試合レポート

日大桜丘vs都立武蔵野北

2020.07.30

連投の好左腕・都立武蔵野北の一井、4回突如乱れてコールドで敗退

日大桜丘vs都立武蔵野北 | 高校野球ドットコム
武蔵野北・一井日向汰

 秋は1次予選で敗れたものの、2試合の奪三振は24。都立武蔵野北の左腕・一井日向汰は、都立のドクターKと言っていい逸材だ。しかしこの大会は雨天中止が続き、日程変更により、1回戦、2回戦が2日連続で組まれた。1回戦の明星学園戦で一井は144球を投げた。
 冷水と熱い湯に交互に入ったり、ストレッチをしたり、親にマッサージをしてもらったりして、翌日の試合に備えた。一井本人は、「昨日の影響はありませんでした」と言っているが、疲労は感じ取れた。

 一方投手陣が豊富な日大桜丘も、1回戦に続き2日連続の試合となったが、前日は登板していない左腕の丹野日和を登板させた。

 立ち上がりに問題がある武蔵野北の一井であるが、1回表はチェンジアップなど緩いボールをうまく使い、二ゴロ2つと、相手を泳がせるような形で三者凡退に仕留めた。2回表は走者を出したものの奪三振2。3回表にも三振1個を奪い、本調子ではないものの、一井らしい三振を取る投球ができるようになってきた。
連投の一井を楽にするためにも、武蔵野北は早く先取点がほしいところだ。1回裏は2番の和田康希が四球で出塁すると、日大桜丘のバッテリーミスの隙に二塁を狙ったが、捕手の小林孝太郎が素早く送球して和田を刺した。
日大桜丘の佐伯雄一監督は、「あのプレーが大きかったと思います」と語っている。

 

 武蔵野北は2回裏にも6番・須賀文太の左前安打やワイルドピッチなどで一死二、三塁のチャンスをつかんだが、8番・原佑は二ゴロ。三塁走者の須賀は本塁を突いたが、日大桜丘の二塁手・白鳥優太が落ち着いて本塁に送球し、須賀はアウト。なかなか1点を奪えない。

 武蔵野北の一井に抑えられていた日大桜丘の佐伯監督は、バッターボックスの前に立って、変化球を投げにくくさせる指示をした。
すると4回表、一井が突然乱れだす。
2四球、1安打で無死満塁のチャンスをつかみ、打席には7番で主将の小林。「強く振ることを意識しました」と言う小林は中前安打を放ち2人が還り、日大桜丘が2点を先制した。

 さらに8番・森俊翔が四球で歩き再度満塁となり、9番の丹野が中前安打でさらに2点を追加。1番・大森竣平に四球を出すと、ついに一井を一塁にまわし、遊撃手の中島海斗が登板した。
 中島も制球が乱れ3四球に1安打、さらには6番・佐藤有真に三塁打を打たれて、この回11点目が入った。すると一井が、再度マウンドに上がった。「伝令を出して聞いたら、投げたいと言うので、投げさせました」と武蔵野北の原壮一監督は言う。

 一井は5回表にも5点を失った。それでも、5回コールドが決定的な状況で、最後の打者は三振で仕留めた。明らかに三振を狙った投球であったが、「しっかり終わりたいと思いました」と一井は語る。

 結局16-0の5回コールドで日大桜丘が勝ち、一井の夏は終わった。自粛期間が長く、練習ができなかった状況での連投はやはり、厳しかった。
 一井はプロ入りを希望した時期があり、原監督も「(志望届の)紙は渡しています」という状況であったが、本人に改めて聞くと、「勉強をしたくなりました」と、国公立大学を目指して勉強することを表明した。大学でも野球を続けるつもりで、そこでプロを目指すことになる。「都立で泥臭く努力することがありませんでした」と語る一井。新たなステージで成長することを期待したい。

 一方3回戦進出を決めた日大桜丘は、秋は1次予選の初戦で都立小岩にコールド負けした。そこで「基本を大事にするようにしました」と、佐伯監督は言う。3回戦は、2回戦をタイブレークの末勝利した錦城と対戦する。複数の好投がいる錦城と、好投手・一井を攻略した日大桜丘の対戦。好ゲームを期待したい。

(記事=大島 裕史

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.18

【長崎】長崎西、島原中央などが初戦を突破<NHK杯地区予選>

2024.05.18

【春季関東大会】鹿島学園が逆転勝利!左腕コンビのリリーフで樹徳との接戦を制する!

2024.05.17

【春季関東大会注目野手一覧】超高校級のショートトリオ、健大高崎の強肩捕手など24人の逸材野手をピックアップ!

2024.05.18

国民的人気だった韓国の高校野球はなぜ凋落したのか? “韓国の甲子園球場”の撤去、少数エリート制度の弊害……【韓国高校野球事情③】

2024.05.17

【関東大会注目チーム紹介】13年ぶりの春季埼玉王者・花咲徳栄打線は超強力!ドラフト上位候補スラッガー・石塚を中心に県大会58得点!

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.14

大阪体育大の新入生に兵庫大会8強の145キロ右腕、金光大阪の1番センター、近大附の4番打者など関西地区の主力が入部!

2024.05.16

【宮城】仙台一、東北、柴田、東陵がコールド発進<春季県大会>

2024.05.13

大阪桐蔭、山梨学院、慶應義塾…強豪校・名門校の昨年度卒業生はどの進路を歩んだのか?【卒業生進路一覧】

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?