試合レポート

都立小岩vs都立広尾

2019.07.17

悪い流れを我慢して凌いだ小岩、8回に逆転で4回戦へ

 はっきりしない天気が続く毎日だが、この試合が始まる頃には久しぶりの青空も覗くようになってきた。ようやく、夏の大会らしい雰囲気も出てきたかなというところである。

 前の試合を40対0というスコアで大勝した都立小岩。果たして、この日の試合はどんな戦いをするのかということも興味深かった。

 序盤、その都立小岩は2回に一死満塁を作るもいい当たりがちょうど遊撃手が動いたところへ打球がいって併殺。このシーンに代表されるように、7回までの都立小岩は、好打が打者の正面を突くなどことごとく流れが悪かった。

 これに対して、都立広尾は3回までは3人ずつで抑えられていたのだが、4回は先頭の坂田君が内野安打で出ると、一死後3番兵藤君が左前打して一二塁。その後、二死二三塁となったところで、5番の山口君が外の球を上手に拾う打撃で左中間に落として2者が帰った。

 一方の都立小岩は5回にも、一死一塁で二直併殺でチャンスを潰してしまった。6回にやっと永島君の左前打で1点を返した。そして、都立小岩ベンチは1点差ならばいけると、エースナンバーの関根君を投入した。

 ところが、安打からの外野手のファンブルや暴投と中犠飛などで2点を失う。試合の流れということで言えば、都立小岩としては非常によくない展開だった。そのまま、負の流れで行ってしまいかねない状態だった。ところが8回、ここまで我慢と辛抱していた都立小岩打線がようやくはじけた。

 この回の攻撃が始まる前、西悠介監督は選手たちに声をかけた。

「いつも、甲子園へ行こうって言っているけれども、こんなところでこんな負け方をしたら悔いはないのか」

それに対して、選手たちは「悔いがあります」と答えたという。

「それじゃあ、ここで取り返そうじゃないか」

そう言って送り出した先頭の岸部君は四球で出塁。内野ゴロで二進すると途中出場で4番に入っていた堀田君は死球で一二塁。続く橋詰君が足を攣りながらも右前打して満塁。ここで6番の主将永島君が右中間を破る一掃の二塁打で同点。さらに、続く佐久間君も左前打してついに都立小岩が逆転した。

 勢いづいた都立小岩は9回にも3番大谷(おおや)君の左越二塁打が出て逆転した。このリードを関根君がっかり守っていった。

 苦しい試合を何とか逆転でものにした都立小岩。西監督は、「7回まではことごとく、いろんなことが裏目に出ていました。それを、よく辛抱してくれました。我慢の勝利です」と喜んだ。そして、「高校時代の恩師(早稲田実・和泉実監督)の言葉を引用させてもらって、『公式戦の1勝は100日分の練習に値する』ということを言っていますけれども、まさに、それを実感する試合となりました。選手たちも、間違いなく大きく成長したと思います」と、喜んでいた。また、同点の二塁打を放って、この日3安打と大活躍だった永島君に関しては、「一番一生懸命努力して、頑張ってきてくれた子が、ここという時に回ってきて結果を残してくれたことが嬉しい」と、嬉しさを隠しきれない様子だった。

 試合を7割以上支配していながら、最後にひっくり返された都立広尾。都心のど真ん中でグラウンドも狭く、限られた環境の中で頑張ってきたチームだなということは十分に感じさせてくれる試合ぶりだった。

 

(文=手束 仁

2019年 第101回全国高等学校野球選手権大会東東京大会
■開催期間:2019年7月7~7月27日(予定)
■組み合わせ表【2019年 第101回全国高等学校野球選手権大会東東京大会】
■展望コラム【【東東京大会展望】二松学舎大附の夏三連覇を阻むチームは現るか?東東京大会を徹底解剖!】

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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