西脇工vs市川
西脇工・翁田が10奪三振完投勝利で5回戦進出
この試合の注目は西脇工の翁田 勝基(3年)だ。最速140キロを誇る右の本格派として兵庫県内で注目を浴びる一人である。
確かに体つきを見ると、腰回り、お尻の大きさはドラフト候補として注目されているのが伺える。投球フォームは独特だ。体は沈みこませるが、お尻から落としてひねりを入れて上半身から降り下ろすようなフォームではなく、横回転気味の体重移動で投げ込む投球フォーム。常時135キロ~140キロは計測しており、勢いのあるストレートを投げ込んでいる。
そして彼はコントロールが実に良い。内外角、低め、高めの釣り球を意図的に投げ込んでいる。縦横2種類のスライダーを投げ分け、ほぼ完璧に封じる投球を見せる。恵まれた体つきを見ると力感あふれる本格派とイメージしていたが、制球力が優れた実戦派右腕という印象を受けた。
対する市川の先発は背番号9の植木 芳匡(3年)。背番号1の藤本 裕夢(3年)が投げられない。初戦の7月17日には登板をしているが、17日から22日までの間にアクシデントがあったのだろう。彼が松葉杖の状態で声援を送っている姿を見たからだ。最後の夏で怪我で投げられないつらさ。本人にしかわからないつらさだろう。先発の植木だが、直球、スライダー、カーブを丁寧に投げ分けてしっかりと抑えこむことができている。植木は6回無失点の好投。また植木をもり立てる4番キャッチャーの原田 喬(3年)は翁田の速球にくらいつき、安打ではないが、鋭い打球を見せている。そして2.00秒前後の強肩もあり素晴らしい選手だ。
7回からリリーフの尾上 昂央(3年)にバトンタッチ。6番森下 幾矢(2年)がレフトの頭を超える二塁打、7番西澤 諄(3年)の犠打で一死三塁のチャンスを作り、8番石井 智樹(3年)のスクイズで1点を先制。二死となって9番井上 功大(3年)が四球で出塁、1番今井 哲也(3年)が右前安打、2番高見 直樹(3年)がレフト超えの長打で二者生還し、3対0。さらに3番山中 竣平(3年)が左前安打を放ち、高見が生還。4対0へ。
7回まで無失点の好投を見せていた翁田。この試合、最大のピンチを迎える。8番中森 直都(3年)に中前安打、9番栃尾 昌樹(3年)がセーフティバントが決まり、無死一、二塁のチャンス。1番植木は三ゴロ。まず三塁を踏んでアウト。三塁手は一塁へ投げたが、暴投となり、結果的に一死二、三塁となる。2番上田 旺輝(3年)の四球で一死満塁。3番若松 亮太朗(3年)の二ゴロで1点を返すが、反撃は1点止まり。
そして翁田が9回を締めて完投勝利。5回戦進出を決めた。常に集中力を乱さずに投げ抜いた。ただ速球が速いだけではない。制球力も優れ、しっかりと投球が組み立てられる投球術があるからこそここまで勝ち抜いたのだろう。5回戦に進出した西脇工は加古川西と対戦する。
(文:河嶋宗一)