開星vs柳井学園
白根尚貴の脱皮
去年の開星はいろいろとドラマティックだった。仙台育英戦。センターフライが飛び、開星の選手たちは勝利を確信し、整列に向かうほどであった。しかし落球により逆転。さらにサヨナラと思った大飛球を捕球され、勝利を逃した。そのマウンドに立っていた白根 尚貴。今年は3安打完封勝利を挙げて全国初勝利を決めた。白根は昨年の雪辱を晴らすために自分の投球スタイル・投球フォームを見直してきた。
まずはトルネード気味のスリークォーターからコンパクトなスリークォーターに改善したこと。
昨年は捻りが大きく、その回転で投げていく投手。
言葉を悪く言えば腕をぶん回す投球フォームであった。もちろんコントロールが悪くなるフォームである。
その巻き込みを小さくしてコンパクトに腕を振る形に代えた。それによりだいぶコントロールが落ち着いた。まだ腕が外回りする軌道だが、昨年のようなブレが大きいフォームと比べると安定している。
そして186センチ96キロという巨体をしっかりとウエイトを乗せて投げられている。コンスタントに140キロ中盤の速球を記録していた。
今年の150キロ以上を計測した投手が3人。そのほかにも140キロ級の速球を記録する投手は多数がいるが、白根の速球は彼らにはない「重み」を感じられた。
また昨年に比べてストレートの回転が良くなり、しっかりと伸びるストレートも増えてきた。
白根は186センチ96キロという巨体が目に付くが、なかなか器用な投手。スライダー、フォーク、チェンジアップを器用に投げ分け、しっかりと使い分けることができていた。本来はシンカーも投げられる投手である。
そして、大きく改善した点は四死球が少なくなったことだ。この日はわずか1個。昨年の仙台育英戦で出した10個と比べればだいぶ改善した。
何よりも今日の試合、先頭打者を出したイニングも一度もなかった。昨年のような荒々しく、リズムの悪い投球と比べるとだいぶ良くなってきた。
もちろん柳井学園の打者のレベルも考えなければならないが、この日の投球は白根自身が昨年の反省を踏まえてきたからだろう。最後のイニングでは昨年の逆転負けが頭によぎったという白根。最後まで気を緩めることなく最後の打者を打ち取った。
次は1回戦で14得点を記録した日大三だ。
日本文理の投手陣を打ち崩した打線の破壊力・対応力は全国屈指。
その相手に一年間積み重ねてきたことを発揮できるか注目してみたい。
(文=河嶋宗一)