試合レポート

県立岐阜商vs加納

2011.03.30

県立岐阜商vs加納 | 高校野球ドットコム

服部幹和監督(加納)

服部幹和監督、加納でのラストゲーム

県立高校の野球部監督の多くは「教員」の立場である。4月の人事異動で、慣れ親しんだ学校から転勤となる先生が毎年いるが、岐阜県の公立校・加納の服部幹和監督もこの春、その一人となった。3月末日をもって10年間勤めた加納を離任する辞令が出た(東濃実へ異動)。

服部監督は加納に、強い野球を植え付けてきた。加納は県下有数の進学校。赴任当時、野球部は鳴りを潜めた状態が続いていた。「顧問の先生が毎日指導できる環境ではなく、生徒たちは野球に飢えていたのかもしれません」。
強化を続け、昨年は永井康裕という好投手が活躍、春季県大会で32年振りの3位に輝いた。
永井が抜けた新チームでも、秋季県大会でベスト8。一躍台風の目となってきただけに、集大成が期待されるこのタイミングでの異動に、ファンとしてはもう少し加納での姿を見たかったという思いだ。部員たちも、在学途中での別れは複雑だろう。

服部監督の特徴のひとつが、厳しさだ。自身は現役時代、県下一の名門・県立岐阜商で2度甲子園に出場した。選手に求めるレベルも、低いところでは留まらない。
「先生の頭の中では、ハイレベルな野球が完成されている。でも、僕たちはそのレベルからかけ離れているので、次々と課題が生じてしまうんです」とは、下級生時から4番打者を務める森陽介の談だ。
「ただ、それをクリアすることが出来れば、試合で勝てると分かっていますので。怒られることもよくありますが、なぜ駄目なのかを説明してくれるので、納得できるんです」。
服部監督は選手たちについて「悪さもせず、素直な子ばかり。必死に食らいついてくるから、指導もやりやすいんです」と、心の中で思っている。


県立岐阜商vs加納 | 高校野球ドットコム

鈴木亮介(加納)

異動が出て数日。
地区大会トーナメント3回戦で、服部監督の母校でもある県立岐阜商と顔を合わせた。
敗れた瞬間に、服部監督の加納での采配は「最後」となる。
勝ち上がれば翌日も試合ができるが、負ければ4月以降の敗者復活戦に回ることになり、その頃には指揮官は既に学校を去っているからだ。

試合は終始、強豪・県立岐阜商ペースで進んでしまった。
ボーイズリーグ出身の成長株左腕・安藤健悟は試合をつくろうと踏ん張ったが、ピンチで長打を浴びるなど苦戦。
それでも、5回裏には森陽介小森一輝の連続タイムリーが出て、一時は1点差に迫る盛り上がりを見せた。

服部監督の様子と言えば、いつも通り。
試合中も、容赦なく檄を飛ばした。
「県大会に出れないようでは(不甲斐ないから)ねぇ」。服部監督の現役時代のポジションであるキャッチャーは特に、普段からよく怒られたようで、この日もイニング間の二塁送球が乱れた正捕手・鈴木亮介が活を入れられた。

それでも、昨秋に捕手へ転向した鈴木は「自分にはまだ足りないものが多すぎて・・・。でも、自分が伸びることができれば、チームも勝利に近づくので」と、ひたむきなプレーを続ける。5回裏のチャンスでは惜しくも三塁ゴロに倒れたが、一塁へヘッドスライディングをする魂を見せた。

離任式で服部監督は、野球部員に部訓が書かれた横断幕を持たせ、全校生徒の前で広げさせた。
在学生に伝えた部訓「誰のために みんなのために 何のために 自分のために」。この言葉の意味は、野球部メンバーが一番分かっていることだろう。

勝った県立岐阜商は、酒井田照人の先制犠飛を皮切りに計10点を挙げた。
大野晃弘の好救援も光った。
藤田明宏監督は、自チームについて「まだ発展途上のチームで、形になっていません。(守備で)捕球できたはずの打球もいくつかありました。ただ、ミスは今のうちに出たほうがいいですし、強いチームであれば、同じ失敗・反省を繰り返すのではなく、次に生かせるはずなので」と話し、先を見据えた。
ちなみに藤田監督は現役時代、服部監督の2年後輩にあたる。
「負ければ服部監督と最後の試合になってしまうということで、加納の選手たちは必死でした。いい試合だったと思います」と、先輩監督の教え子たちを称えた。

(文=尾関 雄一朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.12

学法石川の好捕手・大栄利哉が交流戦で復帰! 実力は攻守ともに世代トップクラス!身長200センチ右腕を攻略し、完封勝利!

2024.05.12

【春季新潟県大会】プロ注目右腕・茨木佑太が完封!元プロの芝草監督は素材、メンタル面も絶賛!

2024.05.12

【春季京都大会】センバツベンチ外の西村がサヨナラ打!新戦力の台頭目立つ京都外大西が4強進出

2024.05.12

プロ注目の200cm右腕・菊地ハルン(千葉学芸)がセンバツ出場校との交流戦でまさかの7失点…夏までの課題は?

2024.05.12

【奈良】天理が決勝最多18得点で圧勝!13年ぶりに春の頂点に<春季大会>

2024.05.08

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.11

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在28地区が決定、長野では松商学園がノーシードに

2024.05.07

【鹿児島】神村学園は昨秋4強の鶴丸と初戦で対戦<NHK旗組み合わせ>

2024.05.07

【山陰】益田東と米子松蔭、鳥取城北が石見智翠館と対戦<春季大会組み合わせ>

2024.05.07

【北海道】函館大有斗、武修館などが初戦を突破<春季全道大会支部予選>

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>