試合レポート

國學院栃木vs日大三島

2022.08.06

「エースで4番」をピンチで三振!國學院栃木の2年生右腕が初完投で夏甲子園1勝

國學院栃木vs日大三島 | 高校野球ドットコム
中学時代の盛永智也投手

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第104回 全国高等学校野球選手権大会

<第104回全国高校野球選手権大会:國學院栃木10-3日大三島>◇6日◇1回戦◇甲子園

 マウンドに立つ選手の、意地とプライドがぶつかり合ったいい試合だった。

 3年ぶりに観客で沸く甲子園球場。「夏の甲子園」が戻ってきた。開会式直後の「開幕ゲーム」は、國學院栃木(栃木)と日大三島(静岡)。どっちが勝っても「夏1勝」となる。

 日大三島の先発は松永陽登投手(3年)。今センバツも経験し、打っても4番の中心選手。彼抜きでは、日大三島のここまでの快進撃はなかった。

 國學院栃木の先発は盛永智也投手(2年)。もちろん、甲子園は初めてのマウンドになる。

 対照的なエースの対決。そこがポイントだと思っていたが、2年生エースに軍配が上がった。

 5回表。盛永は無死満塁のピンチを背負った。味方打線が0対3から一気に同点にしてくれた後に、3本の安打で逃げ場のない大ピンチを迎えた。しかも迎える打順は3番。そこで盛永は、真っ向から日大三島打線に立ち向かった。

 左飛で1死を奪うと、打席には4番の松永が入る。そこまでの2打席は、ともに長打を打たれていた。それも外角球を逆方向に打たれていた。もう打たせるわけにはいかない場面で、逆に攻めの投球に変えた。内角を中心に攻め、ファウルなどでカウントを有利にすると、渾身の力をこめた直球を投じた。見逃せば完全な真ん中高めのボール球だったが、松永はつい手を出してしまい空振りの三振となった。

 松永からすれば、こういう場面で打つのが「エースで4番」の役割だと言わんばかりに反応したに違いない。今度こそ打たせまいという盛永の気迫が勝ったのか、松永の気負いが空回りしたのか、結果的には2年生エースの気迫が勝った。

 盛永は続く5番打者からは直球で見逃し三振を奪った。無死満塁のピンチも、相手クリーンアップ3人を料理して乗り切った。

 2年生エースの奮闘にナインが黙っているわけもなく、直後に1点を勝ち越すと、6回には4得点して勝負を決めた。盛永の、あの気迫あふれる投球が、チームに夏甲子園初勝利を運んだといってもいい。

 盛永は4回に松永から適時打もマークした。1学年上の「先輩エース」に投打で勝った。

 栃木大会で11連覇を狙った作新学院に勝利した。難敵に最後まで立ち向かったのも盛永だった。最大の壁を乗り越えた自信は計り知れない。その自信を甲子園での好投につなげた。久しぶりにファンの前で迎える甲子園。その「開幕試合」で、今大会参加投手の中で、誰よりも最初にマウンドに上がった。尋常ではない緊張感に包まれたマウンドだったと想像するが、甲子園初登板で1回を3者凡退の最高の立ち上がりを見せ、7安打3失点の初完投勝利を挙げた。高校生は周囲が驚くほどの成長を見せるとは言われるが、本当だった。

 オリックスで活躍する宮城大弥投手(興南出身)が2年の夏甲子園、8回に無死満塁のピンチでリリーフ登板し、わずか9球で無失点で切り抜けたあのシーンが頭をよぎった。中学時代は軟式で144キロを出したことで評判にもなった盛永。甲子園で投げた146球。5回無死満塁のピンチを脱した結果。すべてが盛永をまた一段と成長させるに違いない。 

 松永は5回途中、マウンドを降り右翼手へ回った。2回の先制点、4回の2得点はいずれも自ら放った長打から奪ったもの。前半は順調だったが、5回のあの打席、空振り三振に終わったことで歯車が狂った。完投負けしたセンバツに続き、夏も初戦敗退。この悔しさは、今後の進路先でも生かされると信じている。

(文=浦田 由紀夫)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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