Column

中学日本一を知る主将を中心に佼成学園は西東京の頂点を目指す【後編】

2021.06.18

 春、夏、そして秋すべてを含めて、過去10年で5度の決勝進出。直近では、2020年の西東京大会で決勝戦まで進出。優勝を飾った東海大菅生相手に延長10回までもつれる大熱戦を演じたことは記憶に新しいだろう。

 その夏からまもなく1年。準優勝まで勝ち上がった喜びも悔しさも知る世代が、今度こそ西東京の頂点を目指して大会に挑もうとしている。そんな今年のチームは2度、同じ相手の前に上位進出を阻まれ続けた。

 前回はチーム作りの視点から、佼成学園の強さを考えてきた。今回はチームの春季大会の歩みを中心に見ていきたい。

日本一を知る強烈な主将・福岡元翔が仕掛けたチーム結束の術

中学日本一を知る主将を中心に佼成学園は西東京の頂点を目指す【後編】 | 高校野球ドットコム
福岡 元翔

 個人練習で選手それぞれが基盤を作り、全体練習で発揮する。この繰り返しが佼成学園という組織の強さを生み出してきたが、今年は加えて日本一を知る男が主将に就任してチームを強くしている。世田谷西シニア出身の福岡 元翔だ。

 今回は新型コロナウイルスの影響で、選手を長い期間見られなかったことを理由に、藤田監督は主将決めを選手に任せたところ、福岡が抜擢された。以前の取材では「意外な選出だったが、バランスの取れた主将です」と評価していた。

 その福岡は、修徳戦からチームの士気を高めるべく、選手たちに自ら発破をかけ続けてきた。
 「修徳戦の時、自分の方で嘘をついて『佼成学園修徳になめられているぞ』と話したんです。それで仲間の士気を高めて修徳と戦いましたし、試合後には『次は学舎だぞ。秋山だぞ』と二松学舎大附戦に向けて言葉をかけました。
 学舎との試合前には『二松学舎大附が有利と言っているのは周りだけだぞ。秋山を倒すぞ』と、とにかく煽り続けました。その一環じゃないですけど、攻守決定のじゃんけんで負けたんですけど、仲間には『(じゃんけん)勝ったぞ。勝ち運来ているぞ』という嘘もつきました(笑)けど、それくらいやったおかげで最高のテンションで試合に入れました」

 これらすべては、世田谷西シニア時代の監督を見様見真似だという福岡。「選手をやる気にさせるが上手な監督で、ただ試合をするのではなくて選手たちに試練を与えて、結束を固めてくれたんです。そういうセンスが選手として見てきたので、主将になって活かしています」というのが理由とのこと。

 エース・前野 唯斗は「福岡を中心にチーム全体が盛り上がって戦えていたからこそ、チーム一丸となることが出来ました」と福岡主将のキャプテンシーが一体感をもたらしていたことを語った。

[page_break:二松学舎大附の敗戦を活かして西東京の頂点へ]

二松学舎大附の敗戦を活かして西東京の頂点へ

中学日本一を知る主将を中心に佼成学園は西東京の頂点を目指す【後編】 | 高校野球ドットコム
前野 唯斗

 チーム一体となって春を駆け抜けた佼成学園。それは選手起用からも伺える。昨秋の4番だった重藤琳太郎を怪我で欠くなど秋メンバーだった選手が外れたり、2桁の背番号を付けた選手が春の大会では多く起用された。

 「本音を言うと、固定できなかったんです。練習試合解禁後、なかなか打線が機能しなくて、ミーティングでも野手陣の反省ばかりで。主将ですが、福岡をB戦の6番にも起用したことがありました。ですが、試合を重ねるごとに各打者の調子が上がってきて、三振をすることが無くなったんです。そこが一番の成長だと思っています」

 福岡にも同じように話を聞くと、「メンバーが毎回変わるので、結果としてチーム全体の底上げに繋がったと思います。大会直前までベンチ入りする20名が本当にわからなくて、調子のいい選手から出場するので、緊張感がありました」と当時のチーム状況を話す。

 確かに不安のある状況であることは間違いないが、結果としてチーム全体のレベルが上がり、春季大会を勝ち抜いた。残念ながら二松学舎大附には敗れてしまったが、「夏に向けて二松学舎大附のような卒のない打線。秋山(正雲)のようなサウスポーと本気で対戦することは滅多にできないので、負けましたが良い経験ができたと思います」と藤田監督は集大成の夏に繋がる前向きな敗戦と捉える。

 この夏は、先輩たちがあと少しで逃した悲願の優勝へ燃えている。エースの前野は「春に感じた成長に自信をもって、投手陣で優勝を掴む。先輩たちの準優勝を超えて、藤田監督をできるだけ夢の舞台に連れていきたいです」と西東京の頂点への強い想いを語る。

 主将の福岡は「この仲間たちと『もっと戦いたい』と思えるようなチームを作りたいと思います」とコメント。主将としてチームを仕上げることに集中をしていた。日本一を知る主将と、意識の高い選手たちが集まった集団が、悲願の優勝を掴めるか。頂への挑戦はまもなくだ。

(取材=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.14

大阪体育大の新入生に兵庫大会8強の145キロ右腕、金光大阪の1番センター、近大附の4番打者など関西地区の主力が入部!

2024.05.14

【春季東京都大会総括】日大三、二松学舎大附など強豪校がノーシードの波乱! 新基準バットでも9本塁打の帝京が驚異の打力で王者に

2024.05.14

【2024夏全国ノーシード校一覧】二松学舎大附、履正社、智辯学園、沖縄尚学などビッグネームがノーシードで夏に挑む

2024.05.14

広島「今季新戦力の現状通信簿」、新外国人の復活はなるか!?

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.14

大阪体育大の新入生に兵庫大会8強の145キロ右腕、金光大阪の1番センター、近大附の4番打者など関西地区の主力が入部!

2024.05.09

プロスカウトは190センチ超の大型投手、遊撃手、150キロ超右腕に熱視線!この春、浮上した逸材は?【ドラフト候補リスト・春季大会最新版】

2024.05.09

【熊本】九州学院は城北と文徳の勝者と対戦<NHK旗組み合わせ>

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?