「3年生の想いを花咲かせてあげたい」 昨秋県32強・鞍手(福岡)はLINEを駆使して個人もチームも磨き上げる
写真は2019年10月の鞍手の練習の模様
「3月以降、試合ができていませんので不安です。1度負けたら引退してしまうという緊張もあります」
公式戦はもちろん練習試合もできておらず、残すは夏一本。シーズンが明けてから対外試合ができないことに不安を抱えている監督は多いが、夏の大会が例年以上に重みのある大会であることを再認識させられた。この話をしてくださったのは、福岡県の鞍手高校で指揮を執る甲斐義啓監督だ。
鞍手は2018年の福岡県の21世紀枠の推薦校に選出されており、文武両道を大事に活動をしているチームだ。昨秋は北筑や真颯館を破って県大会4回戦まで勝ち進み、ベスト32。さらなる上位進出のために厳しい冬を乗り越えたが、3月から現在まで活動を自粛しており、全体で練習はできていないのが現状だ。
甲斐監督も自粛当初は、「主将に電話をして出来ることをやってもらうように、選手たちに練習は任せていました」と戸惑いながら選手たちへ指示を出していたとのこと。しかし活動再開の目途が一向に立たず、3月終わりに一度あった登校日に選手たちと久々に再開したことをきっかけにLINEでのコミュニケーションを取る方向に切り替えた。
「食事の量は変わっていないと思うんですが、顔が少しやせている印象を受けたんです。その時に『思った以上に選手たちは自分を追い込めていないのかな』と思いました。ですので、例年の先輩たちがこの時期にどのようなチーム状態であるかを伝え、体の疲労感を確認させ、個人練習での追い込みの必要性を訴えました」
甲斐監督は4月3日からLINEを導入して、選手たちへ練習メニューを朝8時ごろに提示するようにした。同時に、甲斐監督が伝えたいメッセージを添えてモチベーションのアップに尽力。選手たちは、学習の合間にそれぞれの環境に合わせて可能な範囲で練習に取り組み、夜9時に再びLINEで報告。
その後10時から1時間を目安に選手主体でミーティングを開催。村上恵一郎主将を中心にメッセージを送り合い、最後はミーティングの内容を、ノートと呼ばれる機能を使って書き残す。こうして鞍手は再開までの期間を過ごしている。
「最初の1、2週間くらいは夜のミーティングは上手くいかず、こちらから色んな仕掛けをしていましたが、次第に運用方法も固まっていきました。選手たちも『こんな話をしたい』と積極的になりました」
時にはマネージャーが集計したデータを用いたミーティングをしたり、写真や映像を送って技術指導をしたりとあらゆる機能をフルに活用して自粛期間を過ごす鞍手。「顔が見えていないので不安な部分もありますが、何もないより繋がっている時間が少しでもあるのは良いことだと感じています」とLINE活用に効果を甲斐監督は語る。
「3年生の想いを花咲かせてあげたいです」
最後にこの一言を残して電話取材は終わったが、これは全国の監督たちが願っていることだ。1日でも早く、球児たちが目一杯野球できる日が来ることを祈り続けていきたい。
(取材=田中 裕毅)
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