高田商vs奈良朱雀
試合後の挨拶
統合校の夏終わる。
高田商は1点を6回表、先頭の上田が中前安打で出塁、3番・松村が適時三塁打を放ち、同点に追いついた。それまでは、流れを相手に支配されていただけに、試合の流れを引き寄せる大きな同点だった。そして、9回表には、先頭の玉垣が出塁、犠打のあと、二死を取られるも、そこから打線が爆発。4連打で4点を奪い、勝負を決めた。試合巧者ぶりを見せた高田商の戦いぶりだった。
一方、惜しくも敗れた奈良朱雀だが、統合校として初めて迎えた大会を、紆余曲折を経て、見事に戦い抜いた。
奈良県は平成16年度から県立校再編計画を進め、統合・再編を繰り返してきた。これまでも、 法隆寺国際 や 奈良北 など、多くの学校が統合しスタートを切った。しかし、奈良朱雀の場合は、これまでとは事情が違った。というのも、本来は、統合といっても、学校同士がくっつくだけで、在校生にはほとんど関係がなかったが、奈良朱雀の場合は違ったのだ。
というのも、奈良朱雀として学校をスタートさせたのは今の3年生のころからだが、その時も、彼らの前身に当たる、 奈良商業 、 奈良工業 の校舎で、彼らは別々に活動をしていたのだ。つまり、学校自体は「奈良朱雀」としてスタートしたものの、学内にいる生徒たちは、工業・商業と別れて、活動していたため、統合をしたとはいえなかったのだ。それぞれの校風のもと、野球でいえば別々の指導者のもと、活動をしていたのだ。
それが、この4月から本格統合。昨年秋まで別々で戦っていたチームが一つになって、活動をするということになったのだ。
そう簡単なことではない。この2年間は別々の監督のもとで、しかも、自分たちのスタイルでやってきたものを合わさなければいけない。言葉では簡単でも、選手たちにとっては一筋縄ではいかなかった。最初の練習ではぎくしゃくしていたし、工業と商業で意見はぶつかり合い、「ひとつになる」気配などまるでなかったという。
そこから話し合いを重ね、お互いの相互理解を深めることで、チーム力を高め、この大会に臨んできたのである。大会前、選手たちは今までにない盛り上がりを感じ、この大会を迎えた。
きょうの試合では敗れてしまったものの、紆余曲折を乗り越えて、彼らはひとつのチームとしてまとまり、ベストゲームを見せてくれたのだ。主将を務める、早川が試合後に涙ながらに語った。
「(チーム結成当初は)どうなるかと思ったが、3年間、一緒に野球をやってきたと思えるくらいになれたこと、それが嬉しいです。今日の試合での9回裏のベンチの雰囲気はみんながひとつになっていて、あの雰囲気はこれから一生忘れることはないと思います。宝物になりました」
彼らには、僕らでは計ることのできない様々な苦労があったのだろう。彼らはそうした苦労を乗り越え、ひとつになれた。試合には敗れたが、大きな足跡を残して、大会を去って行ったと言っていい。
(文=氏原英明)
[:addclips]
[:report_ad]
下記写真をクリックすると拡大写真がご覧になれます。
高田商 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 4 | 5 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
奈良朱雀 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 |
高田商 松村―吉岡 奈良朱雀 金子、中―早川
三塁打=松村(高)松田(朱)二塁打=松村、仲川(高)高橋、堀(朱)