めると、岸本君の安打で追加点。そして、9回にも土浦三の二番手荒井君を攻めて、6番渡邉大雅君のタイムリー安打などでさらに2点を追加。その裏、やや勝ち急いだ小林君が1点を失ったものの、さほど危なげを感じさせず、そのまま逃げ切った。

 水海道一としては、先制点を許した次の回にすぐにひっくり返すことができたのも大きかった。それに、小林君が安定した投球だったことも、鈴木 厚監督としても安心してベンチで見ていられたのではないだろうか。

 突出した選手がいなくても、ひたむきにプレーしていくことで、いい試合はできていく。そして、それを勝ちに結び付けていかれるということを如実に示した水海道一の試合だったと言っていいだろう。スタンドの雰囲気も含めて、好印象だった。

(文=手束 仁

水海道一vs土浦三 | 高校野球ドットコム
注目記事
第98回全国高等学校野球選手権大会 特設ページ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.19

【東海】中京大中京がコールド勝ちで17年ぶり、菰野は激戦を制して23年ぶりの決勝進出<春季地区大会>

2024.05.20

【春季京都府大会】センバツ出場の京都国際が春連覇!あえてベンチ外だった2年生左腕が14奪三振公式戦初完投

2024.05.19

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在30地区が決定、青森では青森山田、八戸学院光星がシード獲得

2024.05.20

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在31地区が決定、宮城では古川学園、仙台南、岩手では盛岡大附、秋田では秋田商などがシードを獲得

2024.05.19

【宮崎】日章学園、富島、小林西などが初戦を突破<県選手権大会地区予選>

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.17

「野球部や高校部活動で、”民主主義”を実践するには?」――教育者・工藤勇一さん【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.5】

2024.05.14

大阪体育大の新入生に兵庫大会8強の145キロ右腕、金光大阪の1番センター、近大附の4番打者など関西地区の主力が入部!

2024.05.16

【宮城】仙台一、東北、柴田、東陵がコールド発進<春季県大会>

2024.05.19

【東海】中京大中京がコールド勝ちで17年ぶり、菰野は激戦を制して23年ぶりの決勝進出<春季地区大会>

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?