試合レポート

早稲田実業vs岩倉

2017.04.07

早稲田実、清宮、野村シフト敷く岩倉に打ち勝ちベスト16

早稲田実業vs岩倉 | 高校野球ドットコム
本塁打を打つ活躍を見せた野村 大樹(早稲田実業)

 秋季都大会優勝の早稲田実にとって、3回戦の岩倉戦は、春季都大会前半の最初の関門である。注目の強打者・清宮 幸太郎野村 大樹岩倉がどう防ぐか。投手の三田 知樹以外、先発の8人全員が左打席に立つ岩倉を、早稲田実投手陣がどう防ぐかが、試合のポイントになる。

 1回表岩倉は、四球の山田 航大を一塁に置いて、3番・涌井 和人がライトへの2ランを放ち、2点を先制する。

 その裏早稲田実は、四球の野田 優人を一塁に置いて、2番に入った雪山 幹太が右中間に2ランを放ち、同点に追いついた。早稲田実和泉 実監督は、「僕も想定していなかった。でも当たると、パンチはあるから」と語る一発だった。

 続く清宮は投ゴロに倒れたものの、4番・野村は右中間に叩き込み、あっさり逆転した。「ツーボールになって、ストライクを取りに来ると思って、狙っていました」と野村は語る。

 この試合目を引いたのは、岩倉の独特のシフトだった。
まず清宮が打席に立つと中堅手が内野に上がり、遊撃手と中堅手が二塁ベースを挟むようにベース後方に並ぶ。三塁手が遊撃手寄りに、二塁手が一塁手寄りに立ち、外野は2人で守るというものだ。このシフトの理由を岩倉豊田 浩之監督は、「大きい球場だとそうはいきませんが、神宮第2だと、外野に打球が上がったら、そのままスタンドに入る。内野の間を防ぐということです」と語る。

 また野村の打席では、第1打席では大きな変化はなかったが、第2打席では、二塁手が右中間に行って、外野手を4人にした。このシフトについて豊田監督は、「野村君は低い弾道で飛んでいくので、外野の間を抜かれないようにと考えました」と語る。野村シフトは内野手が1人減るため、走者がいた、第3、第4打席では用いなかった。

 試合展開に話を戻すと、2回表岩倉は、7番・加藤 広大が左中間を破る二塁打で出塁すると、8番・鈴木 大誠は二塁手と一塁手の間に高いフライを上げる。前日来の強風に煽られた飛球を早稲田実の二塁手が落球。一死一、三塁となり、9番・八代唯人がセーフティスクイズを決めて岩倉が同点に追いつく。この辺までは、一進一退の互角の展開。しかし、岩倉の三田は制球が定まらず、球数も増え、3回を終えた時点で75球を投げていた。この制球難が、後半響いてくる。


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本塁打を打った涌井 和人(岩倉)

 4回裏早稲田実は8番・先発投手でもある服部雅生のライトへの打球を、右翼手が風の影響で判断を誤ったこともあり、二塁打になる。その後、9番・横山 優斗の犠打、1番・野田の犠飛で服部が還り勝ち越した。

 序盤3点を失った早稲田実の先発・服部であるが、3、4、5回と無失点で切り抜ける。しかし6回一死から5番・森本 克哉に二塁打を打たれたところで、左腕の石井 豪に交代した。石井は、8回に四球の走者を二盗と暴投で三塁に進め、犠飛で1点を与えた以外は、得点を許さなかった。

 早稲田実は6回裏に、一死二塁の場面で、雪山の一塁手の前で打球が変わり、ライト線に打球が転がる二塁打で1点追加。さらに清宮の一塁強襲打、野村の四球の後、5番・福本 翔の右犠飛で雪山も生還した。

 8回裏には清宮が、清宮シフトで左中間寄りに守っていた左翼手の方向に打球を飛ばし、これを左翼手が捕球できず二塁打、送球ミスもあり、清宮は三塁に進み、暴投で生還したほか、2点を加えて、勝敗を動かないものにした。
この日清宮は2安打を記録しているが、本来の清宮らしい打球は影を潜めている。ただ清宮シフトについては、「外野の守備位置は見ていませんし、気にしていません」と語る。センバツの時から、相手校が様々な対策、揺さぶりをかけてくるようになった。けれどもそうしたことも、清宮がより成長していくために、越えていくべきものだろう。早稲田実の和泉監督は、「1つずつ、次につなげてきます」と語った。

 一方岩倉の豊田監督は、「そんな力負けしたわけではないと思います」と語るように、前半はほぼ互角であった。ただし、先発の三田は、「そんなにコントロールがいい方ではありません」(岩倉・豊田監督)ことに加え、早稲田実の打者のスイングが力強いことを意識して、球数が増え、四死球を11個も記録したことも、結果に響いた。

 3回戦で敗れ、夏のシードは逃したものの、岩倉が東東京の強豪校であることに変わりはない。あとは夏を戦い抜く体力と、力のロスを最小限にする省力が必要であり、それには、制球力など、実力の裏付けも求められる。

(取材=大島裕史、写真=編集部)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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