試合レポート

銚子商vs木更津総合

2022.05.03

銚子商が12年ぶりの春の関東へ エース・飯島聖矢が成長見せる投球で木更津総合を封じる

銚子商vs木更津総合 | 高校野球ドットコム
銚子商先発・飯島聖矢

<春季高校野球千葉大会:銚子商6-2木更津総合>◇3日◇準決勝◇[stadium]千葉県野球場[/stadium]

 最後のアウトを取った瞬間、マウンドでこぶしを突き上げた。銚子商エース・飯島 聖矢投手(3年)が最後まで丁寧な投球で強力打線・木更津総合を封じ込め、12年ぶりの春の関東大会をたぐり寄せた。

 「調子はあまり良くなかったですが、力まずにコントロール良く投げるようにしました」と制球力重視のピッチングを意識。その結果が9回被安打10、四死球1、失点2。名門・銚子商のエースとして粘り強く投げ抜いた。

 冬場に転機があった。秋は八千代松陰に敗れたが、そのころは「力んで球速を出そう」とスピード重視の投球を心掛けていた。それで最速140キロを計測するなど、ポテンシャルは光るものを見せたが、オフシーズンに入る前に投手コーチから受けた助言で意識が変わったという。

「コーチからは『力んで投げれば、誰でも球速は出せる。じゃあ、どれだけリラックスして投げて、球速を出せるのかが大事だろう』と言われました」

 この助言を聞き、「リラックスして投げたほうが、伸びや切れも良くなる」と素直に受け入れた飯島は、右腕の使い方を改良した。

 大きなテイクバックを取るときに、どれだけ脱力して、リリース時だけ力を入れられるか。ここに焦点を置いてブルペンで投げ込むときは1回で100球以上をこなすなど、量をこなしてフォーム固めをしてきた。

 また、「保護者会にお願いして購入してもらった」というチーム用のiPadで投球フォームを撮影。自身の状態を視覚的に判断して、フォームの改良に努めてきた。

 春の大会を迎えると、「コースへしっかり投げ切れれば、打たれない」と投げるたびに冬場の成果に自信を深めていたという。この試合も130キロ前半までセーブしてコントロールを重視した真っすぐに、武器である120キロ台のカットボールやチェンジアップを駆使して打たせて取る投球を展開。ヒット10本を許しながらも、2失点に食い止めた。

 木更津総合・五島監督は「真っすぐに差し込まれていたから思った以上に来ていたかもしれないし、落ちる球が気になっていたかもしれない」と話したが、スタンドから見ていても、球速差が10キロ前後で、直球と似た軌道から沈んでいた。結果、木更津総合の各打者が打ち損じたり、低めのボール球に手を出したりと苦戦。巧みな投球だった。

 秋の敗戦で得た課題を胸に、指導者からの一言で生まれ変わった飯島。「調子が悪いからといって、崩れてしまってはエースではない」。背番号1としての自覚をもって取り組んできたことが、12年ぶりの春の関東大会にたどり着いただろう。決勝戦、そして関東大会での好投を楽しみにしたい。

 そんな飯島の好投を打線が援護したのは5回、5番・石毛 陽己外野手(3年)のホームランで2点を入れて、銚子商が主導権を握った。

 7回表に先攻の木更津総合に追いつかれたものの、直後に1死一、三塁から9番・前橋 脩太外野手(3年)の一打で勝ち越すと、続く1番・鵜澤 智也内野手(3年)のホームランで3点を追加して試合を決めた。

 9回も飯島がマウンドまで投げ抜き、最後の打者をセンターフライに抑え、12年ぶりに春の関東大会への出場を決めた。

[page_break:木更津総合は4強で姿消す 出場したルーキー3人はじめ全学年で競争して甲子園目指す]

木更津総合は4強で姿消す 出場したルーキー3人はじめ全学年で競争して甲子園目指す

銚子商vs木更津総合 | 高校野球ドットコム
木更津総合8番・中西祐樹

<春季高校野球千葉大会:銚子商6-2木更津総合>◇3日◇準決勝◇[stadium]千葉県野球場[/stadium]

 注目されていた木更津総合の五島監督は「後手に回ってしまった」と振り返った。先発・金綱 伸悟投手(3年)が初回から得点こそ許さないが、粘られるシーンが多く、攻められている印象を受けていたところで、5回に先取点を許す。一時同点に追いつき、流れは五分五分になったと思われたが、すぐさま勝ち越されるなど、終始追いかけるような形になっていた。

 打線もヒット10本は出たものの、2得点しか奪えず、「選手それぞれの能力で勝負しているところがあり、打線として機能して勝負できていない」と五島監督はきっぱりと話す。そのうえで「三富(大輝)と羽根(徹平)がメンバーに絡んできて固定できれば、打線が機能する」と2人の奮起を期待していた。

 主将の中西 祐樹捕手(3年)も「下位打線が打てないと繋がりができないですし、得点力が上がらない」と課題を明言したが、その下位打線の1人にいる羽根は入学したばかりのルーキーだ。

 どっしりとした体型をしており、走力はこれからの部分があるものの、試合前のノックを見ても三塁の守備は安定しており、スローイングも力強かった。

 バッティングでは重心を少し落として左打席に立つと、バットは肩よりも少し下げた位置で構える。テイクバックはそれほど大きくとらずに、鋭い回転で捉えていく。この試合はヒット1本だったが、バント2つ決めるなど、器用な一面も見せた。

 そんな羽根と同じ1年生投手が2人ベンチに入っていることも夏に向けて注目だろう。

 銚子商戦の3番手で登板した千葉 雄斗投手は、大田水門ボーイズから注目されていた右腕。力感をそれほど感じさせないが、球場のスピードガンでは130キロ後半をマーク。縦のスライダーも110キロ台を計測するなど、スピードだけ見れば、先輩たちにも引けを取らないものがある。

 セットポジションから、ややひねりを加えたところから体重移動をして右腕を振り抜く。くの字ステップを取り入れているところも特徴的な千葉だが、7回に登板して先頭に長打を許すなど、結果はついてこなかった。まだ1年生、この敗戦を糧にレベルアップしてほしい。

 そして千葉の後を引き継いだ井上 陸投手(1年)は、右半身を壁に使って開きを抑えながら、縦回転で角度を付けた120キロ後半の直球を軸に相手打線を抑えた。ただ高めの直球を銚子商4番・加藤 澄海捕手(2年)にフェンス直撃まで運ばれるなど、千葉と同様にまだまだやるべきところはある。

 春夏連続甲子園へ、3学年全体でもう1度競争をすることになる。夏は一回りも二回りも成長した木更津総合を見られることを楽しみにしたい。

(記事=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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