山梨学院vs浦和学院
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山梨学院、強力打線の裏には筋トレ効果による「球の見極め」があった
勝ち越し打の山梨学院4番・高橋海翔
どちらも投打で戦力が整っている山梨学院と浦和学院。山梨学院はエース・榎谷 礼央、浦和学院は背番号6をつけた二刀流・金田 優太が先発のマウンドに上がる。榎谷は今大会全試合で登板しており、金田は今大会初先発。どちらも不安材料があったが、そんなことを払しょくする試合展開が繰り広げられた。
山梨学院は初回、先頭の鈴木 斗偉が金田のインハイのボールをライトスタンドへ運ぶ先頭打者ホームランで先取点を奪う。幸先よくスタートを切ったかと思われたが、2回以降は金田の変化球で巧みにかわしつつも、要所で見せる強気な投球でホームが遠のいた。
山梨学院先発の榎谷は、序盤制球に苦しみ失点するものの、尻上がりに調子を上げる。4回までで2点を失ったが、粘り強く味方の援護を待った。
すると5回、二死二、三塁から4番・高橋 海翔が差し込まれながらもピッチャーへ痛烈な打球を打ち返すと、金田のグラブをはじき2対2。同点に追いつき、試合は延長戦に突入する。
延長10回、山梨学院は2番・進藤 天の二塁打などでチャンスを作ると、同点打を放った4番・高橋が、今度はレフト前にはじき返し勝ち越し。3対2とすると、これで山梨学院打線が勢いに乗り、この回一挙7得点。9対2と試合を決めた。
大量リードをもらったエース・榎谷は最後まで1人で投げ切り、山梨学院が浦和学院を下した。
延長10回の集中打で一気に試合を決めた山梨学院。9回までは投手戦だったものの、終わってみれば14安打9得点の猛攻で、2019年以来の決勝進出を果たした。今大会はエース・榎谷の好投に加え、繋がりある打線の攻撃と、投打で圧倒するのが山梨学院の勝利パターンになりつつある。
チームとして成熟していない秋に、これだけの強力打線を作るのは簡単ではない。今年の打線について吉田監督は「全員がしっかり練習している」と今年の世代の良さを説明。加えて、これまでは3、4番に目玉選手といえるような柱となる選手が中軸にいたが、今年は「1~6番でずっとヒットを打っているので、三者凡退がないので切れ目がなく得点ができている」と、これまでとはタイプの違う打線だと分析している。
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ハイタッチを交わす山梨学院・榎谷礼央
その打線が形成できるのには2つの要素があることが、4番・高橋のコメントから見えてきた。1つは低めの見極めだ。
普段の練習から低めの見極めはチーム全体としてテーマに掲げている。「そこを見切ることができればボール先行のカウントになって甘いボールが増えてくるはずなので、失投を逃さないように意識しています」と高橋は話す。
山梨学院に限らず、好投手攻略のためには、低めの見極めは避けては通れない条件だ。これを成立させるのに大きく関わっているのがウエイトトレーニングであり、山梨学院打線の繋がりを支える2つ目の要素だ。
高校野球界において強打で知られる盛岡大附の練習方法を参考に、バッティングの待ち時間で、ベンチプレスを実施しているとのこと。これで身体を強化してきた高橋は、新チームから体重が2、3キロ増加したという。
フィジカルの強化が功を奏してか、「詰まっても押し込んでヒットにできるようになってきました」と自身の課題としていた打撃の力強さが出てきた。そのおかげもあり、ポイントを近づけてもヒットにできるため、ボールを見る時間が長くなった。
結果的に見極めしやすくなっており、高橋も「詰まっても押し込めるからこそ、ボールを長く見て見極めやすくなっていると思います」と手ごたえを感じ取っていた。
投手陣は大崎(長崎)、打撃陣は盛岡大附(岩手)と全国のライバルのメソッドを取り入れ、成長してきた山梨学院。決勝進出は2019年以来となるが、その時は準優勝に終わった。2年ぶりの決勝で栄冠をつかめるか。
山梨学院と競った展開に持ち込みながら、延長10回に力尽きるような形になった浦和学院。ただ先発・金田は、6回まで粘り強く投げぬいた。130キロ台中盤の真っすぐに、スライダー系のボールを駆使して、打たせて取る投球を見せた。
特に勝負どころではインコースへ強気に投げ込み、詰まらせた。5回に4番・高橋にタイムリーは許したが、インコースへの真っすぐで力のない打球だった。打った高橋も「打ち損じました」と金田の力のこもったボールに差し込まれたと振り返る。
試合前、森監督は選手たちへ「強打復活でやっていこう」と攻撃野球で挑むことを話した。打線は山梨学院・榎谷の前に5安打2得点で敗れたが、金田が強力・山梨学院打線に痛打されながらもインコースを攻めた強気な投球は、森監督の話す攻撃野球をピッチングで表現したといっていいのではないだろうか。
新体制で迎えた初の公式戦は関東大会ベスト4で終わった浦和学院。掲げる攻撃野球はまだ完成ではないだろうが、今大会好調だった4番・鍋倉 和弘らを筆頭に力のある選手が多い。準々決勝の桐生第一戦の6回で見せた足を使った攻撃など、バリエーションもある。
一冬かけてどれだけ磨きをかけてくるのか。春以降、どんなチームに仕上がるのか、楽しみにしたい。
(取材=田中 裕毅)
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ホームラン打った山梨学院・鈴木斗偉
浦和学院バッテリー
円陣を組む浦和学院