試合レポート

仙台育英vs聖光学院

2022.08.20

仙台育英と聖光学院 継投策が明暗分けた

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佐山未來(聖光学院)

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第104回 全国高等学校野球選手権大会

<第104回全国高校野球選手権大会:仙台育英18-4聖光学院>◇20日◇準決勝◇甲子園

 この原稿を書く前、第2試合の近江(滋賀)対下関国際(山口)を見て、これだと思った。下関国際の先発、古賀 康誠投手(3年)は準々決勝で先発して、優勝候補筆頭の大阪桐蔭(大阪)を6回途中(5.2回)まで4失点に抑えた技巧派左腕で、言うまでもなく同校の準決勝進出の功労者である。その古賀を下関国際ベンチは2回途中で降板させたのだ。初回ノーヒットに抑えたあと、2回はイニングの先頭から四球を連発し、ここで2番手の仲井 慎内野手(3年)にスイッチした。

 聖光学院に話を移す。先発の左腕、小林 剛介投手(3年)は1回表、いきなり1、2番打者にヒットを打たれ、危うい雰囲気が漂いだしていた。1死二、三塁の場面で仙台育英がスクイズ作戦を敢行、これが空振りとなり三塁走者がホーム憤死。局面は走者三塁となり4番が内野ゴロを打ってピンチを脱するのだが、仙台育英打線の勢いを見れば、この回限りでエースの佐山 未来投手(3年)にスイッチしてもいいと思った。しかし、聖光学院ベンチは小林剛を続投させ、2回は先頭打者を四球で出したあと4連続長短打を打たれ、ここで降板。下関国際ベンチと比べると明らかに交代が遅い。

 前日の九州学院(熊本)戦で佐山が完投しているので疲労残りを懸念したのだろうが、代わった時点でのスコアは1対3でなおも局面は無死二、三塁。佐山は代わりっ端、1番橋本 航河外野手(2年)をいきなり四球で歩かせて満塁とし、2番を空振りの三振に取るが捕手が捕球しきれず失点(佐山の暴投)、続く遊撃ゴロを赤堀 颯内野手(3年)がホームへ悪送球し失点が加わり、ここから3つの長短打と四球が重なって11点のビッグイニングを献上してしまう。

 聖光学院の視点でこの原稿を書いているのは、勝敗のポイントが明らかに聖光学院の継投策にあったからだ。この回の失点がもっと穏やかだったら、中盤から後半にかけてもっと違った展開が見られたかもしれない。聖光学院の強力打線はそれくらいの破壊力を秘めている。

 仙台育英打線で見応えがあったのは走塁の迫力である。1回表、1、2番打者がいきなり連打してチャンスを作るが、1番橋本、2番山田 脩也内野手(ともに2年)の一塁到達タイムは4.19、4.18秒だった。それぞれセンター、ライトへのクリーンヒットでありながら、私が俊足の基準にする4.3秒未満を達成しているのだ。7番秋元 響内野手(3年)はこの俊足集団の中でもNo.1の脚力の持ち主で、ビッグイニングの2回には無死二、三塁の場面で右前にヒットを放ち、このときの一塁到達タイムが4.06秒。この回に回ってきた2度目の打席では右前にヒットを放ち、これを右翼手がエラーしている間にホームへ生還し、ベース1周タイムは15.39秒という速さだった(これも俊足の基準内)。

 仙台育英の投手陣はこの日は高橋 煌稀投手(2年)、湯田 統真投手(2年)、仁田 陽翔投手(2年)という継投策だった。3年の古川 翼投[player]手、[player]斎藤 蓉投手(ともに左腕)のほうが今大会は安定感があるので、準々決勝あたりから決勝までを見込んだローテーションを組んできたように思う。今後の高校野球の手本になる継投策と投手陣の陣容と言っていい。

(記事=小関 順二

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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