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秀岳館投手陣が清宮勝負を決断した理由。そして対決して得たものとは?

2017.05.15

 13日から14日にかけて行われたRKK招待高校野球大会。今年の招待試合の注目は、高校通算92号を打っていた清宮幸太郎の打撃だろう。実際に八代戦で高校通算93号を放ち、熊本の高校野球ファンを喜ばせる活躍を見せた。ドラフト的に注目なのが、清宮vs田浦文丸川端健斗と2人の速球派左腕擁する秀岳館との対決である。試合前から注目度が高かった対決は、3打数1安打2四球の結果となり、秀岳館投手陣が大事な場面で清宮を抑え、勝負に勝った形となった。この対決で秀岳館投手陣を得たものとは何だろうか。

清宮勝負で何を得たのか?

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川端健斗投手(秀岳館)

 先発の川端はこの対決について「楽しみにしていた」とコメント。1回表、二死の場面で実現した対決では、最速144キロを計測したストレートを中心に投げ込んだが、コースがわずかに外れて四球。この投球の意図について川端は、「打席に立った瞬間、甘く入ったところは打たれるのはわかっていたので、緩い変化球は投げず、力のあるストレートでコーナーへ投げることにしました」と清宮に対しての攻め方を明かしてくれた。

 第2打席は3回一死の場面で回った。141キロのストレートを捉えられ、右前安打。「コースはそれほど悪いコースではなかったのですが、一瞬に振り抜いて、一瞬でヒットゾーンに飛んでいきましたので、改めて凄い打者であることが分かりました」と清宮の凄さを実感していた。第3打席は5回表、二死一、二塁の場面で打席が回った。打席前、秀岳館バッテリーは話し合いを行った後、清宮勝負。これも慎重な攻めに徹し、四球。続く野村大樹を三振に切り抜け、川端はストレートとキレのあるスライダーをコーナーへ投げ分けながら、5回7奪三振無失点の投球でマウンドを降りた。だが、川端は今日の投球については満足していない。
「球数(97)も多かったですし、僕はストレート、スライダーのどちらかの調子が良いボールを中心に投げ込むのですが、どっちも良くなくて、悪いなりに無失点に抑えられたのは良かったです。ただ自分のボールには納得がいっていないので、次はベストな状態で早稲田実業と対戦したいです」
もし次当たるとなれば夏の甲子園である。次、甲子園で当たった時は?と聞かれると、
「ストレートで三振を奪いたいです」と三振奪取を誓った。清宮の凄さを実感しながら、冷静に清宮との勝負に徹した川端。これこそ清宮斬りのヒントかもしれない。


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田浦文丸(秀岳館)投手

 6回から登板した2番手・幸地竜弥は、清宮の第4打席を迎え、フルカウントから左飛に打ち取ると、3番手・田浦文丸が8回途中からマウンドに登った。早稲田実業打線を抑え、9回二死で、2番雪山幹太を迎えた。ここで秀岳館サイドはタイムを取り、先発の川端を伝令役に送る。伝えた指示は「清宮と勝負したかったら回せ」というものだった。鍛治舎巧監督が清宮勝負の意図を説明した。
「マウンドに上がっていた田浦が試合前から清宮とずっと勝負したいといっていたんですよ。めったに勝負できる機会はないですから、勝負したいならば、歩かせろと伝令に指示を出しました。また熊本の高校野球ファンが生で見られるのはこれで最後になるかもしれませんからね」と清宮勝負の理由を明かす。もちろんこれは甲子園につながらない非公式の試合だからこそ実現したもの。「公式戦では絶対にしない作戦」と鍛治舎監督が話すように、エース・田浦の気持ちを鑑みて実現したものであった。

 捕手の橋口が立って、田浦がボールを投げると、7000人が詰めかけた高校野球ファンはどっと沸いた。清宮勝負が決まったと確信したファンは拍手を送った。この様子を第3試合に備えて球場入りしていた熊本工ナインも目撃しており、エース・山口翔は「打ったら清宮君、かっこいい。抑えたら田浦君、かっこいいじゃないですか。ファン目線で見ていました」と明かす。

 対決の結果を1球ごと振り返っていきたい。
1球目 133キロ アウトコース直球 ボール
2球目 111キロ アウトコーススライダー ストライク
3球目 132キロ アウト高めストレート ファール
4球目 137キロ インコースストレート ファーストゴロ
内外角に揺さぶって一ゴロに打ち取り、試合終了。清宮との勝負に勝った田浦は「最後、三振が取れなくて悔しかったですけど、打ち取れてよかったです」と笑顔を見せた。
秀岳館サイドが取った清宮勝負は、結果的に秀岳館投手陣に自信をつけるものとなった。田浦は「甲子園で対戦する機会があれば、絶対に三振を奪いたいです!」と抑えたからこそ発言できるコメント。これまで清宮と勝負した投手、捕手は「どこへ投げても打たれる感じしかしなかったです」というコメントが非常に多かった。だが、秀岳館の川端、田浦は違う。凄さは実感しながらも、自分たちのベストのボール、コースへきっちりと投げることができていた。これは、甲子園で何度も苦しい場面を投げ抜いてきたからこそ、身に付けた自信というものだろう。さすが三季連続甲子園ベスト4に導いた投手と思わせる貫禄ありのピッチングであった。

 再戦が実現するにはどちらも夏の甲子園出場を果たさなければならない。それが実現すれば、もっと熱い勝負が期待できるはずだ。今度は見ていてハラハラするような場面で火花を散らすような戦いを期待したい。

(文=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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