下館工vs江戸川学園取手
プロ注目の下館工・谷中が15奪三振・ノーヒットノーランで1回戦突破!
大会2日目の日曜日、新聞や雑誌でプロ注目の投手と紹介される下館工・谷中 規彦(3年、大和中)を一目見ようと、[stadium]土浦市川口運動公園野球場[/stadium](通称:[stadium]土浦市営球場[/stadium])は、1回戦にも関わらず、立ち見客が出るほどの賑わいを見せた。
下館工・谷中は、春の県大会1回戦・日立北戦で、10者連続奪三振の県タイ記録を樹立(1997年春に水戸商・井川 慶(現オリックス)が竜ヶ崎一戦で樹立した記録に並ぶ)。一気に注目を浴びるようになった。長い手足から繰り出すストレートは最速142キロを計測する。秋まではスライダーを決め球としていたが、この冬にフォークやチェンジアップを覚えて投球の幅を広げた。
一方の江戸川学園取手は、秋は県優勝の霞ヶ浦に、春は取手松陽に県南地区代表決定戦で敗退し、県大会出場を逃している。県内では無名の存在だが、エース・増田 圭佑(3年、八千代シニア)は1年秋から主戦登板しており経験豊富。ストレートは最速138キロを計測する好投手だ。
注目の好投手対決がいよいよ幕を開ける。
1回表、下館工・谷中がいきなり魅せる。140キロのストレートを連発した後、江戸川学園取手3番・藤野 恭平(2年、取手シニア)を自己最速タイの142キロで空振り三振に仕留める。
2回表、江戸川学園取手先頭の4番・萩原 一星(3年、取手シニア)が相手のエラーで出塁するも、5番がバントを失敗の上で追い込まれて三振。6番が再度送りバントを試みるも、投手前に転がすのがやっとで併殺となる。
2回裏、試合が動く。
下館工先頭の4番・谷中が粘って四球で出塁すると、7番・伊藤 瑞貴(2年、明野中)は追い込まれてから死球、8番・程塚 政斗(2年、岩瀬西中)も四球を選び2死満塁とする。続く9番・古田部 翔大(2年、明野中)は三遊間に強いゴロを放つ。江戸川学園取手ショート・大塚 海人(1年・取手シニア)は懸命に追いつくも、弾いてしまい打球はレフトファールグラウンドを転々(記録は安打)。走者一掃の二塁打となり下館工が3点を先制する。
何とか1点を返したい江戸川学園取手だが、下館工・谷中を打ち崩すことができない。
5回表と8回表に2死から振り逃げでランナーを出すも、後続が続かない。8回裏、江戸川学園取手はエース・増田に代えて蔵 恒汰(2年、江戸川学園取手中)を投入する。
下館工は1死から3番・高橋大成(3年、岩瀬西中)が四球で出塁すると、4番・谷中がエンドラン。打球はセンターの頭上を越えてワンバウンドでフェンスに到達する適時二塁打となり、下館工が1点を追加する。
4対0と下館工リードで迎えた最終回、後がない江戸川学園取手は、先頭の1番・蔵が空振り三振。2番・鈴木 啓太(3年・坂東東中)が三ゴロ。3番・藤野が遊ゴロと三者凡退に終わる。
下館工・谷中が15奪三振、ノーヒットノーラン。二塁を踏ませない圧巻の投球で2回戦進出を決めた。
この試合、まさに、谷中の独壇場だった。谷中は球速のアップに加え、フォークとチェンジアップなど縦系の変化球を習得したことにより 秋に見たときよりもさらに三振が取れるピッチャーへと進化していた。
15奪三振のうち、2つは振り逃げである。 特に8回表は、空振り三振、空振り三振、振り逃げ、空振り三振と、1イニングに4つの三振という珍しい記録が飛び出した。
江戸川学園取手の各打者は、追い込まれてフォークが来ると分かっていても、ホームベースの手前でワンバウンドする球までも振ってしまう。 2つの振り逃げは、このフォークのキレがあるからこそ起こってしまったものだ。
下館工は次戦で強力打線を擁する第5シード・藤代と対戦する。藤代打線が2ストライク後の縦系の変化球にいかに対策を講じてくるか、谷中がシード校を力でねじ伏せ再び奪三振ショーとなるのか、非常に楽しみだ。
谷中の大記録にばかり注目が集まるが、江戸川学園取手エースの増田が下館工に許したヒットは、2回に満塁から浴びた1本と、3回の内野安打のたった2本であり、下館工の各打者から強烈なヒット性の当たりはなかった。
力投も実らず、初戦で姿を消した秀才のエースが、次に見据えるステージは[stadium]神宮球場[/stadium]であろうか。1年秋から見てきた者として、影ながらエールを送りたい。
(文=伊達 康)